浦和レッズの大槻毅監督は複雑な気持ちだっただろう。横浜FC戦で喫した2失点を「松尾選手が取ったというより横浜FCに浦和レッズが取られた。それが悔しい気持ちが一番強いです」と振り返ったが、その2失点は、浦和ユースで指導した教え子に決められたのだから。

 9月26日のJ1第19節・浦和戦で2ゴールと強烈なインパクトを残した松尾佑介は、中学時代から浦和の下部組織育ち。トップチームには昇格できずに仙台大に進学したのちに、昨年の特別指定を経て横浜FCでプロ入りした。そして、プロ選手として初めて訪れた埼玉スタジアムで古巣の浦和から2ゴールを奪い、勝利の立役者となったのだ。

「レッズユースだったので、レッズの試合をみんなで観に行くこともありました。本当に僕にとっては、一番身近に感じられる夢の場所。そこでプレーできたことは本当に幸せなことです。チームは違いましたけど、ここでプレーできる幸せを噛み締めながらプレーしていました」

 そんな夢の場所で松尾は躍動した。16分、相手GK西川周作のキックミスを拾った手塚康平からパスを受けると、左サイドからカットインし、右足を一閃。鋭いミドルシュートをゴール右隅に突き刺してみせた。さらに35には、レアンドロ・ドミンゲスの絶妙なスルーパスに反応して相手DFの背後に抜け出し、GKとの1対1を制して追加点まで奪う。
 
 しかも、ユース時代に薫陶を受けた大槻監督の目の前で、だ。感慨深げに試合を回想した松尾は、恩師の前でゴールを決めたことについて訊かれると「(浦和)ベンチが横なので圧迫感がありました」と特別な緊張感があったと明かす。

 それでも「僕はいつもと変わらずプレーするだけでした」と、その圧迫感に屈しない精神的な強さが松尾にはあった。さらに松尾を突き動かしたのは、また別の想いでもあっただろう。ちょうど2か月前の7月26日、ホームのニッパツ三ツ沢球技場で2−0で敗れた7節のリベンジである。

「ホームでは0−2でやられていて、ここで2−0で勝った。ドッコイではないですけど、やられた分やり返せたのは大きかった」
 前回対戦では積極的に仕掛けて何度も決定機を作ったものの、結果に結びつけることができなかった。だからこそ結果に固執していたはずだ。ゴールへ強いこだわりは「良い意味でゴールがなかったら叩かれる選手になりたい」というコメントからもうかがえる。

 J1通算得点ランキング1位(185点)の大久保嘉人と2位(161点)の佐藤寿人は、ある取材で「エースというのは重いもの。点を取って当たり前。取らなければ叩かれる。そういう重責がある」と言っていた。

 ふたりの偉人の言葉にならえば、松尾が目指すのは横浜FCのエースということだ。松尾は「ゴールがなかったら叩かれる選手」について、浦和のレオナルドを引き合いに出して語る。
 
「レオナルドは僕と同じ22歳で9得点取っている。僕は4点(浦和戦で6点に)。その比較を記事にされる。そうした評価を考えると、同い年のレオナルドとかには負けたくない。サポーターから叩かれることで、もっと貪欲にゴールに向かうメンタルになると思う。その良い循環が生まれる」

 浦和戦での2得点が、正真正銘のエースになるための足掛かりとなるか。成長著しい23歳のアタッカーに注目したい。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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