J1リーグは8月21日、第25節の9試合を各地で開催。ノエビアスタジアム神戸では、勝点41で並ぶ5位ヴィッセル神戸が、3位鹿島アントラーズを迎え撃つ。3位までに与えられる来季のアジア・チャンピオンズリーグ出場権を争うライバル同士の直接対決だ。

『サッカーダイジェストWeb』では、Jリーグの各クラブでスカウティング担当を歴任し、2019年には横浜でチームや対戦相手を分析するアナリストとして、リーグ優勝にも貢献した杉崎健氏に、25節・神戸対鹿島の勝負のポイントを伺った。

 確かな分析眼を持つプロアナリストは、この注目のゲームをどう見るのか。予想布陣の解説とともに、試合展開を4つの状況に分け、それぞれの見どころを語ってもらった。

――◆――◆――

●ヴィッセル神戸
今季成績(24節終了時・23試合消化):5位 勝点41 11勝8分4敗 36得点・23失点

●鹿島アントラーズ
今季成績(24節終了時):3位 勝点41 12勝5分7敗 40得点・24失点
 
【予想布陣解説】
 18日に両チーム天皇杯を戦っており、その試合からのリカバリーやコンディション調整などによって変更も十分考えられるため、メンバーは予想通りにならない可能性も高い一戦です。

 神戸は、GKと最終ラインはその天皇杯と同じメンバーを予想しました。前節の広島戦が大雨の関係で中止になったため、出場停止のセルジ・サンペール選手がこの試合に繰り越しで出場できません。そのため、一番のポイントはここ最近定着している中盤をダイヤモンド型にした4-4-2システムのアンカーを誰が務めるかという点です。

 このシステムを採用した6月13日のルヴァンカップ、プレーオフステージ第2戦・浦和戦以降サンペール選手不在の状況はなく、初めてのケースとなります。神戸の方が1試合消化試合が少ないとはいえ、勝点で並ぶ鹿島との直接対決。メンバー内で同ポジションができるのは櫻井辰徳選手くらいなので、ここでは山口蛍選手を一列下げてアンカーで起用し、インサイドハーフには天皇杯でもスタメンに名を連ねた中坂勇哉選手と予想しました。

 また、天皇杯を直前で急遽回避したアンドレス・イニエスタ選手の状態も不透明です。ただ、違和感やちょっとした理由での回避であれば出れるのではないかと考えています。前線は話題となっている大迫勇也選手、武藤嘉紀選手、ボージャン・クルキッチ選手などもいますが、正直この試合の出場は難しいと三浦淳寛監督も認めていたようなので、2トップには天皇杯で終盤に出場した田中順也選手とドウグラス選手をスタートから起用すると読みました。

 鹿島は、夏の移籍市場で安西幸輝選手とブエノ選手が復帰した一方で、杉岡大暉選手(湘南に期限付き移籍)、小泉慶選手(鳥栖に完全移籍)、白崎凌兵選手(鳥栖に期限付き移籍)3選手がチームを去りました。

 そんななかでもリーグ戦は3連勝中。システムはいつも通りの4-4-2で、天皇杯では町田浩樹選手と常本佳吾選手とエヴェラウド選手以外の8選手を変更するなど大幅なターンオーバーも実施しているため、前節・徳島戦を3-0で勝ったメンバーそのままで来るのではないかと予想しています。

 4月24日の前回対戦ではディフェンスライン裏に抜け出した古橋亨梧選手がシュートを決め神戸が先制し、三竿健斗選手からのパスを受けた上田綺世選手がボックス内でシュートを放ち、DFに当たったボールがそのままゴールに吸い込まれ鹿島が同点に追いつき1-1の引き分けに終わりました。

 お互いに奪ってから一瞬の隙を突く形で得点を奪っています。そういう切り替えの部分で勝敗が分かれるということはよくありますが、その前に両チームがどういう狙いを持って戦いに臨んでいるのか。前回対戦は4か月も前のことなので、直近の試合から紐解ける両チームの戦いをお伝えできればと思っています。
 
 神戸の現在のシステムでは、2トップの相手に対しては、サンペール選手が下りて2センターバックとアンカーで3対2の状況を作り、前進していくということをやっています。今節予想している山口選手ならばこれは普通にこなせるはずで、そのアンカーの立ち位置というのがポイントのひとつ目です。

