驚くほど、両者の考え方はシンクロしている。

 横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督は、かつてこんな風に語ったことがある。「守備的に戦って、カウンターで1点を取って、1-0で勝利する。結果はいいとして、内容については嬉しくもなんともない」。

 7月25日のオンライン取材に応じた鹿島アントラーズのザーゴ監督も、自身のサッカー観について話すなかで次のように述べた。「ファン・サポーターからすれば、ただ守ってカウンター1本で勝ちましたというのは、勝ったことは嬉しいけど、たぶん、それは見ていてあんまり楽しくないと思う」。

 さらにポステコグルー監督は「サポーターも同じ気持ちだと思うのですが、監督としても、攻撃的なサッカーは観ていてワクワクするし、楽しい。そのうえで、勝ちたい」と強調すれば、ザーゴ監督も「パスをつないだり、選手がボールを持った時のいろんな技、技術を観るのが、サッカーを愛する者としては、一番の醍醐味」と力説する。
 
 同じような信念を持つ両者は、7月18日の5節で対戦。4-2の打ち合いの末、鹿島に軍配が上がる。横浜はいつもと同じように人数をかけて分厚い攻撃を繰り出したが、「自分たちのミスからボールを奪われて失点してしまったのが残念」とポステコグルー監督は悔しがった。ザーゴ監督はポゼッションよりも、ハイラインを敷く敵の最終ラインの背後にある広大なスペースに目を向け「つなぐよりも縦への意識が非常に重要だった。我々は違う“色”も出せる」と微修正を施して、チームは効率的かつ鋭いアタックを仕掛けて得点を重ねた。

 ふたりの指揮官に違いがあるとすれば、柔軟性の強弱だろう。もっとも、根底にあるのはリスクを背負ってでも攻撃サッカーを貫こうとするスタンスであり、観ている者を楽しませたいという想いだ。ポステコグルー監督が「内容にこだわっている。そこは絶対に譲れない」と主張すれば、ザーゴ監督はどれだけ負けがこんでも「やっていることは間違っていない」と言い張る。そんな頑固一徹なところも。
 
 ポステコグルー監督の就任1年目は、ルヴァンカップで準優勝という結果を残したが、リーグ戦では残留争いに巻き込まれるなど苦戦を強いられた。堅守を伝統としてきた横浜を、『アタッキング・フットボール』の名の下に攻撃的な集団に変えた。抜本的な改革は少なからずハレーションを起こしたが、愚直にやり続けることで、就任2年目の昨季に15年ぶり4度目のリーグタイトルを勝ち取った。

 今季がザーゴ体制1年目の鹿島も、横浜に勝つまでは公式戦6連敗、奪った得点は相手のオウンゴールのみと厳しい戦いを強いられた。横浜に勝利した後の前節・湘南戦も、ゲームを支配しながら0-1の完封負け。いまだに低空飛行を続けている。こちらも「リアクションサッカーから、ポジションを取りながら相手を動かすポジショナルプレーを目指してやっている」と思い切ったチーム改造に着手し、そして産みの苦しみを味わっている。

 鹿島が苦杯をなめた湘南に、横浜は3節の対戦で3-2と競り勝っている。そんな横浜は、昨季にリーグ優勝を争ったFC東京に、今季の対戦では1-3と完敗を喫した。そのFC東京を鹿島は今節、ホームに迎える。ポゼッション最優先の横浜を相手にカウンターがハマって完勝を収めた難敵を相手に、同じくボール保持を重視する鹿島がどう戦うか。
 
「相手のカウンターが速いということは分かっていますし、ポジショニングが一番、大事になると思います。相手のスペースを消して、こちらはスペースを見つけて相手の弱いところを攻める、その繰り返しになるでしょう。練習でもその対策をしています。(ボランチとして)カウンターを受けないように、攻撃に良いパスを供給するためのポジショニングを意識しています」(レオ・シルバ)

 ソリッドな守備と切れ味の鋭いカウンターに定評のある“長谷川トーキョー”の戦いぶりも注目。見どころの多い一戦になりそうだ。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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