コロナ禍を受けて、ヨーロッパのクラブは例外なく30%前後の減収を強いられている。だから当然、この夏から秋にかけた移籍マーケットに投下される資金は大幅減が確実だ。

 しかし、財政状況が良く「キャッシュ」を持っているひと握りのクラブだけは、狙った選手をバーゲン価格で獲得するチャンスを手に入れるだろう。

 その典型がチェルシーだ。補強禁止処分を受けていた昨夏に続き、そのペナルティーが解けた今冬も新戦力獲得を見送ったため、キャッシュを貯め込んでおり、かなり有利な立場にある。実際すでに、2月にはハキム・ジイェフ(アヤックスから)、そして6月にはティモ・ヴェルナー(RBライプツィヒ)という人気銘柄を、事実上の無競争で手に入れた。

 ヴェルナーはユルゲン・クロップ監督に口説かれてリバプールと内々で合意に達していたが、コロナ禍でリバプールが補強戦略を変更し、予算を大幅に縮小することになった。それを受けたクロップがヴェルナーに連絡をして「獲得が不可能になった」と伝え、ヴェルナーもリバプール行きを諦めてチェルシーのオファーを受け入れた、というのがこのディールの経緯だった。
 
 しかし、チェルシーのようにまとまった金額を投じてビッグネーム獲得に動けるクラブは、ごくひと握りだ。リバプールも私が知る限り、次のマーケットではトッププレーヤーを獲れないだろう。

 新スタジアム(19年4月に完成)建設費の負担が大きいトッテナムにしても、無観客試合でそのスタジアムがもたらしてくれるはずの収入が大きく減少し、補強予算を大幅に削減せざるをえない状況だ。

 マンチェスター・Uやバイエルン、パリSGといった資金力に恵まれたメガクラブも多
かれ少なかれ似たような状況に置かれており、大型補強に乗り出す気配は今のところまったくない。

 それぞれ強化が必要なポジションはあるため、補強ゼロということはないだろうが、動くにしても交換トレードなど大きなキャッシュを必要としないディールが中心になりそうだ。大金を投じてビッグネームを獲得する派手な動きに出る可能性は、極めて低いと見るべきだろう。

文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ(スカイ・イタリア)
翻訳:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年7月2日発売号より転載。同号では移籍市場の注目ポイントやメインキャスト最新動向に加え、メガクラブの5大ターゲットなども紹介。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。