代表ウィークに入る一週間前に行なわれたブンデスリーガ第25節、昇格クラブのビーレフェルトが強豪レバークーゼンを相手に2-1で勝利し、順位を残留圏の15位へと順位を上げた。値千金のゴールを決めたのは、堂安律と奥川雅也の両日本人選手だった。

 ブンデスリーガの歴史において、同じチームでプレーするふたりの日本人選手が同じ試合でゴールを挙げたのは、16年4月インゴルシュタット戦まで遡る。当時ハノーファーに所属していた清武弘嗣と酒井宏樹が決めて以来のこと。この試合は2-2の引き分けに終わったため、チームを勝利に導いたという点では、史上初のことだ。

 フランク・クラマー新監督就任後、チームはこれまで以上に自分達から積極的にボールを奪いに行き、ボールを持っても敵陣でボールを動かす時間が増えてきている。象徴的なのは、ウーベ・ノイハウス前監督の下では出場機会に恵まれなかったドイツU-21代表アルネ・マイアーだろう。ボランチやインサイドハーフで攻守に重要な働きを見せ、25節では専門誌『kicker』のベストイレブンにも選出されている。

 監督交代はポジティブな影響をもたらしているが、チームが今シーズンを通して成長している点は見逃せない。ほとんどの選手が1部リーグ初参戦なのだ。シーズン序盤は2部リーグでやってきたことをベースに取り組んだが、1部のレベルにすぐ順応することは簡単ではない。
 
 そのため、ノイハウス前監督はまずは守備への意識を高め、崩されにくい戦い方へ方針を変えた。そうした取り組みの中で1部のサッカーに慣れながら勝点を粘り強く積み重ねてきた時期があったからこそ、クラマー監督の戦い方がうまく機能しているのではないだろうか。

 そして、こうなったビーレフェルトで堂安と奥川の両日本人選手がこれまで以上に重要な存在になってきている。レバークーゼン戦では堂安がまず17分に素晴らしい先制ゴールを挙げ、試合の流れを引き寄せた。クロスに飛び込むタイミング、相手DFの前に飛び出してくるスピード、ボールへのアプローチの仕方とすべてがパーフェクト。活躍はこのシーンだけではなかった。

 これまでは右サイドでプレーしていた堂安は、この試合でキャプテンのファビアン・クロスと2トップ気味のトップ下で起用された。前線でうまく相手DF間のスペースに顔を出し、左右のスペースにうまく流れては縦パスを引き出す。

 難しいロングパスで相手が後ろからプレッシャーをかける局面でも、相手を身体でしっかりとブロック。巧みにボールをコントロールして、味方が押し上げてくる時間を作り出すプレーは、チームにとって本当に大きな助けとなっていた。ゴール前では、こぼれ球を躊躇なく左足シュートに持ち込み、あわやというシーンに次々と絡んでいた。
 そして奥川だ。決勝点のシーンでは相手CKからのカウンターで、味方からのパスをフリーで受け、冷静にボールを持ち運び、GKの足下をぶち抜いた。いくらカウンターからでも、あそこまでフリーでシュートさせるのはレバークーゼンの明らかなミス。それでも、突然ゴール前でフリーになって、どうしていいかわからなくなってシュートを外す、というのはサッカーで珍しいことではない。

 試合後「堂安に『打て、打て!』といわれた」ということを明かした奥川だが、あの場面で前に詰めてくるGKの動きをよく見て、丁寧に流し込んだ本当に貴重な得点だった。

 そんな奥川は、試合後のテレビインタビューにも登場。通訳を介さず、ドイツ語でしっかりと答えていたのがとても印象的だった。
 
 得点シーンや今日の勝利についてに尋ねられた奥川は「ダイレクトで右サイドに流そうと思ったけど、パスがこぼれてきて、ボールをもらったときに時間があったから、落ち着いてゴールへパスをしました」、「負けていると難しい。みんなで一緒に戦って、走って。勝ったことは大きい」と頭をフル回転させながら、ドイツ語をひねり出していた。

 そして最後に「勝利の美酒としてビールを飲みますか?」と尋ねられると、「好きじゃないんですよ(苦笑)」ととても流ちょうに笑顔でコメント。ああ、普段から使っている言葉なんだなと感じられ、微笑ましかった。

 続くRBライプツィヒ戦には敗れ、ブンデスリーガは残り8試合となった。ビーレフェルトはマインツ、シャルケ、ヘルタと残留を争うライバルクラブとの直接対決を残しており、最終節まで気の抜けない戦いが続くだろう。奥川、堂安の活躍でチームを残留へと導きたい。
  筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中