各国代表チームが国際Aマッチウィークを精力的に活動するなか、“ウォー・エレファンツ”タイ代表も国内強化合宿を行なった。合宿の締めくくりには、国内リーグから選りすぐられた選手を集めた“タイリーグ・オールスターズ(以下、TLAS)”とのテストマッチが組まれた。

 タイ国内でも注目度の高いJリーガー4名(チャナティップ、カウィン、ティーラトン、ティーラシン)は先月同様、今回も招集されていないが、日本人にも馴染みある顔がスターティングメンバーにあった。

 タイ代表の1トップにはFWナッタウット(バンコク・ユナイテッド/元FC東京U-23)、ボランチにMFティティパン(BGパトゥム・ユナイテッド/元大分)が、TLASには今季からタイでプレーする丸岡満(BGパトゥム・ユナイテッド/元C大阪)が、タイリーグでプレーする日本人選手として唯一招集され、スタメン出場を果たした。またそれぞれのベンチからはFWシティチョーク(タイ代表選出=トラートFC/元鹿児島)、MFチャウワット(TLAS選出=BGパトゥム・ユナイテッド/元C大阪U-23)も出番を窺った。

 A代表初招集が多く若手主体のメンバーだったとは言え、国内リーグ2部チーム相手に行なわれたテストマッチで敗戦(0-1/ナコンパトム・ユナイテッド戦)を喫した10月の強化シリーズ。だからこそ、どんな事情があったとしても、この試合は勝敗にこだわってほしかった。しかし……。

 結果は2対2のドロー、タイ代表が得点すればTLASが都度追いつく展開となった。TLASは云わば急造チーム、当たり前だが連係は良くなく、外国人選手の個人能力のみで打開策を見出すしかないチームだったことを考えると、いかんせん残念な結果である。

「代表チームは常にどんな状況であっても勝利するということが義務付けられていること、それに関して追求しきれなかった結果は私の責任です。しかし選手はいろんな状況下でしっかりとチャレンジしてファイト出来たと思っていますし、やろうとしていることを結束してやれたということが一番の成果だと思っています」

「準備期間、活動期間がない中でインドネシア戦(ワールドカップ2次予選)を迎えなければならないですし、それまでにダメージを受けた選手たちをケアしなければいけない状況、またシーズン終わりにスズキカップ(今年末から来年4月へ延期された東南アジア選手権)があり、そこをしっかりと捉えたなかで、選手の選択肢がある先月今月と新しい人材発掘をする良い機会でしたが、選手がクラブでもっともっと成長していかないと組織が成長していかない。過密な中でも、代表というスタンダードを持って、クラブでの活動に活かしてほしいなと思っています」

 西野監督の試合後会見のコメントは上記の通り。来年3月に再開される22年カタール・ワールドカップ・アジア2次予選、また来年4月へ延期された東南アジア選手権(スズキカップ)へ向けたチーム作りに苦悩している状況にあるのだろう。歯切れが悪かった。
 
 寄せ集めの国内リーグ選抜に引き分けたとはいえ、FWスパチョーク(ブリーラム・ユナイテッド)、FWエカニット、MFピティワット(共にチェンライ・ユナイテッド)など、監督お気に入りの選手はコンディション都合で招集できていない。また、コロナ禍を逆手に取り“秋春制”へと移行した国内リーグを終えるタイミングでの“大戦”に向け、怪我人や蓄積疲労を考えれば、計算出来る戦力を少しでも多く抱えておきたい監督心情は、理解できるところではある。

『チャーン・スックはドロー。2点先取もオールスターに巻き返される』(サイアム・スポーツ)
『西野タイランド、引き分けであったがチームには満足。経験を積む良い機会だった』(SMMスポーツ)

 試合後の現地メディア各社の見出しである。記事も試合内容細部には触れず、当たり障りのないものが多かった。この日、5万人収容を誇るタイ随一の箱に集まったファンは4,826人のみ、タイ国内でプレーする名高い選手が集う試合にしては実に淋しいものだった。

 現在、首都バンコクを走る高架鉄道、スカイトレイン(通称BTS)では、Jリーグデザインのラッピングが施された列車が運航されている。タイ人Jリーガーは勿論のこと、アンドレス・イニエスタなどスター選手があしらわれた車両が街中を走っているのだ。

 また代表戦の裏で行なわれたJ1リーグでは、好調なC大阪相手に勝利した試合に出場した清水FWのティーラシンや、大勝した浦和戦で横浜での50試合出場を記録したティーラトンの扱いをより大きく取り上げる現地メディア。経済成長著しいタイにおいて、未だ日出ずる国のサッカーブランドや舶来事に、より興味があるということなのだろうか。ブランド志向の強いお国柄、分からない訳でもないのだが、嬉しいような悲しいような……。

 ただ一点言えるのは、この日の国民の関心事は、海外組のいないチャーン・スックよりも、民主記念塔前に集結した反政府デモの活動ライブの方にあったということだ。

取材・文●佐々木裕介