先週、2019-20シーズンのプレミアリーグを破竹の勢いのまま制したリバプールは、アンフィールドで優勝トロフィーを掲げるセレモニーを行なった。

 30年ぶりのトップリーグ制覇に選手やコーチングスタッフが一様に嬉々として、プレミアリーグのトロフィーを掲げるなか、日本代表の南野拓実だけは、どこか喜びきれずに蚊帳の外にいるように見えた。その際に主将のジョーダン・ヘンダーソンが腕を引っ張り、歓喜の輪に加えたシーンは、日本でも大きな話題となったと聞いている。

 南野は今年1月にレッドブル・ザルツブルクから加入しながらも、0ゴールと結果を残せずにシーズンを終えた。その事実と自身の実力不足を痛感した彼は、「自分がトロフィーを持つのにふさわしくない」と苦々しい表情を浮かべていたのだろう。

 ただ、私は彼がそこまで重く受け止める必要はないと感じた。なぜならシーズン途中に入ってきた選手が早々にフィットできるほど、世界でも一番と言っても過言ではないタフなプレミアリーグは甘くないからだ。
 
 ましてやリバプールのアタッカー陣の競争は、リーグトップレベルの熾烈さだ。すでに3年間もプレーし続けているモハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネと争うのは、ザルツブルクで台頭した若手でも容易ではない。その点は、ユルゲン・クロップ監督も「タキ(南野の愛称)には時間が必要なんだ」と認めるところである。

 なんにせよ、イングランドのファンやメディアは、南野に小さくない期待を今も抱いている。それはポジティブに捉えるべきだろう。だからこそ彼にとって、今夏のプレシーズン期間は重要になる。

 新型コロナウイルスの影響で、通常のシーズンほど時間がないとはいえ、南野は、自分がチームの一員になれたと実感するためにピッチの内外でアピールする必要性がある。プレシーズンは、仲間たちとの絆を深める重要な期間であり、とくに他国からやってきた“助っ人”にとっては、自らの個性をより深く知ってもらうために必要不可欠な時間だと言える。南野もしっかりと活かすべきだ。
 英国メディアや辛口の識者からは厳しい指摘も飛んでいるが、私はクロップが将来設計の一部に南野を入れていると考える。

 とくに、常に先を見据えてチーム作りをするクロップのような監督は一度信頼した選手は辛抱強く見守り続ける。もちろん、就任5年で土台が完成したチーム事情もあるが、南野のように問題行動の少なく、献身的な選手は、貴重な戦力と捉えているはずだ。
 
 その考えはファンも同様だ。あるリバプール・ファンは、「南野に成功してほしい」と私に話した。彼は昨年10月にアンフィールドで開催されたチャンピオンズ・リーグのザルツブルク戦で、南野に鮮烈なゴールを決められていたのを「忘れていない」とも語ってくれた。

 私と話してくれた彼をはじめ、大半のレッズ・ファンは、南野のパフォーマンスに否定的な見方はしてない。むしろ今以上に貢献することを期待している。

 実際、シーズン終盤の南野は冴えていた。最終節のニューカッスル戦では、もう少しでゴールという惜しいシュートを放つなど、印象的な存在だった。

 読者の皆さんに忘れないで欲しいのは、彼は”真の意味で”イングランドで最高のチームに入ろうとしていることだ。それは、たとえリオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウドなど、誰であろうと簡単なことではないのだ。

取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。