注目されたタケ・クボ(久保建英)の新天地はマジョルカに決まった。いくつもあった選択肢の中から、この古巣をレンタル先に決めたのは彼自身だ。過去2年もそうだったようにレアル・マドリーは全面的にタケの決断を尊重した。

 マドリーが希望していた移籍先は、レアル・ソシエダだった。理由は主に2つある。まず1つ目はスポーツ面。ソシエダはヨーロッパリーグに参戦し、ラ・リーガにおいても上位進出を目標に掲げている。その上を目指す姿勢はサッカースタイルにも表われ、攻撃力はラ・リーガでも屈指のクオリティを誇る。

 そして理由の2つ目は経済面だ。マドリーはソシエダに対し、年俸の全額負担に加え、少額とはいえレンタル料を要求していた。クラブは今回の移籍に際し、その額を公表していないが、マジョルカとソシエダの間では経済力で大きな違いがある。ソシエダへの要求額よりも低いことは間違いないだろう。

 コロナ禍でマドリーも収入が激減し、資金的に決して余裕があるわけではない。そんな中でも、マジョルカへの移籍を容認したのは、成長を願う親心の表われに他ならない。

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 一方、タケの希望は一貫してマドリー復帰だった。しかしポジションが重なるガレス・ベイルやイスコの残留が決定的になるなどひと夏を経て攻撃陣の顔ぶれはほとんど変わることはなく、その可能性は立ち消えになった。

 海外のクラブからもオファーがあったのは事実だが、タケは当初からラ・リーガでのプレーを希望。自ずとソシエダとマジョルカの二者択一となり、彼自身も最後まで迷っていたが、そこで大きな決め手になったのが昨シーズンのビジャレアルでの経験だ。

 昨夏、同じくヨーロッパリーグに出場し、その野心的なプロジェクトに惹かれて入団したが、そこで待っていたのは熾烈なポジション争いだった。その点、ソシエダでタケの直接のライバルとなるはずだったポルトゥとアドナン・ヤヌザイはイマノル・アルグアシル監督の高い信頼を得ている。

 ベテランのダビド・シルバもタケが主戦場とするポジションでプレーする機会がある。ソシエダは早くから熱心にアプローチをかけていたが、レギュラーを確約することはなかった。上昇志向の強いクラブとしては当然のスタンスである。

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 もちろんタケ自身はポジションを奪う気概は常に持っている。それはビジャレアルに移籍した時も同じだったが、結果的に満足な出場機会を得られなかった。東京五輪での活躍で自信を取り戻し、その良い流れに乗って新シーズンを臨みたい彼にとっては、その点が一抹の不安となっていた。

 しかもマジョルカはタケのそんな心を見透かしているように、30〜40試合のスタメン起用を保証。常時出場できる環境があれば、自らの実力を披露できると確信しているタケはこうしてマジョルカ復帰を決断した。

 もちろんかつての古巣という感情的な部分も決断を後押しした要因の一つだ。タケはまるで我が家のようにマジョルカに対し愛着を抱いており、その一方でファンの間で人気は高く、気心の知れたチームメイトも数多く残っている。

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 前回在籍した2シーズン前からビセンテ・モレーノ(現エスパニョール監督)からルイス・ガルシア・プラサへと監督が変わったとはいえ、スムーズに適応できる条件は揃っており、来夏にマドリーに復帰するためにアピールが必要なタケにとっては理想的な環境と言える。

 実際、今シーズンはタケのキャリアにおいて勝負の年になる。来年6月で前述のイスコとベイルの契約が満了し、マドリー側も受け入れ態勢を整えている。ただだからと言って無条件で復帰させる考えはなく、それに値するだけのプレーを見せることをタケに求めている。マドリーは希望を最優先してそのための環境を用意した。あとはタケがその期待に応えるパフォーマンスを見せるのみだ。

文●セルヒオ・サントス(アス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