 次に、相手のプレスを掻い潜っていく際に足下につけるか、裏のスペースを使っていくのかという判断がもうひとつのポイントです。神戸には山口選手、イニエスタ選手をはじめ、郷家友太選手、中坂選手、若しくは井上潮音選手など技術の高い選手たちがいます。シンプルにその中盤の選手たちに預けてもボールを握ることはできますが、ずっと続けていては、前回対戦の時もそうでしたし、前節の柏戦でもありましたが、奪われてカウンターから失点するというシーンも多々あります。

 当然、ボールの失い方というのは気を付けているでしょうが、足下一辺倒になってしまうと相手からも狙われるので、裏の使い方とのバランスが必要になります。

 一方の鹿島は、意図的にどこまでやっているのかを把握するのは難しいのですが、時間が経つにつれてプレス強度が上がるという印象がある。ゲーム序盤はどちらかというと様子を見ることが多く、2トップも前にプレッシャーには行かないことが多いのですが、相手の出方が分かってくるとどんどんプレッシャーをかける。前節の徳島戦では途中からエヴェラウド選手が猛スピードでGKへプレッシャーをかけていました。そういう状況を見ながらプレス強度を変えられるのが鹿島の特長でもあると思います。

 ただ、プレスを仕掛ける側からすれば、神戸の中盤4人はそれに対応するだけの技術がある。特にイニエスタ選手にセンター付近で前を向かれてしまうと、簡単にスルーパスを通されてしまう。そのため当然マークは厳しくします。

 中盤が一度引いて、ハーフラインよりも自陣寄りに構えるような形をとれば、2トップも下げて、4バックも下げて、簡単に裏を取らせないようなスタンスをとることもできます。
 
 ただ、鹿島の戦いぶりからすると、どちらかと言えば相手の中盤の選手たちに簡単に前を向かせないようにプレスに行くと思われます。中盤で相手に前に向かせない形を作れれば、鹿島の一番やりたい高い位置で奪っていち早くゴールに迫るという形ができる。徳島戦の2点目などもその形からでした。

 鹿島の中盤の4人、三竿選手、和泉竜司選手、レオ・シルバ選手、土居聖真選手は、中盤のラインをどの高さで設定するのか、注目してみるのが面白いのではないかと思います。

 またシステムのかみ合わせ上、鹿島のサイドバックは誰を見るのかという問題も出てきます。【図1】のように、キレイに誰もいないというケースは少ないかもしれませんが、システム上周囲に誰も見る人がいないということがあり得る。

 例えば、ボールを持っている菊池流帆選手にエヴェラウド選手が行き、酒井選手を和泉選手が見ると、永戸勝也選手が見る相手がいなくなります。

 その際にサイドバックは押し上げるのか、それともディフェンスライン背後のカバーとしてサポート役をするのか。どちらにせよ、人が余ってしまう問題が出てきます。神戸の方が数的優位をいたるところで作りやすくなる。それに対してどう対処していくのか、映像で確認できるかどうかは分かりませんが、サイドバックの役割が見えれば面白い視点になるでしょう。

 同様に神戸側のサイドバックも注目です。神戸がこのシステムになってからは、毎回ではありませんが、酒井選手や初瀬亮選手、特に酒井選手が偽サイドバックのように中に入ってボールをピックアップすることもやり始めています。柏戦では顕著でしたが、相手が5-3-2で守っていたので、3のインサイドハーフにバチッとみられていて、あまり効果が無かったのですが、4-4-2の相手には困らせることもできるかもしれません。
 
 普遍的なテーマですが、中央から行くのか、サイドを使うのかというのが神戸がまず考える攻撃の仕方です。

 特に神戸はシステム上、中央に人が集まりやすい。ダイヤモンドを形成して2トップがいるので、6人を中央のスペースにかけられる。狭いところでもターンできるような選手がいて、スルーパスに反応できる選手もいて、さらに中央に集めさせておいてサイドバックが上がってきてサイドの深い位置からのクロスや、1対1のドリブル突破などでゴールを決める。最近だとG大阪戦2点目のシーンがそうでした。左で作って、逆サイドにサンペール選手が出して、酒井選手が1対1を仕掛けて田中選手が決めました。

 そういう中央突破ばかりでも、サイド一辺倒でもない神戸は、どちらの攻撃を選択するのかが注目点です。

 サイド攻撃で幅をとる際に、インサイドハーフが流れてくるのか、2トップの一角が出ることもできるし、サイドバックが後ろから上がってくることもできる。誰がこのサイドのスペースに出て来るのかが次のポイントになります。

