今年からスタートした新リーグ『ULTIMA(アルティマ)FOOTBALL LEAGUE』。これは尚志(福島)、昌平(埼玉)、帝京長岡(新潟)、静岡学園(静岡)、興國(大阪)という技術と高度な戦術にこだわりを持ち、高校サッカー界で個性を放つ5校がリーグ戦を行ない、その技と力を競いながら育てていくという趣旨のリーグである。

 7月24日に先陣を切って、昨年度選手権優勝の静岡学園と、一昨年度選手権ベスト4の尚志の開幕戦が行なわれた。

 試合は3−1で尚志が勝利を収めたが、内容は両チームともに非常にハイレベルで、かつ公式戦さながらの白熱した戦いとなった。同時に、新型コロナウィルス感染拡大の影響で多くの高校生が、練習で得たものを実践に移すチャンスを奪われているなか、改めて実戦の重要性と大きな価値を見い出せた一戦にもなった。

 開幕戦に勝利した尚志は、J2モンテディオ山形内定のFW阿部要門と、早くもプロクラブの争奪戦が始まろうとしている2年生CBチェイス・アンリの2枚看板を軸に、4−4−2、4−1−4−1、3−4−2−1と複数のフォーメーションをこなせる柔軟性を誇るチームになっていた。
 
「CBで去年から出ている選手が多い中でアンリが加わってきて、本当に選手をフル活用できるフォーメーションをやれている」と仲村浩二監督が語ったように、ボランチとCBをこなせる渡邉光陽、ボールを前に運べるMF黒田陸斗、さらに松尾春希と新谷一真の2年生ダブルボランチと戦術理解度が高い選手が揃う。

 初戦の静岡学園相手には3−4−2−1の布陣で挑み、中央を固めながら効果的なカウンターを仕掛けた。開始早々の2分にエース阿部が先制点を挙げると、34分には渡邉がビルドアップから一気にゴール前まで駆け上がり、黒田のパスを鮮やかなトラップで受け、GKの股を抜くシュートを決めてリードを2点に広げた。

 後半は静学の多彩なボール回しを前に押し込まれるシーンが増えたが、アンリの球際の強さ、渡邉のカバーリング、神林翼のインターセプトなど、守備の個性がガッチリとした牙城を築いた。70分にはアンリのロングフィードに右MFの五十嵐聖己がスピードを生かして抜け出すと、相手との球際を制してマイナスの折り返しを供給。これを途中出場のFW齋藤大輝が繋いで、最後は黒田が冷静にネットを揺らし3点目を奪う。この一連の崩しは見事の一言だった。

 89分に静岡学園MF清水和馬に直接FKを決められて1失点をしたものの、今年のチームの完成度の高さを示す一戦となった。
 一方の静岡学園も、「ボールを握ることを意識してやって来たなかで、思ったよりできた」と川口修監督が笑顔を見せたように、久しぶりの本格的な試合で3失点こそしたが、2年生を多く起用したなかで、ボールを意図的に動かしてリズムを作り出したチームに合格点を与えた。

 昨年のレギュラーはプロ注目のDF田邉秀斗と、選手権決勝で同点弾を放ったFW加納大、GK野知滉平の3人。しかし、前述したように188cmの大型CB伊東進之輔、右サイドバックの清水、ボランチの玄理吾、180cmのFW松永颯汰と期待の2年生がそれぞれの持ち味を発揮した。

 そのうえ2年生MF菊池柊哉が途中投入されると、さらにボール回しにアクセントが加わり、エース加納も途中出場で前線を活性化。ほぼぶっつけ本番の状態だったが、個性が見事に噛み合い、『静学スタイル』を表現できのたは、川口監督が言うように明るい材料になったことは間違いない。

 何より印象的だったのが、試合後の両チームの選手、監督の表情だった。久しぶりの実戦から来る疲労感とともに、1試合を戦い抜いた充実した表情があった。
 
「今日みたいな緊張感のある試合がなかなかできないなかで、こういう機会を作っていただいてやれたのは皆さんに感謝しかありません。選手たちもこういうゲームで成長をする。練習試合ではなく、本番の緊張感のなかでやれるのは本当に大きい」(仲村監督)。

「紅白戦だけでは分からないことが見えてくる。尚志は公式戦さながらに勝ちに来ていたし、カウンターであれだけ鋭く持ち込まれてゴールを決められる。あの速さと強度をここで経験できたことは大きいし、選手たちの気づきを得られたのは僕らにとってプラス」(川口監督)。

 試合の結果以上にこの一戦が両チームに与える影響は大きかった。やはり本気の実戦こそが、選手たちの成長に直結する。予断を許さないコロナ禍の状況だけに、1試合の価値がこれまでとは違った。

「インターハイなどが無くなった分、こういう試合でしっかりとアピールしたいと思っていますし、実際にプレーをしてみて注目度が高いと感じました。スカウトの人たちが来ているので、1つ1つのチャンスを無駄にしないようにしています」とアンリも口にしたように、この一戦に意義を見出しているのは選手、監督だけではなく、Jクラブや大学などのスカウトも同じ。選手を緊迫した環境下の試合で見る機会が限られているからこそ、鋭い目線がピッチに飛んでいた。

 それぞれが価値を噛みしめながら臨んだ『ULTIMA FOOTBALL LEAGUE』開幕戦。前述した通り、決して楽観できる状況ではないが、試合を通じて成長する意味を改めて感じる一戦となった。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)