[高校選手権準々決勝]帝京長岡2-1市立船橋/1月5日(火)/フクアリ

 帝京長岡のストライカーは俺だと言わんばかりに、3年生FW葛岡孝大が躍動を見せている。

 準々決勝で市立船橋と対戦した帝京長岡は、立ち上がりから葛岡とFW酒匂駿太(3年)の2トップの前線からのプレスを軸に攻勢に出た。葛岡は11分に正確なポストプレーから酒匂のシュートを演出すると、25分にはミドルシュートを狙うなど勢いをチームにもたらした。

 すると26分、中央でボールを奪ったMF上野一心(3年)がドリブルを仕掛けると、葛岡は上野の動きに合わせて、CB石田侑資(3年)が束ねる市船の強力3バックの左脇を取るランニングを見せる。そこに上野から正確なスルーパスが届くと、GKの位置を良く見て、左足ダイレクトでゴール右隅へのコースを丁寧に辿るシュートを決めて先制点をもたらした。

 ゴールの直後、自信に満ちた表情で右手を突き上げて歓喜のダッシュをする葛岡の姿がオーロラビジョンに映し出されると、スタンドからはちょっとしたどよめきが起こった。

 その姿はまさに冒頭の自己主張をはっきりとしているように見えた。このゴールは3回戦の神戸弘陵戦での同点弾に次ぐ2試合連続弾。ここに来て彼の最大の魅力である前への推進力が花開こうとしている。

 昨年度も期待された存在だった。だが、絶対的エースの晴山岬(FC町田ゼルビア)、技巧派アタッカーの矢尾板岳斗の壁を超えられず、選手権ではベンチ外に。チームの躍進を外から見つめた。

 そうなった理由はシュート力と突破力には高いものがあったが、足下でボールを受けたがり、背後に抜ける動きが少なかった。それは谷内田哲平(京都サンガF.C.)など、3年生からも指摘をされていた。

「自分のパワーに頼ってしまっていました。ボールに寄って行ってしまって、ボールを受けてからの引き出しが少なかった。でも、今年に入って受ける前に1つ先、2つ先のことを考えてポジショニングを取ることを意識しました」

 ボールが来ても足下に置くのではなく、ワンタッチでパスをしたり、受けるふりをして相手を引きつけてから裏に抜け出したりと、バリエーションを増やして行った。
 
 新潟予選決勝で見せたゴールは成長の証だった。FW石原波輝(3年)が右サイドを突破した瞬間、首を振ってゴール前のスペースを探し出し、直線的に入って行くと、石原の山なりのクロスを高い打点のヘッドで合わせてゴールに突き刺した。

「1、2年生が多い分、3年生が自覚を持って引っ張っていかないといけない。僕は前線からのプレスやポストプレー、ゴールを決めることで貢献したい」

 こう口にして臨んだ今大会。彼はさらにストライカーとしての獰猛さと周りを生かした効果的なプレーを見せた。前述した準々決勝のゴールも、まさに彼の積み重ねて来た背後を取る駆け引きが炸裂した。葛岡はこのゴールをこう振り返る。

「上野が前向きでドリブルした時に、身体の向きを(右方向から、上野がドリブルする同じコースの左方向に)変えて相手の4番(右CB菅谷暁輝)の背後を取りました。フリーになって、あとは流し込むだけでした」

 自分の成長を証明した会心のゴール。だからこそ、ゴール後の姿には帝京長岡のストライカーとしての風格が現われていた。
「準決勝は自分たちが戻ってこないといけない場所だった。ここからがスタート。きっちりと勝って、去年超えられなかった壁を超えたい」

『歴代最強』と言われた去年のチームの選手権はベスト4で幕を閉じた。ようやく偉大な先輩たちに並んだからこそ、今度はそれを超えて歴史を塗り替える番。心身ともにたくましくなったストライカーは、貪欲にかつ磨き上げた駆け引きを駆使して埼スタのピッチで躍動する。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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