タケ・クボ(久保建英)はすでに今シーズンの後半戦、ヘタフェでプレーする決意を固めている。現時点で最大の障壁となっているのが補償額の扱いだ。ビジャレアルはこの冬にワトフォードからエティエンヌ・キャプーを獲得しており、その資金源としてタケを再レンタルする見返りにヘタフェに150万ユーロ(約1億8750万円)の支払いを要求している。

 ビジャレアルがここまで強く主張するのはワケがある。今回のオペレーションを主導したのがレアル・マドリーとヘタフェの両クラブ、そしてタケの周囲の人間であるという考えがクラブ内にあるからだ。

 一方、保有元のマドリーが望んでいるのは、タケの満足感であり、出場機会を得ること。したがって転機になりうるヘタフェへの移籍を歓迎している。その意味では周囲の人間のスタンスは、タケはチームの主力を担うべきという点でより一貫している。

 開幕以来、起用論争を巻き起こし、レギュラーに定着できなければ冬の退団も辞さないという移籍の機運を中心になって作った動きを見てもそれは明らだろう。しかしウナイ・エメリ監督はそうした周りの声に惑わされず、あくまで自らの考えに基づいて選手起用を続けてきた。ビジャレアルでタケが希望するプレータイムを得るのは、現状では不可能なのは間違いない。

 ここ数試合は別として、タケは常にチャンスは与えられてきた。しかし決定的な仕事をすることができず、とりわけラ・リーガではスタメン出場の機会は限られた。ビジャレアルはそんな中でも、タケは着実に成長していると考えていた。

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 タケサイドと意見の食い違いがあるとすれば、まだチームの主力を担うだけの実力には達していないという現時点での評価だ。しかもその最中にカンテラ出身のジェレミ・ピノがブレイクを遂げた。局面を打開するプレーはエメリがサイドの選手に求めていたものだ。

 ジェレミ・ピノは指揮官の信頼を得て、瞬く間に左右両ウイングのそれぞれのレギュラーであるモイ・ゴメスとジェラール・モレーノの2番手格としての地位をサムエル・チュクウェゼと争う存在までになった。

 相対的にタケの序列は下がったが、ビジャレアルにはレベルの高い選手が揃い、その環境の中で切磋琢磨を続けていけば、成長することは十分に可能だ。タケ自身もエメリをはじめとする首脳陣との関係性そのものについては満足していた。

 しかし、さらに追い打ちをかけるように想定外の事態が起こった。

 事態を急転させたのは、MFビセンテ・イボーラの負傷だ。シーズン序盤、攻守のバランサーとしてチームを支えてきた戦術のキーマンを失い、クラブは後釜探しに奔走することになった。

 その際に足かせとなったのが、ファイナンシャル・フェアプレーの一環として各クラブの財政状態に応じて定められている年俸総額だ。上限を超えないためにはどこかで浮かせる必要があり、そこでターゲットとなったのがチーム内の序列が下がっていたタケだった。そしてその考えに至った背景には、一連の退団騒動もあった。

 タケも年明け前にラ・リーガで3戦連続出番なしに終わり、自らの立場を理解した。もはやビジャレアルでは未来はないと考え、そんな中で舞い込んだのがヘタフェからのオファーだった。マドリーと周囲の人間にとってはまさに渡りに船であり、この時点でタケの決心は固まった。

 ヘタフェとはスムーズに合意に達し、もちろんマドリーもすんなりとゴーサインを出した。ただイボーラの穴埋めとしてキャプーの獲得を決めているビジャレアルは無償で行かせるわけにはいかない。自分たちが夏に投じた資金の一部の回収を主張し、その攻防がここ数日続いている。

 タケとヘタフェの意思の統一は図られており、遅かれ早かれ解決策が見出されることになるだろう。

文●ハビエル・マタ(アス紙ビジャレアル番)
翻訳●下村正幸