猛々しさを感じさせるゴールゲッターを擁するクラブは、欧州カップ戦を勝ち抜き、国内リーグでも優勝を争っている。

 ロベルト・レバンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン)、アーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)、クリスチアーノ・ロナウド(ユベントス)、ズラタン・イブラヒモビッチ(ACミラン)、ハリー・ケイン(トッテナム・ホットスパー)、カリム・ベンゼマ(レアル・マドリー)、そしてルイス・スアレス(アトレティコ・マドリー)など、彼らは前線を突き破るストライカーだ。

 一騎当千。

 その存在は敵を震え上がらせ、味方を勇気づける。戦術など関係なしに、彼らがゴール前に陣取り、ゴールに向かって迫るだけで、勝機を広げられる。相手を打ち破る「武力」だ。

 彼らの存在が先か、勝利が先か――。それは分からないが、前線で敵陣を問答無用に突き破れる強度は、恐ろしいまでに武器になって勝利を呼び込む。

 アトレティコのディエゴ・シメオネ監督は、そうしたストライカーの資質を見極め、用いる手腕に優れている。今シーズンは、FCバルセロナからスアレスを獲得。3-4-2-1のシステムの運用に成功している。

 スアレスは荒々しい印象が強いFWだが、実は知性に優れる。ライン間を漂い、巧妙にボールを受け、シュートまで持ち込めるインテリジェンスがある。周りを生かすのもうまい。裏への抜け出しで、相手のラインを押し下げ、あるいはサイドに流れ、スペースを作り出せる。

 結果として、周りの選手の得点が増加。バルサでもリオネル・メッシやネイマールが得点を量産していたが、アトレティコでもジョアン・フェリックスに爆発の予感がある。

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 その一方、バルサはスアレスを失ったことにより、前線の迫力が明らかに足りない。それはシステムを変えようとも、どうにもならないほどの損失である。

 ロナウド・クーマン監督は、メッシやアントワーヌ・グリーズマンのゼロトップやマーティン・ブライトワイトの抜擢で凌いでいるが、パワー不足は歴然だろう。エイバル戦では、3-4-2-1の1トップにブライトワイトを使ったが、PK失敗にオフサイドのゴール取り消しだけでなく、相手を怖がらせることができないだけに、戦術が思ったように機能しなかった。

 守る側は、スアレスのように非凡なゴール数を記録してきた選手が猛然と突っ込んでくることで、動揺し、狼狽し、消耗するわけだが…。

 前線で暴れまわるストライカーを擁しているか。それはチームの浮沈を左右する。彼らは戦術そのものになり得る存在であり、しばしば戦術を越えた力を発揮するのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。