 鹿島もサイドバックの裏を当然警戒しているので、シンプルに使うという形にはならず、いかに上手く使えるか、状況によってどう使い分けるかが重要です。

 サイドを攻略した先では、ボックス内に空中戦に強い選手、衛星的に動ける選手、後ろから飛び出せる選手、ミドルシュートも打てる選手とバリエーションも豊富です。

 前回対戦のゴールシーンのように、古橋選手の存在が大きな武器でしたが、彼はもういない。新加入選手もまだ使えないので、ドウグラス選手、田中選手の特長を活かすためにも、中央突破よりはサイドを使った攻撃で対応するのではないかなと予想します。
 
 鹿島に関しては、敵陣と同様にサイドバックが余ってしまう問題や、山口選手が下りてきて2対3を作られたりと、随所で数的不利の状況が生まれます。

【図2】の赤で囲まれたエリアでは、下がってきた荒木遼太郎選手を入れてもダブルボランチと両サイドハーフの5人に対して、神戸は2トップを入れて6人います。センターバックのどちらかが出て行けば同数にはできますが、ディフェンスラインを空けることはしないでしょう。

 大きくみればどこかしら数的不利になることがシステム上あり得ます。鹿島は相手に合わせてシステムを変えるということで対応するのではなく、ボールホルダーに自由を与えないようにガンガン行くことで対処できるチーム。そのため、数的不利のところをどうカバーするかという駆け引きが見どころのひとつです。

 キレイに4-4-2、4-4-1-1と陣形を整えてボールホルダーへアプローチに行けている時には、そんなに大崩れすることはありません。ボールに対する強度も高く、ボールを奪いきることもできる選手たちが揃っている。事実ここ最近の鹿島は失点数も少ないですし、失点場面もカウンターやセットプレーが大半です。

 ですので、いち早くこの形に戻して守備ができるかどうか。これが出来ているうちは、いくら神戸が技術力の高い選手を揃えていても簡単には崩せないでしょう。

 逆に、鹿島が敵陣で攻撃していた際に失ってカウンターを食らう、自陣でのビルドアップを引っ掛けられて攻められるなど、組織が整わない状況に持ち込めれば神戸にチャンスが出てくるでしょう。その攻防がもうひとつの見どころです。
 
 神戸が4-4-2のダイヤモンド型のなかで敵陣でプレッシャーをかける場合、システム上、鹿島のダブルボランチに対してトップ下のイニエスタ選手が1枚でどう見るのかというのが最初の注目点です。

 イニエスタ選手がダブルボランチの一方を見たら、空いている方をインサイドハーフの選手が見れば良いのですが、周囲の動きを見ながら適切な判断が下せるか。個人の判断力に委ねられる場面も出てくると思います。

 ダブルボランチ対トップ下では数的不利ですが、もう少し広範囲で考えれば中央は神戸の方が3対2の数的優位を作れる状況でもあります。有利な状況が作れる一方で当然不利な部分も出てきます。それがサイドです。

 神戸のサイドバック、初瀬選手と酒井選手は普通ならばサイドハーフを見ますが、鹿島のサイドハーフは中に入っていくことがよくあります。そこへ鹿島のサイドバックの選手が高い位置を取りにくる。サイドハーフが中に入る動きにどこまで付いていくのか、サイドバックの上がりをどこまで見るのか、神戸のサイドバックにも自分のマーカーとポジショニングの判断、決断力が特に敵陣内での守備で問われるケースが増えそうです。
 
 鹿島の自陣でのビルドアップの特長として、最近やっている面白い策としては、2センターバックとダブルボランチを残して他の選手たちを一斉に前に上げるという非常に攻撃的なスタイルをとっています。

 中央の4人で前線にいち早くボールを送るためにポジションを取って、受けたら前へ出て行くということをどんどんやってくる。

 受け皿として、ふたりのサイドハーフが中に入ってきて、2トップが縦割れして、荒木選手がサポートで下りることもする。そこで6人を前に行かせて、後ろから前へボールをつける。いけるなら真ん中からどんどんスルーパスも通してくる。試合中にボール配球でハメられることがあれば、低い位置で無理して繋ぐことなく、ロングボールも使うチーム。

 試合の流れのなかでも、頻繁に上げている両サイドバックをどこまで高い位置に上げるのかがひとつ目のポイントです。

 荒木選手が気を利かせて、空いているスペースやもらえる位置に顔を出して、ボランチを手助けする動きを効果的に行なっています。しかし、徳島戦ではマークもゆるくて自由にボールを受けられて大活躍していた荒木選手ですが、今回は相手がもし山口選手ならば、厳しく来られることは自分でも分かっていると思います。そのため、下りることを敢えてしないという判断もあります。山口選手に前で守備をさせないように、ピン止めするために、敢えて立ち止まる。相手の技量を踏まえた上で、どういう立ち位置をとって、そこからの動き出しを行なうか、その駆け引きが注目のもう一点です。
 
