居ない存在の大きさに気づくのはよくある話で、0−0に終わった柏対清水では、連戦による疲労を考慮して欠場したオルンガの凄みを再確認させられた。

 前半は清水が圧倒的に攻め込んだ。柏のネルシーニョ監督も「非常にハイテンポで攻撃を仕掛けてきて、前半は相手のペースに呑まれてしまった」と認めていて、アウェーチームが良質なポゼッションから何度もチャンスを作った。

 一方で後半は柏が「しっかり主導権を持ってボールを動かし、ゲームの流れを引き寄せることができていた」(ネルシーニョ監督)。確かに82分には、神谷優太のシュートがポストに弾かれるなど、決定機はあった。

 ただし両チームともに、綺麗にボールを回してゴール前まで攻め込んでも、高揚感が湧くほどの絶好機は前述の神谷のシュートくらいである。どんなにパスで崩しても点が入る予感があまりしなかった原因は、なんだったのか。

 J2でゴール量産体制に入った昨年の夏頃、インタビューでオルンガに得点のコツを聞いたことがある。

「相手よりも先手をどれるかどうか、リアクションのスピードと質を大事にしている。もちろん、身体能力は武器だけど、そればかりに頼ることなく、いかにボールに早く反応できるかを常に意識している」

 前半に攻め込んだ清水も、後半に挽回した柏も、“自分たちの”パス回しに執着しているばかりで、相手との駆け引きのなかで攻撃を仕掛けている印象は薄かった。反面、オルンガは敵を出し抜くことを常に意識している。

 例えば直近に決めたG大阪戦の得点も、ミスが起きてルーズボールが江坂任にこぼれそうになった瞬間、オルンガはすでに最終ラインの裏に走り始めていて、相手よりも先手を取ってネットを揺らした。過去のゴールを振り返ってみてもフィニッシュまでの時間は短く、一方でチームが時間をかけて綺麗にパスで崩し切ったボールを最後に押し込む得点は少ない。それは常に最適なポジションを取って、素早く動き出しているからだろう。

 清水のピーター・クラモフスキー監督は試合後、「チャンスを多く作れていた」と語った。その価値観を当てはめれば、後半の柏もチャンスが多かったと見ていい。しかしスタンドで試合を見ていたオルンガの目に、“決定機”と映ったシーンはどれほどあったのだろうか。たぶん大衆の視点とは、大きな乖離があると思う。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)