連覇を目指す前年度王者にまたひとり、新たな戦力が加わった。

 8月3日、横浜はJ2の松本山雅FCからFW前田大然を期限付き移籍で獲得(前所属クラブはポルトガルのマリティモ)。50メートルを5.7秒で駆け抜ける韋駄天の加入によって前線の層はさらに厚みを増した。

 横浜では先日、前田と同じ東京五輪世代のMF遠藤渓太がドイツ1部のウニオン・ベルリンへ期限付き移籍で旅立ったばかり。この海外移籍とタイミングがほぼ重なっているため、遠藤の穴埋めに期待がかかるのは自然な心理だろう。

 さらに昨季MVP&得点王のFW仲川輝人や12試合・8得点のFWエリキが7月下旬から負傷離脱しているため、ウイングとしてプレーできる人材が不足気味だ。

 前田はひとまず左右のウイングとして起用される可能性が高く、ポゼッション時の立ち位置や守備時の連動など約束事をインプットする必要がある。アンジェ・ポステコグルー監督は前田のアグレッシブさを評価している模様で、横浜の特異なスタイルに慣れることが先決だ。

 ただし、遠藤と前田ではプレースタイルが異なる。前者がいわゆるサイドアタッカータイプなのに対し、前田はスピード豊かなストライカーだ。単純に「足が速い」という共通点だけで似たようなプレーを期待するのは早計だろう。

 横浜の4-3-3に当てはめて考えた際に、前田の適正ポジションはどこか。広いスペースがあってこそ生きるスプリント能力をタッチライン際に限定するのが得策か微妙なところ。適応能力を見極めてからの話になるが、例えば似たような個性を持つエリキは今季、ウイングの位置で本来のパフォーマンスを発揮できていない。その二の舞だけは避けたいところだ。

 当然、ポステコグルー監督はストライカーポジション(3トップ中央)での可能性も模索するだろう。FWのエジガル・ジュニオやオナイウ阿道とは異なるタイプの選手として新たな選択肢になるかもしれない。彼らのようなポストワークではなく、オープンな展開でスペースがある状況で本領発揮となる。
 
 東京五輪世代では名の知れた選手で、昨夏のコパ・アメリカでA代表デビューを飾った経歴を持つ。しかしながらJ1での実績は昨年前半戦の18試合・2得点のみ。シーズンを通して活躍したことはない。

 持っているポテンシャルに疑いの余地はなく、それは獲得の決め手となった要素でもある。前田がさらなるステップアップを果たすためには、まず横浜のスタイルを体得し、激しいポジション争いを制す存在感を見せなければいけない。

 圧倒的なスピードを誇示し続け、さらなる成長を遂げること。前田の進化は横浜のチーム力アップと同義だ。

文●藤井雅彦(ジャーナリスト)

【J1第8節PHOTO】仙台0−1横浜|マルコス・ジュニオールが劇的AT弾!横浜FMが仙台に1−0勝利!