だれにも水晶玉はない。選手の獲得や放出が正解か、事前に知ることは不可能だ。だが、手放した選手が新天地で絶対的な地位を築けば、批判されるのも避けられない。

 イタリアの名将ファビオ・カペッロが、レアル・マドリー時代に元ブラジル代表DFのロベルト・カルロスを獲得した時のことを振り返った。チャンスがあると知った時は、信じられなかったという。

 強烈な左足でサッカーの歴史に名を残したレジェンドは、欧州に渡った1年目、当時のロイ・ホジソン監督にウィングで起用されるなど、インテルで思うようなシーズンを過ごせなかった。

 そして1996年夏、ロベルト・カルロスはわずか1年でイタリアを去り、マドリーに移籍。そして“白い巨人”でその才能を開花させ、世界的プレーヤーとなったのは周知のとおりだ。

【動画】「どうやって蹴ったんだ?」伝説となったロベルト・カルロスの驚愕35メートルFK弾
 イタリア紙『Corriere dello Sport』によると、カペッロは衛星放送『Sky Sport』の番組で「非常に重要な補強だった。ある日、(代理人のジョバンニ・)ブランキーニが来て、インテルがロベルト・カルロスを売りたがっていると言われたんだ」と振り返っている。

「冗談だと思った。信じなかったよ。だが、すでに価格も定めてあるファックスを送ってきたんだ。わたしはすぐマドリーの会長に連絡し、急いでイタリアに行くように言った。ニュースが広まれば、みんなミラノに行ってしまうだろうからね」

 イタリア人指揮官は「われわれは1日もせずに獲得した」と続けている。

「インテルだけが、ロベルト・カルロスがどういう選手か分かっていなかった。彼はマークができない選手だと思い込んでいたんだ。わたしは彼に、ただボールを前に蹴り、走り始めろと言ったよ」

 もしもロベルト・カルロスがミラノでプレーを続けていたら、インテル、マドリー、そしてサッカーの歴史は、どのように変わっていただろうか。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部