3月10日の第27節を最後に止まっていたラ・リーガが、およそ3か月ぶりに動き出す。

 再開初戦は、6月11日。第28節のセビージャ対ベティスのアンダルシア・ダービーを皮切りに、ここから平日開催をぎっしり詰め込みながら、最終節に設定されている7月19日までに残り11節分を一気に消化する。

 マラソンで言えば、勝負の35キロ付近で一度レースを中断し、数日後に再び走り出すようなものだろう。リーグ再開後に求められるのは、長距離走の持久力ではなく短距離走のダッシュ力だ。

 新型コロナウイルスによる中断期間中に、個人レベルでどれだけトレーニングが積めたか。コンディションには少なからずバラつきがあるはずで、またチーム練習の許可が下りてから実戦までのスパンが短すぎるといった声も聞こえてくる。もちろんウイルス感染のリスクが完全に去ったわけでもなく、あるいはフィジカル以上にメンタル面のコントロールのほうが難しいかもしれない。

 ただ、少なくとも蓄積されていた疲労は癒えたはずで、多くのチームがガソリン満タンの状態でラストスパートに臨めるのではないか。

 今後の過密日程を考えれば、やはり選手層に厚みのあるビッグクラブが有利だろう。交代5人制のメリットも、ピッチにつぎ込めるリソースに、質の面で限りのある中小クラブより大きいはずだ。
 
 よって今シーズンの優勝争いは、首位バルセロナと、これを2ポイント差で追うレアル・マドリーの一騎打ちとなるとの見方が妥当だろう。マドリーに9ポイント差の3位セビージャ以下が、ここから逆転できる可能性はかなり低い。

 バルサとマドリーの2強は、ガソリンを補充しただけでなく、中断期間中にエンジンもオーバーホールしている。つまり、故障者の回復だ。

 バルサではルイス・スアレス(ハムストリングの負傷で離脱中のウスマンヌ・デンベレは8月に復帰予定)、マドリーではエデン・アザール、マルコ・アセンシオと、今シーズン中の復帰が難しいと思われていた選手たちが、中断期間中に怪我からの回復を遂げ、ピッチに戻ってこられそうなのだ。

 1月12日に右膝外側半月板の手術を行ない、戦列を離れていたスアレスの復帰は、シーズン途中からバルサを率いるキケ・セティエン監督にとって新戦力の補強に等しい。事実、スアレスはキケ・セティエンの下で、まだ一度もプレーしたことがない。頼れるストライカーの離脱を受け、2月に緊急補強したマーティン・ブライトワイトもチーム練習で良い動きを見せているとはいえ、やはりリオネル・メッシのベストパートナーの合流は、キケ・セティエンとバルセロニスタにとって心強い材料だ。
 
 ただ、上積みの大きさで言えば、マドリーのほうだろう。

 今シーズンの補強の目玉でありながら、故障を繰り返し、サポーターの期待を裏切ってきたアザールだが、ここからの1か月で評価を劇的に高める可能性はある。実際、シーズン前半戦では瞬間風速とはいえ、手の付けられないパフォーマンスを披露していた時期もあった。2月末に負った右足腓骨の亀裂骨折も癒え、すでに全体練習に復帰。コンディションさえ万全ならば、前線に大きな違いをもたらしてくれるはずだ。

 さらに、アセンシオも戻ってくる。今シーズン、彼をチーム編成の軸に据えるつもりだったジネディーヌ・ジダン監督にしてみれば、まさに待ち望んだ人材であろう。

 昨年7月23日のプレシーズンマッチで、左膝前十字靭帯断裂および外側半月板損傷という重傷を負い、今シーズン絶望と言われていたアセンシオもまた、新型コロナウイルスによって回復のための時間を得たひとりだ。

 中盤のフェデリコ・バルベルデとともにマドリーの未来を担うべき逸材ではあるが、天才肌ゆえにときにプレーが淡白で、好不調の波も激しかったアセンシオ。しかし、キャリア最大の試練と言っていい今回の長期離脱と辛いリハビリを経て、精神的な強さを手に入れたに違いない。

「ここからは生死をかけた試合が続く。残り試合のすべてに勝つための努力をするつもりだ」

 その力強いコメントに、完全復活に向けた意欲がにじみ出る。
 
 アザールとアセンシオが戦列に戻れば、年明け以降、突如としてゴール欠乏症に陥ったカリム・ベンゼマの復調も後押ししてくれるだろう。想定されるのは、中央にベンゼマ、左にアザール、右にアセンシオの3トップだ。

 さらに、決定力不足という弱点を克服しつつあるヴィニシウス・ジュニオールや、傑出したドリブラーでありながらフィニッシャーとしても優秀なロドリゴ、そして問題児ではあれ、勝負所を知り尽くすガレス・ベイルなど、前線に役者はそろっている。少しずつ存在感を増していたルカ・ヨビッチの負傷離脱は残念とはいえ、それでもファイナルサードの攻略に課題を残した中断前までとは、ひと味違うマドリーが見られそうだ。

 守備の安定感(ここまでバルサの31失点に対して、マドリーはリーグ最少の19失点)、クラシコに勝ち越している事実(1勝1分け/勝点で並んだ場合、直接対決の結果が優先される)、さらにジダンの神通力(大一番での強さと卓越したマネジメント能力)を加味すれば、マドリーが逆転でリーガを制する可能性は大いにある。

 そして言うまでもなく、覇権の行方を占う上で重要なポイントとなるのが、再開初戦。ここで勝利してラストスパートに勢いをつけられるかどうかだが、バルサはアウェーで18位マジョルカ(6月13日)と、マドリーはホームで16位エイバル(6月14日)と対戦する。いずれも降格の危機に瀕し、そしてともに久保建英、乾貴士という日本人プレーヤーを擁するチームだ。

 今やマジョルカになくてはならない存在となった久保、毎シーズンのように後半戦で大きな仕事をやってのける乾のゴールが、あるいは今シーズンの結末を左右するかもしれない。

文●吉田治良(スポーツライター)

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