いったいどこまで駆け上がるんだ!?

 世代交代を感じさせるレギュラー奪取。東京オリンピック開幕直前のU-24日本代表合宿で飛び級招集――。

 いま、J1浦和レッズのGK鈴木彩艶に注目が集まっている。

 今季、鈴木はルヴァンカップ5試合に先発出場。リーグ13節・ベガルタ仙台戦(5月9日)からはリーグ戦5試合連続で先発し、戦績は4勝1分。失点「2」と貢献している。

 安定したセービングとともに正確なコーチング。ロングフィード、そしてセンターサークルを超える強肩の持ち主。加えて自身が「生まれつき」と話すGKにとって不可欠な冷静さは折り紙付きだ。

 若き守護神についてDF槙野智章はシュートストップ、ポジショニングの良さ、視野の広さを挙げたうえで「18歳であの体格とあの落ち着きぶり。存在感は大きい(17節・名古屋戦)」と評価。

 またDF宇賀神友弥は「言うことがないくらい自信をもって素晴らしいプレーを見せている(ルヴァンカップGS4節・湘南戦)」と称賛するなど、すでに完成した選手といっても言い過ぎではない。

 まるですい星のごとく現われた鈴木だが、実はクラブが手塩にかけて育て上げた選手のひとりだ。

 鈴木は2013年に設立された浦和レッズジュニア(小学生年代)の一期生。

 当時、彼らのトレーニングを見ていたGK加藤順大(現マッチャモーレ京都山城・選手兼監督)は「すごい選手」と将来性を楽しそうに語ったのを思い出す。
 
 普段の姿について、当時を知るスタッフは「礼儀正しくて明るい性格。大人とも恥ずかしがらずに会話ができる利口な少年。あとは時間厳守。遅刻はなかったです。また練習着、ユニホームを自分で洗濯していると聞いた時は、ちょっと驚きました」と自立した人間像が思い浮かぶ。

 その後、鈴木はジュニアユース、ユースと昇格するとともに、各年代別代表にも選出された。そして2019年2月にクラブ史上最年少の16歳5か月でプロ契約。昨季公式戦の出場はなかったが、18試合に帯同した。

「彩艶はいつ試合に?」
 そんなサポーターの期待のなか、鈴木がリカルド・ロドリゲス監督の起用に応えられたのは浜野征哉GKコーチの存在がある。
 
 浜野コーチはFC東京のトップチームで長く指導。その後、各カテゴリーの代表でコーチを務めたのち、2019年、浦和に加入した。その際、前年まで務めた土田尚史GKコーチ(現:スポーツダイレクター)の強い推薦があったことでもその手腕は想像できる。

 浜野コーチについて「とにかく熱い人」と話すのがFC東京時代の教え子でもあるGK塩田仁史だ。
「選手と向き合い、引っ張っていくコーチ。練習量は多く、当時GKだけの2部練習もあった。GKはリアクションのポジション。たとえ無理な体勢でも身体をコントロールできるように練習を積んだ」(※大宮時代の19年4月取材)と鍛え上げられていることが分かる。

 また今年になり、鈴木が浜野コーチからマンツーマンで指導を受けている光景が何度も見られている。それは全体練習前、練習中、紅白戦の合間、練習後と時を選ばない。

 5月中旬の会見で鈴木は目下の課題を「キックやクロスの対応」としたが、鉄は熱いうちに打てとばかりに、その都度、レクチャーを受けている。激しい練習と繰り返す反省と検証。これは試合に出始めた今だからこそ、余念がないのは容易に想像できる。
 
 名伯楽・浜野コーチをはじめ、目標とする西川周作、戦力として、そして、その背中でGKという仕事を伝える塩田仁史と、これ以上ない教科書のような3人のもと、まさにブレイクの時を迎えた。それでも「GKのなかでレベルは自分が一番下」と謙虚さを忘れないのも鈴木らしい。

 偶然ではなく、必然。いや、満を持してのこの活躍。

 いったいどこまでいくのか。鈴木彩艶のこれからが楽しみだ。

取材・文●佐藤亮太(レッズプレス!!)