残された高校生活は半年。1年次から注目を集めてきた逸材はプロ入りを諦めていない。

 今シーズン、流通経済大柏でキャプテンを任されているDF藤井海和(3年)。中学時代は東京都トレセンにも選ばれていなかったが、高校入学後にブレイクを果たしてJクラブから注目を集めるようになった。

 2年前のU-18高円宮杯プレミアリーグEASTの第2節。市立船橋戦にCBとしてスタメン出場すると、堂々としたプレーで可能性を示した。当時流経大柏を率いていた本田裕一郎前監督(現・国士舘高テクニカルアドバイザー)も「ハートが良いよね」と絶賛。ルーキーらしからぬ出来に頰を緩ませるほどだった。チャンスをモノにすると、瞬く間にレギュラーに定着。同年の高校サッカー選手権にも全5試合に先発出場し、準優勝を経験した。

 去年は主軸としてプレーし、世代別代表も経験した。名伯楽に評価されたメンタリティに磨きを掛けながら、類まれな守備センスをいかんなく発揮。CBを主戦場にボランチやSBにも対応し、プレーの幅を広げていった。

 大舞台で活躍し、評価を高めた藤井。Jクラブからも注目を集めるようになり、高卒でのプロ入りを目指すのは自然の流れ。最終学年ではリーグ戦、インターハイでアピールし、早々に内定を得るつもりでいた。しかし――。

 春先には名古屋グランパスの練習に参加し、ガブリエル・シャビエルらとの対峙で大きな刺激を受けた矢先だった。新型コロナウイルスの感染拡大によって3月1日から6月上旬まで全ての活動がストップ。プレミアリーグは開幕延期となり、インターハイも中止となった。当時の心境を藤井はこう振り返る。

「自分は1、2年の時にインターハイに出場を逃しているので、今年こそは全国の舞台に行きたかった。また、チームとしてもU-18高円宮杯プレミアリーグ、インターハイ、高校サッカー選手権の3冠を目標に掲げていたので、なくなった時は正直ショックで…」

 プロを目指す上で公式戦の活躍は必要不可欠。とりわけ昨季は選手権とインターハイに出場しておらず、3年次の活躍がプロ入りに直結する。「特に自分はプロになりたいので、インターハイの中止でアピールができなくなったのは自分の中で辛かった」と藤井が肩を落としたように、公式戦の見合わせは大きな影響を与えた。

 今年はJクラブへの練習参加も新型コロナウイルス感染拡大の影響で行なえていない点を含め、今年は今まで以上に公式戦のパフォーマンスが重要だ。逆に言えば、公式戦でアピールができなければ声が掛からないとも言える。

 そこは本人も理解している。

「スカウトや関係者が見に来る試合は限られているので、逆にそこで良いパフォーマンスを見せられればプロに行ける可能性が高くなる。だからこそ、(リーグ戦や)選手権に懸ける想いは強い」
 
 2度の開幕延期とレギュレーション変更を経て迎えた9月6日のU-18高円宮杯プレミアリーグ関東の開幕戦。横浜FCユース戦にキャプテンマークを巻いて先発出場を果たすと、今までの鬱憤を晴らすようなプレーで存在感を発揮する。

 チーム事情でCBを任された中で、鋭い読みと球際の強さで相手の前に立ちはだかった。また、開始早々に守備がハマらないと判断すると、榎本雅大監督にシステムの変更を要求。軌道修正を図り、守備の安定に一役買った。瞬時に状況を見極める力と自主性。主将としてチームに落ち着きをもたらし、0−0のドローとなった中でも自らの役割を全うした。

「久しぶりの公式戦で緊張感を味わいました。改めてプレーできるありがたみ、サッカーができる楽しさや喜びを感じ、本当に良かったです」

 リスタートを切った藤井はリーグ戦と選手権でプロ入りを勝ち取れるか。大学の選択肢も捨ててはいないが、現状ではギリギリまで可能性を模索するつもりだ。

 榎本監督が「CBが怪我でいないので本職ではないポジションで使っています。ただ、藤井が1つ前で仕事をさせれば、フィニッシュワークのところまで関われる。そうすることが彼の将来につながるけど、今はチームが勝つために納得してもらっている」と言うように、今は希望するポジションで起用されていない。しかし、不満はない。与えられた場所でアピールを続けることでしか、プロ入りを掴み取れないのを理解しているからだ。藤井は異例のシーズンを全力で戦い、自分の未来を切り開く。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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