今月5日にクローズした移籍マーケットで、レアル・マドリーは実に40年ぶりに補強ゼロに終わった。言うまでもなくパンデミックによる財政難を乗り切るための施策の一環であるが、加えて既存選手の放出でおよそ1億ユーロ(約125億円)を捻出。特筆すべきはその大半の財源となっているのが、カンテラ出身の選手である点だ。

 事実、ハメス・ロドリゲスやガレス・ベイルというネームバリューのある2人の余剰戦力の整理にも成功したが、それぞれ無償でエバートンとトッテナムに移籍し、儲けは給与の削減分だけである。

 全体的に見れば、マドリーはほぼ当初思い描いていたシナリオ通りに今回の移籍マーケットを乗り切ったと言える。若手選手を高値で売りさばき、マルティン・ウーデゴー、アンドリー・ルニン、アルバロ・オドリオソラの3人がレンタルバック。さらに前述したようにジネディーヌ・ジダン監督がリクエストしていたハメス・ロドリゲスとベイルの放出に成功した。大きな誤算と言えるのは、構想外を宣告されながら、昨夏に続いて退団を受け入れなかったマリアーノ・ディアスくらいだ。
 
 マドリーが巧みなのは、そうやって若手を放出しながらも、それぞれの契約に将来的に呼び戻すことができるオプションを盛り込んでいる点だ。トッテナムに3000万ユーロ(約37億円5000万円)で売却したセルヒオ・レギロンには4000万ユーロ(約50億円)の買い戻しオプションを保持。ダニエル・セバジョスはレンタル移籍で、受け入れ先のアーセナル側に買い取りオプションは付帯していない。

 マドリーにとって今回の移籍マーケットで、最大の売却オペレーションはアシュラフ・ハキミだ。2年間、レンタル修行に出していたボルシア・ドルトムントで急成長を遂げ復帰も取り沙汰されていたが、本人はジダン監督の信頼厚いダニエル・カルバハルが不動のレギュラーとして立ちはだかるマドリーでは出場機会が限定されると判断し移籍を希望。移籍金4000万+インセンティブ500万ユーロ(約6億2500万円)でインテルに売却された。

 加えて1350万ユーロ(約16億9000万円)でオスカル・ロドリゲスのパスの75%をセビージャに譲渡。さらには2017年夏にレアル・ソシエダに売却した際に、将来再び環境を変える際に移籍金の30%を受け取るという条項が盛り込まれていたディエゴ・ジョレンテがリーズ・ユナイテッドに移籍したことにより、約400万ユーロ(約50億円)の収益を手にした。

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 もっともカンテラ上がりの選手たちが重要な収入源となった一方で、前出のハメスとベイルの件は、売り時を誤った印象だ。移籍先探しに苦戦し古巣のトッテナムくらいしか候補がなかったベイルはもちろん、1年前は4000〜5000万ユーロの値札が付けられていたハメスも、ジダン監督の強い要望を受けて放出を最優先させたことでマドリーの懐に入るお金はゼロとなった。

 しかも移籍金は非公式ながら当初は2500万ユーロ(約31億2500万円)前後と伝えられていたが、ハメス・ロドリゲスが2008年から2010年に在籍したバンフィエルドが育成費を受け取らなかったことを暴露したことで、実はまったく発生しなかったことが明らかになるという曰く付きだった。

 マドリーが前回、1980年に新戦力の獲得を見送ったのはアグスティン・ロドリゲス、リカルド・ガジェゴ、フランシスコ・ピネダとカスティージャから有望株が一度に昇格したことが背景にあった。それから40年の歳月が経過し珍事が再現する中、カンテラーノたちが果たした役割は全く異なるものだった。

文●ロレンソ・カロンヘ(エル・パイス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸

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