 神戸は自陣の攻撃の際にもあったように、相手のサイドバックが空きます。4-3-1-2の形で守っていると、鹿島のサイドバックにはボールが出てからアプローチをせざるを得ない。それはインサイドハーフの役割になります。そのため、神戸はセンターハーフの3枚がいち早くスライドして、真ん中にスペースを作らせない守備をしなければならず、そこがひとつ目のポイントです。

 鹿島はその中央からの攻撃も得意で、エヴェラウド選手や上田選手はボールもキープでき、裏抜けもできる、シュート力もある選手たちです。

 神戸の最終ラインとしては、そんな相手フォワードに対して、背走しながら対応するのは非常に難しいので、もしかするとラインを少し下げた状態で対応する可能性もあるのかなと思います。理由としては、神戸の失点シーンが裏をシンプルに使われる形からが多いということもあります。

 天皇杯の名古屋戦もハーフライン付近から柿谷に裏に出されて、少しカウンターのような形でしたが中央レーンを突破され失点しており、その微調整というのはチームとしても必ずやっているはずです。そのため、もう一つの見どころは最終ラインの高さと裏への対応が挙げられます。

 鹿島の攻撃としては自分たちのやり方を貫くでしょう。ボールを繋ぎ倒すのではなく、サイドを使いながらも、どうやったらゴールに最短距離で行けるかということを実現するスタイルです。いち早くボックス内に入るやり方を見つけて、バックパスしてやり直すのではなく、行けるならどんどん前へ行く。ボールを持ったら積極的に前につける。ボランチを含めて運動量も非常に多く、逆サイドのサイドハーフも大外に張っているのではなく、ボックス内に侵入していく。

 その際の起点が注目ポイントです。システム的なマッチアップでサイドバックが浮きやすく、比較的容易に高い位置で起点を作れます。永戸選手や常本選手が縦に仕掛けてクロスということもできるでしょうし、彼らを起点にしながら攻撃を作れるかどうか。

 ひとつ工夫するとすれば、ワザと時間を使って、相手のインサイドハーフを引っ張り出して、【図4】のような形で最短距離を狙うのではないでしょうか。

 この両チームはサッカー的に一番難しいとされている中央突破を平気でやろうとしますし、それをできるだけのチーム力がある。そのことは、お互いスカウティングで当然分かっている部分でもあります。そのため対応を強める可能性があります。そうした時に、起こりやすいのがファウルです。

 鹿島は得点の約半数がセットプレーから。FKもそうですし、サイドを深く抉ってCKというのもあるでしょうし、4つの局面だけでない、セットプレーの局面も出てきます。

 鹿島のストロングポイントのひとつとして、中央突破ができるということが一つと、それを見せたなかで、相手が厳しく出てきた時に、FKやCKでも点が取れるというのが鹿島です。そんなセットプレーの強みが出るケースも間違いなくあるでしょう。

 得点源だった古橋選手がいなくなった神戸ですが、大迫選手、武藤選手、ボージャン選手と新戦力も獲得し話題となっています。三浦監督は新戦力について「彼らをどう生かそうか。組み合わせをどうしようか考えないといけない」と語っていたように、選手の特性をいかしたシステムや戦術を考える監督だと思われます。

 古橋選手があれだけ得点出来ていたのは本人の力もありますが、三浦監督がサイドハーフで使っている時もあったように、試行錯誤の末に上手くハメたという部分もある。今季の神戸はイニエスタ選手が不在時にはオーソドックスな4-4-2を使ったり、イニエスタ選手復帰時のルヴァンカップ・浦和戦の1戦目では5-4-1を採用したり、今のダイヤモンド型の4-4-2までいろんな変遷をたどってきています。

 今後は新戦力を加えて、例えば4-2-1-3で新戦力3人の3トップにイニエスタ選手を組み込むこともやるかもしれません。そんな転換期を迎える直前の試合で、ここまで結果の出ていた形でやろうと思うのではないかと予想しました。

 相手の狙いを消し切って、自分たちの良さを出し切って勝点を取れるかという、J1の上位チーム同士の真っ向勝負になりそうですね。
 
【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督の右腕として、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。

◇主な来歴
ヴィッセル神戸:分析担当(2014〜15年)
ベガルタ仙台:分析担当(2016年)
横浜F・マリノス:アナリスト(2017年〜20年)

◇主な実績
2017年:天皇杯・準優勝 
2018年:ルヴァンカップ・準優勝 
2019年:J1リーグ優勝