パリ・サンジェルマンが現地時間20日夜、リーグ・アンでモナコにまさかの逆転敗北を喫し(2−3)、チャンピオンズ・リーグのRBライプツィヒ戦を前に、危険水域に入りそうな気配になっている。

 この日の試合では、キリアン・エムバペが、青春時代を過ごした古巣モナコを相手にあっという間に2ゴールを叩き入れ、そのうち1ゴールは時速35キロメートルの“十八番”だった。これでエムバペは21歳にして、パリSGでの99ゴール目をゲット。もう少しでハットトリックも実現しそうになったものの、オフサイドで幻のゴールに。だが、「すわ、100ゴール達成か!」とファンを興奮させた。チームも2−0で、余裕のハーフタイムを迎えた。

 ところが、エムバペがベンチに下がった後半、モナコの猛反撃に遭遇したパリSGは、あえなく瓦解。試合後にプレスネル・キンペンベは、「後半は許しがたいものだった」と怒りをぶちまけ、トーマス・トゥヘル監督は、「怒るというより驚いている。真面目じゃなかった。前半はよかったのに全てを失くしてしまった」と頭を抱える始末だった。

 この結果を受けて、夜の討論番組『L’EQUIPE DU SOIR』ではパリのフィジカル管理が話題になったが、モナコのフィジカルコーチを務めた経験をもつボブ・タリ氏は、「パリSGは(昨シーズンの)CL決勝以来、何もかもうまくいかなくなっている」と指摘した。
 
 確かに「ファイナル8」で驀進してバイエルンに敗れた後、クラブ内はギクシャクだらけになった。まず、トゥヘル監督が望まなかったにもかかわらず、クラブ側は選手たちに一週間の休暇を与え、何人かがイビサ島でバカンス。このイビサ組が次々とコロナウィルスに感染し、シーズン序盤はほとんど主力を欠いてのスタートになった。

 またケガ人も続出し、挙句に慎重だったエムバペまでコロナ陽性に。もともと捻挫明けで「ファイナル8」を戦い、コロナにも捕まったエムバペは、「今年はどうも奇妙。休みがないまま昨シーズンがずっと続いているような感覚…」と、珍しくぼやきのような言葉を漏らした。

 さらに、スポーツディレクターのレオナルドとトゥヘル監督の確執も悪化した。SDは「監督解任など検討もしていない」と否定したが、どうも晴れやかとは言い難く、パリSGは今シーズンのCL第3節までで1勝2敗と、グループ3位に留まっている。

 試合内容も冴えず、魂がどこかに消えてしまった。リーグ・アンではさすがに首位に返り咲いたものの、今回のモナコ戦が象徴するように“個の煌めき”に頼るばかりとなっている。
 こうしたなか迎えるRBライプツィヒ戦では、キンペンベが出場停止、ティロ・ケラーは負傷中。マルキーニョスが復帰することだけはグッドニュースだが、どんな守備ができるのか怪しい雰囲気だ。モナコ戦でPKを献上し、決定的に瓦解したアブドゥー・ディアロと、やはり同戦で攻略されっぱなしだったレイヴィン・クルザワに、また頼るしかなさそうだからだ。

 中盤もマルコ・ヴェラッティのケガが治癒したのかどうかが不明で、モナコ戦でめでたく本職に起用されたダニーロ・ペレイラはと言えば、「トーマス・トゥヘルは今朝、ポルトガル人の最高ポジションが本当に中盤なのか自分の隣のベンチ上なのか、自問したはずだ」(『L’EQUIPE』)と書かれる始末。

 そのうえ後半に投入されたネイマールは、「ピッチ上への復帰と股抜きコンクールを混同した」(同紙)パフォーマンスに終始し、アルゼンチン代表から戻ったばかりのアンヘル・ディ・マリアも「まるでパリの観光客」(レイモン・ドメネク元フランス代表監督)だった。

 深刻なのは、今シーズンが始まって以来パリSGが、リーグ・アン11試合中3試合に敗北、CLを含めると14試合で5試合に敗北している、という事実だ。偶然モナコに不覚をとったというより、一貫して何かがおかしいのである。
 
 コロナ禍で昨シーズンが長く中断した影響なのか、CLファイナリスト実現で一種のバーンアウトが起きたのか、今シーズンのフィジカル・プレパレーション(準備)にしくじったのか、ウィルスがコロナ陽性者の心身を目に見えないかたちで蝕んだのか、クラブの管理運営が悪いのか、それともその全てなのか――。謎は深まるばかりだ。

 しかもエムバペもネイマールも、2022年6月に切れる契約の更新に応じていない。年が明けて2021年になれば、ふたりとも違約金の額が下がってくる。つまり他のメガクラブにとって釣り上げやすくなり、パリSGにしてみれば巨額の損失という最悪のシナリオもちらつき始める。

 『L’EQUIPE』21日付一面の大見出しは「薄汚い時期」。ホームのパルク・デ・プランスにRBライプツィヒを迎え撃つパリSGは、危険水域を脱出し、美しい海へ再出発できるだろうか。

取材・文●結城麻里
Text by Marie YUUKI