ボールを丁寧にセットした時、法政大FW佐藤大樹の眼光は鋭くゴールに向けられていた。総理大臣杯決勝において法政大は11分に先制を許すも、41分にMF松井蓮之のゴールで追いつき、1−1のままで後半アディショナルタイムを迎えていた。

 後半は相手をシュート1本に抑え込み、逆に7本のシュートを放つも相手の堅い守備をこじ開けられない状況にあった。佐藤自身も2本のシュートを放っていたが、84分の決定機ではシュートを相手DFの捨て身のディフェンスで阻まれ、チャンスをものに出来ないでいた。
 
「僕自身、なかなか点が取れていなくて、何がなんでも点が欲しいと思っていた」

 90+3分、中盤で交代出場のMF中川敦瑛がボールを持った瞬間にパスコースが見えた。いつもならそこにすぐに走り込んでボールを受ける準備をしていた。だが、この時は違った。先に相手CBに身体を当てるアーリーヒットをして、相手のバランスを崩すだけではなく、見えていたパスコースをより確実なものにすると、中川敦から糸の引くようなスルーパスが届いた。佐藤は相手DFと完全に入れ替わる形で抜け出すと、足をかけられる形で倒され、ファウルを受けてFKを獲得した。

 FWとして「そのままGKと1対1になって決め切りたかった」というのが本音だが、倒された瞬間に「4年生である僕らが勝たせないといけないという使命を感じた」と、そのままキッカーに名乗り出たのだった。

 位置はゴール右斜め45度。普段であればこの位置はレフティである田部井が蹴るのだが、田部井は初戦のIPU・環太平洋大戦の試合前アップで負傷し、約2か月の離脱を強いられてしまった。キッカー不在で、かつ左利きは佐藤とDF今野息吹のみ。そうであれば中学以来ほとんど蹴ったことはないが、ストライカーとしての責任がある自分が蹴るしかない。あの鋭い眼光はその覚悟の表われだった。

 助走を取り、右で蹴るように助走を始めたMF吉尾虹樹がフェイクを入れた瞬間、GKが少し右に動いたのが見えた。その瞬間、ダッシュを始めた佐藤は迷わず左足を一閃。インフロントにかけて激しく擦り上げたボールは、「イメージ通り」と自画自賛するように壁の左を巻いて、ゴール左サイドネットに突き刺さった。

 3回戦の日本文理大に次ぐ今大会2ゴール目は、チームを3大会ぶり5度目の優勝に導く値千金の決勝弾。最後の最後でエースストライカーの面目躍如を果たした。
 
 このゴールは彼の覚悟だけではなく、大きな成長を示すものでもあった。このFKを得たシーンに遡ると、彼は90分を通して相手DFと駆け引きをし続け、その蓄積したデータをもとに見事に判断を変えたファインプレーをしていた。

「東洋大のディフェンスラインが高い位置にあって、裏に抜け出せるタイミングが何回かあった。味方の選手が前向きでボールを運んだ瞬間には裏のスペースが常に空いていたので、収めるというより今日はシンプルに裏を狙うことは意識した」
 
 足下で収めるよりも裏を狙った方が有効的。この狙いに彼はあるスパイスを加えていた。それは相手の2CBがボールに積極的に来たり、アーリーヒットを仕掛けてくることを逆手に取ったものだった。

「立ち上がりから僕に体を当ててきて、自分のランニングコースを消してきたり、前をむかせない守備など、かなり賢い守備をしてきたので、それに対して自分に何が出来るか考えた」

 その結果がランニングコースとパスコースを遮断してこようとした相手を察して、逆に佐藤がアーリーヒットをして遮断させないプレーだった。だからこそ、あそこで完全に入れ替わることができた。

「ああいう形でこれまで抜け出せなかったのですが、今回でプレーの幅を広げることができたと思います。ここからです」

 手応えを感じた決勝での90分間。優勝と同じくらい価値のあるものを手にした佐藤は、残された2つのタイトル獲得に向けて、エースストライカーとしての牙をさらに研ぎ澄ませんと次なる戦いに早くも目を向けている。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)