ルヴァンカップのプライムステージ(8クラブによる決勝トーナメント)が9月1日に開幕した。そのタイミングで原副理事長に訊いたテーマが「リーグカップの価値」だ。リーグ戦に比べれば注目度も観客動員数も及ばない同大会を、それでも1992年から今日まで継続してやってきた意義は、果たしてどこにあるのか。

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 ルヴァンカップ(リーグカップの現在の呼称)の位置づけをひと言で表現すれば、「若手の登竜門」になるでしょう。特にグループステージは若手選手に限らず、リーグ戦で出場機会に恵まれない選手がアピールする場でもあります。リーグカップで活躍し、その流れでリーグ戦でもチャンスをもらって台頭する選手は少なくないですよね? その点でリーグカップにはリーグ戦とはまた違った価値があります。

 リーグカップの歴史を振り返れば、大会方式やルールを何回か変更しています。試行錯誤を重ねた結果、現在のレギュレーション(グループステージ→プレーオフステージ→決勝トーナメント)にしました。もちろんこのやり方には賛否両論ありますが、正直、正解はないです。
 

 ルールに関してはやっていくうちに定着する側面があって、実際、「U−21先発出場ルール(21歳以下の日本国籍選手を1名以上先発に含める)」もそうですよね。導入当初は反対意見もありましたが、大会が進むにつれてむしろ「意外といい」という声が出てきました。昨季と今季はコロナ禍の影響で適用していないものの、「U−21先発出場ルール」は若手選手のモチベーションを維持する意味でも役に立っているのではないでしょうか。

 主にミッドウィーク開催のルヴァンカップは、リーグ戦に比べると当然ながら注目度は低いです。観客動員数が伸び悩んでいる現状も看過できませんが、だからといって魅力がないわけではありません。コアなファン・サポーターにとっては、普段リーグ戦で使われない若手選手のプレーを見る貴重な機会になっています。

 例えば、浦和レッズのファン・サポーターにとっては、当時18歳のGK鈴木彩艶選手がスタメンに抜擢された湘南戦(グループステージ初戦/3月2日)は特別な試合になったはずです。その後の彼の活躍に加え、東京五輪代表に選ばれた実績も踏まえれば、「あの湘南戦を現地で観ていたんだ」というのはある種自慢にもなるわけです。
 
 リーグカップ最大の醍醐味はやはり決勝戦です。なにより雰囲気がいいですよね。チケット配分も両チーム均等で、スタジアムの色彩が真っ二つに分かれる。あれが実に鮮やかで、私は好きです。

 なかには、対戦カードに関係なく「リーグカップのファイナルを必ず観る」というファンもいます。その方たちも決まって「あの雰囲気が好き」と言います。決勝戦が行なわれるのはだいたい10月末、秋晴れになる確率が高くて、延長に突入しても試合が終わるのは夕方ですから、子どもでも楽しめる。決勝戦が毎回、満員かそれに近い状態になるのはファンを惹きつける要素がたくさんあるからでしょう。
 

 その点で、特別協賛社である『ヤマザキビスケット』さんの存在は見逃せません。決勝戦の観戦者に自社製品のお菓子を提供していただくなどして、お客さんも喜んでいますからね。私もリーグカップを視察する際、その現場に差し入れとして置いてある『ヤマザキビスケット』のお菓子をついつい食べてしまいます。どれも美味しいですよね(笑)。

 サッカー関係者は全員、『ヤマザキビスケット』さんに感謝しています。ナビスコカップ時代も含め、「同一企業の協賛で最も長く開催されたプロサッカーリーグの大会」としてギネス世界記録にも認定されていますから、本当に有難いです。私としては、Jリーグとともに大会を育ててもらっている感覚があります。

 リーグカップをより魅力的な大会にするうえで考えたいのが、優勝チームの特典です。現状、そうしたものは優勝賞金以外にないですから。数年前までは南米のクラブを招待して『JリーグYBCルヴァンカップ/CONMEBOLスダメリカーナ王者決定戦』を開催していましたが、コロナ禍の現状もあって再開の目途は立っていません。

 ならば、と──。現行の富士ゼロックス・スーパーカップをリーグチャンピオン、天皇杯覇者、リーグカップ王者の3チームで45分総当たりにする手はあると個人的に思っています。プレシーズンマッチは勝敗以上に“お披露目”の意味合いが強いので、結構面白いアイデアではないでしょうか。対戦順はリーグチャンピオンに選択権を与えればいいですし、実現できれば大きな話題になるかもしれません。

<プロフィール>
原 博実(はら・ひろみ)/1958年10月19日生まれ、栃木県出身。現役時代はFWで早稲田大、三菱重工などで活躍。日本代表歴は75試合・37得点。現役引退後、浦和、FC東京の監督を経て日本サッカー協会で技術委員長なども務めた。16年3月にJリーグの副理事長に就任し、現在に至る。

取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

※本稿は、サッカーダイジェスト9月23日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を転載したもの。