マジョルカの久保建英の周辺が日増しに騒がしくなっている。ラ・リーガ挑戦1年目の今シーズン、欧州サッカーへの驚異的な適応力を見せている若きサムライに対しては、この数か月の間に多くのクラブがレンタル元のレアル・マドリーに獲得を打診している。

 しかしだからこそマドリーの首脳陣は来シーズンのレンタル先を仔細に吟味しており、様々な条件を鑑みたうえで、現時点で久保に提示する腹積もりなのがレアル・ソシエダとミランのオファーだ。

 久保の成長に対して誰よりも驚きと喜びを持って見守っているのは他でもないマドリーの首脳陣だ。才能と将来性を見込んで昨夏に獲得に踏み切ったわけだが、スペインではフベニールの年齢に当たる19歳。当の本人たちもさすがにここまでスムーズに適応できるとは想像していなかった。

 事実、昨夏プレシーズンキャンプが始まった時点では2部B(実質3部)に所属するカスティージャで1年間プレーさせる構想だったが、プリメーラクラスの実力をアピールしたことで急遽レンタルさせる方針に舵を切った経緯がある。

 そして1年足らずの間にその移籍先として選択したマジョルカでもチームの枠に収まらない輝きを見せており、次のステップとして今度はヨーロッパカップ戦に出場するクラブを条件に移籍先を検討しているのだ。
 
 マドリーはレンタル修行中の若手に対して、シーズン中も密に連絡を取り合う方針を取っている。久保ももちろんその例に漏れないが、その中で首脳陣が評価しているのが意見を素直に聞き入れる柔軟性だ。

 あらゆる決定事柄が双方の話し合いのうえで進められており、代理人などの取り巻きの人間の意見を優先し、2019年冬に入団して以来、すでに3度クラブからのレンタル移籍の提案を断っているFWブライム・ディアスとは対照的だ。久保のそうした姿勢をマドリーが構築するキャリアルートを辿りながら順調な成長を見せているマルティン・ウーデゴーと重ね合わせる幹部は少なくない。
 
 くしくもそのウーデゴーが現在在籍しているのがレアル・ソシエダだ。ラ・リーガの1部のクラブから届いた10以上の打診の中でマドリーがこのバスクの名門を久保のレンタル先として優先的に検討するに至ったのは、カンテラを重視するクラブの方針に支えられ、ウーデゴーをはじめミケル・オジャルサバル、ミケル・メリーノといった若手が主力に君臨しているチーム環境にある。

 フロントも現場も若手を抜擢することに躊躇がなく、久保に対しても同様の起用を行うという言質を関係者からすでに得ている。現在ラ・リーガで6位につけ、来シーズンの欧州カップ戦の出場権獲得に近づいている点もマドリーのニーズと合致する。

 マドリーがソシエダと並んで久保の移籍先として推しているもう1つのクラブがミランだ。ミランサイドもCEO(チーフフットボールオフィサー)を務めていたズボニミール・ボバン(3月に退任)が年明けにマドリード入りし、正式にレンタルの打診をしており、強い関心を寄せている。

 マドリーとしても、近年低迷しているとはいえ、欧州屈指の名門クラブというステータスを評価しており、一流のレベルを肌で感じることができる環境は久保の成長をさらに後押しする要因になりうる。ただ肝心の久保自身が、ラ・リーガに上陸して1年足らずのこの段階で、再び国と主戦場を変えることに否定的な見解を示しており、ソシエダと比べれば可能性はかなり低下する。
 
 同じラ・リーガのクラブとしてはセビージャも候補に挙がっている。セビージャ側が強くプッシュしており、久保自身もクラブの規模でソシエダをさらに上回るアンダルシアの雄に好印象を抱いている。

 ただその分、メディアやファンの要求レベルが高く、自ずと若手が台頭する機会も限られてくる。ソシエダとの比較においてマドリーが懸念している点もまさにそこにあるが、現在順位は4位と来シーズンのチャンピオンズ・リーグの出場権獲得を視界に入れている。ソシエダがヨーロッパカップ戦の出場権を逃せば一気に本命に浮上する可能性もある。
 
 もちろん選択肢の一つとしてマジョルカ残留の線も完全に消えたわけではない。ただ2部に降格するとその時点で可能性は消滅。1部に残留できたとしても、来シーズン、チーム状況が劇的に変化するとは考えにくく、それがぬるま湯になって久保の成長にブレーキをかける要素になりかねない。久保自身は愛着を感じているが、魅力的な選択肢が他にある中、レンタル延長を選択する可能性は低い。

 久保の去就を考察するうえでもう一つ重要なファクターが、来シーズンの日程が変則的になることが決定的である点だ。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、今シーズンのラ・リーガは来月下旬まで日程が組まれている。さらにマドリーが8月に予定されているCLで上位に進出すれば、オフがほぼない状態で来シーズンの開幕を迎える可能性すらある。

 久保自身は昨夏がそうだったようにトップチームのプレシーズンキャンプに帯同しながら去就を模索する希望を持っていたが、現状そうした時間的余裕は取れそうにない。
 
 最後にマドリーのトップチーム入りの可能性については、ほぼないと言っていいだろう。才能のある若手をベンチに置き続けるのならば積極的にレンタル修行に出すというのが近年クラブが採っている手法である。その方針に照らし合わせれば、伸び盛りで現状出場時間を確保できそうにない久保は、まさにその対象に該当する。

 久保には少なくとももう1年はレンタルに出すことがマドリーの考えであり、現時点で選択肢として提案する意向なのがレアル・ソシエダとミランの2クラブだ。

 去就の可能性を割合で表わすなら、このような感じになるだろう。

●マドリーのトップチーム入り【5%】
●他のチームにレンタル【75%】
 ・ソシエダ(40%)
 ・ミラン(10%)
 ・ラ・リーガの他のチーム(20%)
 ・他国リーグのミラン以外のチーム(5%)
●マジョルカでレンタル延長【20%】
※1部残留の場合。2部降格の場合は0%。

文●セルヒオ・サントス(アス紙)
翻訳●下村正幸

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