現在、ユベントスで指揮を執っているアンドレア・ピルロは現役時代、華麗なるレジスタとして観る者を魅了し、対戦相手を苦しめた。

 局面を一気に変えるパスで幾多の名シーンを演出したピルロ。その名手に一切の仕事をさせなかったのが、マンチェスター・ユナイテッド時代の元韓国代表MFのパク・チソンだ。

 2010年3月に開催されたチャンピオンズ・リーグのラウンド・オブ16第2レグでミランと対戦した際に、アレックス・ファーガソンから「今日の相手はピルロが全てだ。だから、お前の仕事はピルロを止めることだ」とマンマークを命じられたパク・チソンは、その大役を見事に全う。執拗なチェックでイタリア代表MFに自由を与えなかった仕事ぶりには、同じピッチに立っていたイングランド代表FWウェイン・ルーニーが「パクの任務を遂行する力は信じられないものだった」と舌を巻いたほどだった。

 そんなアジア・サッカー界の英雄との対戦は、ピルロにも強烈なインパクトとして記憶されているようだ。英メディア『Sportbible』によれば、自伝本のなかで、こう綴ったという。
 
「ファーガソンは汚れのない男だ。だけど、我々との対戦の時には、自らをすこしだけ汚したんだ。そのわずかなみすぼらしさによって苦しめられた。ミラノでの対戦でファーガソンは“番犬”を解き放ち、私のプレーに影を落とさせた」

 そして、パク・チソンについて「電光石火のように速かった」と対戦を振り返っている。

「彼は光の速さで動き回っていた。そしてまさに全身全霊で私を脅かしたんだ。本当に私を食い止めることだけをプログラムされた機械のようだった。あの献身性と仕事へのコミットメントはもはや感動的だったよ。彼は名のある選手だったにもかかわらず、番犬として扱われることに同意したんだからね」

 ルーニーの他にもクリスチアーノ・ロナウドやカルロス・テベス、リオ・ファーディナンド、ポール・スコールズなど多士済々だった当時のユナイテッドにあって、決して目立つ存在ではなかったパク・チソン。だが、その影響力は小さくなかったようだ。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部