カタール・ワールドカップ・アジア最終予選の中国代表対日本代表は、日本が1-0で勝利を収めた。

 中国は4人の帰化選手を集めるチームとして注目されたが、実際はそれほどの脅威ではなかった。2トップの一角で出場したエウケソンは、重さと強さを備える選手だが、吉田麻也はデュエルの仕方を工夫して戦った。先に身体を当てて相手の体勢を崩し、ムキになってきたところでファウルをもらうなど、巧みに駆け引きをする場面が何度もあった。

 62分から出場したアラン、アロイージオの2人は、激しい球際のバトルを仕掛け、受け身だった中国を活性化。しかし、いかんせんプレッシングに連動性がないため、日本は慣れればかわすことを苦にしなくなった。

 ボールを早く動かせば、2トップの裏、サイドなど、簡単にスペースが見つかる。最初は自陣に追い込まれた吉田が、縦パスをカットされるなど危うい場面もあったが、その後は柴崎岳や遠藤航が中継に入り、安定してかわすようになった。

 確かに試合に出場した3人の帰化選手たちは個の力を持っていた。しかし、日頃から欧州サッカーで戦う日本代表選手にとって、個の局面は問題にならない。むしろ日本の場合、東京五輪代表でも見られたようにビルドアップに課題があり、オマーンのような組織立ったプレッシングを仕掛けてくるチームのほうが苦手だ。今回、帰化選手の個の力に頼る中国は、日本にとってはくみしやすい相手だった。
 
 帰化選手といえば、かつて日本もラモス瑠偉や呂比須ワグナー、田中マルクス闘莉王など、何人かの選手が日本代表として戦ったが、今は当時とはルールが違う。現在のFIFAの規定では、帰化選手がサッカー代表に入るためには、国籍変更だけでなく、その国に5年以上居住する必要がある。それを満たす帰化選手となると、必然的に年齢は上がってくる。

 スタメンで出場したFWエウケソンは現在32歳、62分から出場したアランも32歳、アロイージオは33歳だった。元エヴァートンのDFティアス・ブラウニングの場合は、祖父が中国人であるため、5年の居住条件を必要とせず27歳と若かったが、ブラジルからの帰化選手3人は、いずれもベテランだ。

 身体面だけを考えれば、サッカー選手は24歳から25歳でピークを迎えるが、彼らはそれを大きく過ぎている。帰化選手による代表強化は、ハイレベルなチームが頂点を目指し、しのぎを削るワールドカップや最終予選でも有効かどうかは疑問符が付く。
 
 その中国を相手に1点しか取れなかったことが、後々響いて来なければ良いが。日本と同組のオーストラリアは初戦で中国に3-0で勝ち、2戦目もベトナムを1-0で下して2連勝した。サウジアラビアも、ベトナムに3-1、オマーンに1-0と2連勝している。日本はライバルに対し、勝点でも得失点差でも差を付けられた状況だ。

 10月に迎える彼らとの直接対決は、できれば2連勝、あるいは最低でも1勝1分けで、どちらかには土をつけ、巻き返さなければならない。

 中国戦は鎌田大地ではなく、久保建英をスタメンに並べた。伊東純也が中へ入り、空いた大外には室屋成が上がり、中盤のハーフスペースには久保が開いて足もとでボールを受ける。初期配置の三角形が回転するように、日本はローテーション・アタックを見せた。伊東の突破力は、中国も充分にスカウティングしていたはずだが、その伊東が中に入って注意を引きつけたため、室屋や久保がフリーになりやすかった。
 
 もっとも決勝ゴールを挙げたのは、ローテーションの形からではない。40分、自陣でボールを回収した日本が素早く右サイドへ展開したことで、この試合では珍しく伊東がスタートポジションの大外からドリブルで仕掛ける形になり、虚を突くひと差しの突破が成功した。

 何度もローテーションを見せたことで、逆に初期配置の仕掛けが意外性を生んだ。「意思統一できる絵」を持てば、そこから色々なバリエーションが生まれる。

 森保監督は現在の日本代表の難しさについて、どのチームからも分析、対策をされる存在であることを挙げた。ならば、1試合1試合、相手や環境に合わせて絵を描き、チームを変化させればいい。コンディションの良い選手を起用することは、五輪やW杯など、集中トーナメントを賢く勝ち進むための重要なポイントでもある。

 良い機会だ。サウジアラビア戦とオーストラリア戦でそれを見せられるか。見せられないようなら、W杯のベスト8入りも厳しい。

文●清水英斗(サッカーライター)

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