今秋、11チームでスタートする、日本女子サッカー初めてのプロリーグ=WEリーグ。その栄えある“スターティング・イレブン”のひとつとして、サンフレッチェ広島とともに参入するのが、大宮アルディージャVENTUSだ。

 1月12日にチームの体制を発表し、同日に十文字VENTUSから6名のチーム入りを発表すると、翌13日に、INAC神戸レオネッサから、鮫島彩、仲田歩夢、スタンボー華らを完全移籍で獲得、同時に5名の新卒選手の入団をリリースした。その後も、戦力補強のニュースは続き、1月29日には、日テレ・東京ヴェルディベレーザから阪口夢穂と有吉佐織も加わった。

 オレンジの炎が、女子サッカーのストーブリーグを盛り上げている。

 母体となる大宮アルディージャは、これまで女子チームを保有していなかったが、女子サッカーと全く縁がなかったわけではない。前なでしこジャパン監督の佐々木則夫氏の出身クラブで、2016年からはトータルアドバイザー、今季は総監督のポジションに就いている。初代指揮官には、クラブで選手、指導者、フロントを歴任してきた、岡本武行監督が就任した。

 ゴールキーパーには、昨季、INAC神戸レオネッサのレギュラーを務めたスタンボーに加えて、1部でもプレー経験のある望月ありさ(←ニッパツ横浜FCシーガルズ)と、聖和学園高校時代にフィールドプレーヤーからコンバートされた伸びしろ大の今村南海(←武蔵丘短大)。同ポジションでプレーしていた指揮官の下で、それぞれ成長を目指す。

 ディフェンダーも、実績十分の面々が揃っている。中心になりそうなのが、鮫島と有吉。左サイドバックのイメージが強かった鮫島だが、近年はセンターバックでもキャリアを積んでいる。有吉も左右両サイドだけでなく、ボランチなど中央でもプレーできる。布陣図では、最終ラインのセンターに鮫島、左サイドに有吉を置いたが、チーム事情に応じて的確な仕事をしてくれるだろう。さらに、200試合出場まであと4試合の坂井優紀(←マイナビベガルタ仙台レディース)や、年代別代表で主将を務めた乗松瑠華(←浦和レッドダイヤモンズレディース)の顔も見える。

 チーム名の「VENTUS」には、昨季まで、埼玉県内の会場で多くのホームゲームを主宰していた十文字VENTUSの流れを継承する意味合いが込められている。最終ラインにも日野李保、村社汐理らVENTUS組がいる。チーム最年少の杉澤海星も(←十文字高)スカイブルーのファミリーの一員だ。また、長嶋洸(←ニッパツ横浜FCシーガルズ)、久保真理子(←東洋大)など、埼玉県下、近隣県のプレー経験者、出身者も多い。選手にとっては、土地鑑のあるエリアでの生活はメリットが多いし、地域のファンにとっても親しみやすさが醸成されるだろう。

【画像】鮫島彩、仲田歩夢、スタンボー華、阪口夢穂…大宮アルディージャVENTUSの主力プレーヤーたち
 ボランチの候補には、阪口と上辻佑実(←ちふれASエルフェン埼玉)の両ベテランがいる。このふたりは同い年で、ユース時代にラガッツァFC大阪高槻でプレー。後に日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)で邂逅している。2018年度なでしこリーグ2部の新人賞を受賞した田嶋みのりは、ちふれASエルフェン埼玉で上辻とともに全18試合に出場し、攻撃を組み立てた。寄り合い所帯のスタートでも、攻撃ルートの共有は早そうだ。

 また守備で計算が立つ堰愛季(←十文字VENTUS)をアンカーに、田嶋をトップ下にしたダイヤモンドなどのバリエーションもある。早稲田大から加入する村上真帆も十文字組。4年前の全日本高校女子サッカー選手権では、十文字高のキャプテンを務めて、決勝戦唯一のゴールで同校を初の頂点に導いた。十文字学園女子大学から入ってくる源間葉月も、当時の主力選手だ。

 前線で起用されそうな1部チームからの転籍組は、仲田と大熊良奈(←浦和レッドダイヤモンズレディース)。仲田は、昨季、多くのチャンスを与えられなかったが、左足の破壊力は健在。大熊も、日テレ戦の終盤に投入されるなど、地歩を固めていた。ゴールに関わる役割を求められる井上綾香(←マイナビベガルタ仙台レディース)や、怪我から復帰した鳥海由佳(←十文字VENTUS)を含めて、試合勘を取り戻せるかもポイントになる。ストライカーとして名を馳せた大野忍コーチ、平井芳紀フィジカルコーチの手腕に期待したい。

 昨季、リーグ200試合出場を果たした山崎円美(←ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)や、花桐なおみ、小島ひかる(以上←十文字VENTUS)は、サイドハーフだけでなく、前線でもプレーできる。前述の選手もそれは同じで、組み合わせは自在。これから、半年あまりのトレーニング、そしてプレシーズンマッチを通して激しい競争が繰り広げられ、序列が決まっていく。

 新規参入組が、これまで女子サッカー界を引っ張ってきたチームに伍して戦い、しっかりとした成功例を示す――。そうすれば、次年度以降、WEリーグへの参入を希望するチームや、興味を示すチームも増えてくるはず。大宮アルディージャVENTUSの活躍は、WEリーグの将来にも大きく関わってきそうだ。

文●西森 彰(フリーライター)