22日から始まった千葉・幕張での東京五輪代表候補合宿も3日が経過し、実戦形式の内容が日に日に増えている。これまでU-23日本代表では3-4-2-1システムをベースにしてきた森保一監督だが、今回は終始一貫して4-2-3-1の布陣を採用。A代表との継続性を重視しながら、「慣れた布陣で選手個々に持てる力を出し切ってほしい」という期待を寄せているはずだ。

 こうしたなか、FW陣は今季J1・二桁ゴールを達成した上田綺世(鹿島)がやはりキーマンになりそうだ。初日から3日連続で主力組と見られるチームの1トップでプレー。攻撃の軸を担っている。23日は彼を頂点として、2列目右には浅野雄也(広島)、左に前田大然(横浜)、トップ下に安部柊斗(FC東京)が陣取る形にトライ。24日はトップ下に郷家友太(神戸)が入っていた。

 サブ組と見られるチームの最前線には追加招集の一美和成(横浜FC)が起用されていたので、その立場としては上田のバックアップという位置づけなのだろう。今回FW枠で招集されている前田大然も浅野雄也もトップに入ることはあるが、持ち味であるスピードや突破力を発揮するなら、大きなスペースのあるサイドの方がベター。そうした考えから、このような配置が生まれたと推測が立つ。

 仮に従来の1トップ2シャドーを採用した場合にも、上田と一美は最前線に位置付けられるはず。それだけ2人に託される役割は大きい。というのも、厳しいプレッシャーのあるペナルティエリア内でボールを収め、味方との連係をスムーズにしたり、自ら局面を打開してゴールを狙いに行ったりと、幅広い仕事が求められるからだ。加えて、前線で相手を限定したり、ハイプレスに行ったりと守備負担も少なくない。上田、一美がこうした要求を一定基準以上のレベルでこなせることが実証できれば、東京五輪代表のみならず、A代表も見えてくるはずだ。

 実際、10・11月のA代表の欧州遠征を振り返っても、大迫勇也(ブレーメン)が招集できなかった3試合は鈴木武蔵(ベールスホット)と南野拓実(リバプール)、浅野拓磨(パルチザン)が起用されたが、相手との実力差もあって大迫がいる時のようには時間を作れなかった。A代表でも「最も手薄なポジションの1つ」と言われる1トップ候補者が東京五輪世代から出てきてくれれば、森保監督にとっても理想的。上田と一美にとっては大きなチャンスと言っていい状況なのだ。
 
 とりわけ、2019年にコパ・アメリカ(ブラジル)とE-1選手権(釜山)に参戦した上田はそこに最も近い存在。2020年はケガで出遅れ、ザーゴ監督率いる新体制の鹿島では思うように出番を得られずに苦しんだが、最終的には10ゴールを達成。「この調子を維持していればA代表に呼ばれる日も近くなる」とブラジル人指揮官に太鼓判を押されるまでになった。

「自分がどう引き出しを増やすか、どうしたらレギュラーを取れるか、上田綺世のキャパシティを広げることができるかを考えた1年でした。自分なりに自負している特徴はヘディングや動き出しですけど、走っても空振りで終わることが多かった。そこでポストプレーや守備などチームが重きを置くことをやって、そのうえでよさを出すようにした。今は引き出しを増やした実感はあります」

 今回の合宿中の取材でも自信を覗かせた上田は再び急激な成長曲線を描き始めている。森保監督も「周りから信頼され、ボールが集まるようになってきた」と目を細めている。それだけに、まず彼には26日の関東大学選抜とのトレーニングマッチで「違い」を示してもらわなければならない。「大迫勇也の後継者候補一番手」としてインパクトを残せれば、半年後の大舞台は確実に近づいてくるはずだ。

 一方の一美は、上田ほどの万能性はないものの、相手を背負ってターゲットマンとなり、自らゴリゴリと力強くゴールに迫ることはできる。フィジカルの強さという意味では、鈴木武蔵に通じるところもある選手だが、まだまだ伸びしろはある。今季の横浜FCでも31試合出場・4得点という数字を残していて、本人も自信と手応えを得たことだろう。その勢いを26日のトレーニングマッチでの一挙手一投足につなげられるかが肝心だ。実績も評価も大きくリードしている上田綺世に追いつき追い越すのはそう簡単なことではないが、限られたチャンスを掴まなければ、未来への道は開けてこない。
 
 さらに言えば、ウイングやサイド要員としても考えられている前田大然と浅野雄也のサバイバル競争も1つの注目点。過去の実績と国際経験で分がある前田は「浅野選手だけじゃなくて、今、選ばれている選手全員がライバル。でも仲間でもある。みんなでしっかりと高めていけたらいい」とこの状況を歓迎していた。

 浅野の方は「ドリブルはずっとこだわってきた部分。そこは出していきたい」と前田との差別化を図りながら、存在価値を印象付けようと考えている。左利きでCKも蹴れるところは、爆発的スピードをウリにする前田とは明らかに異なる点。彼らのどちらがチームにフィットするかを森保監督も改めて見極め、最終的な判断を下していくつもりだろう。

 この4人のみならず、東京五輪世代のFW陣には小川航基(磐田)や田川亨介(FC東京)らもいる。本大会までの半年で新たな人材が台頭してくる可能性も否定できない。こうした面々が競争を繰り広げ、最終的に大迫をしのぐほどのA代表の1トップ候補が出てきてくれれば、最高のシナリオだ。それが現実になるように、まずは今回のメンバーに今後につながるパフォーマンスをしっかりと出し切ってほしいものだ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)