キリアン・エムバペの強靭なメンタルが、人々を驚愕させている。
 
 エムバペはこの夏、次々と心理的試練を経験した。契約更新を迫るパリ・サンジェルマン指導部から陰に陽に猛プレッシャーをかけられ、サポーターからも「天狗になっている」と批判された。
 
 次いでフランス代表として戦ったEUROで結果を残せず、スイスに敗れた試合のPK戦では最終キッカーを務めて失敗。以来、パリSGのホームスタジアム、パルク・デ・プランス(略称パルク)では、エムバペへのブーイングが出るようになった。

 メルカートが進むと、レアル・マドリー移籍をめぐる「連続ドラマ」がいよいよメディアを騒がせ始め、8月31日深夜、ついにこれが”流産”で幕引きに。さらに、ワールドカップ欧州予選に出場するや、9月1日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(1-1)で右ふくらはぎを傷め、代表を離脱してしまった。
 
 しかし、パリで治療に入った22歳は、予想より早くピッチに戻ってきた。9月11日のリーグ・アン第5節クレルモン戦(4-0)。マドリー移籍が不成立となってから初めて、エムバぺがパルクに姿を現わした試合だった。

 コレクティフ・ウルトラ・パリ(CUP、ハードなサポーター集団)のメンバーは、「おそらく個人的な口笛はいくらか出るだろう。だが俺が聞いた噂では、(組織的には)何も予定されていない。とくにチャンピオンズ・リーグ(CL)の前はね」と予言していた。

 エムバペの名がスピーカーから流れる。すると案の定、ブーイングに包まれた。

 だが先発したエムバペは、20分ほど足慣らししたのちエンジンを上げ、アンデル・エレーラのゴール(31分)を生み出す。次いで自らもネットを揺らし(55分)、最後にイドリサ・ゲイエのゴール(65分)にも絡んだ。4ゴール中3ゴールに直接絡む大活躍だった。
 やがて79分に背番号7がベンチに下がると、パルクは満場の喝采に包まれた。もう口笛は消えていた。

「キリアンはビッグなプロだ。非常にビッグなフットボーラーで、人間的にもいい青年だ。いつもそうしている通り、彼はクラブにたくさんのリスペクトを示した。それらを前にもってくるべきだと思う」

 マウリシオ・ポチェティーノ監督はこう語って、やんわりとエムバペ批判に水を差した。エムバペ本人も、強烈なインパクトを放ったこの試合で今シーズンを事実上開幕。「あれだけ心理的試練が続いたのに、たいしたメンタルだ」の声が上がっている。

 エムバペのマドリー移籍願望はもちろん公然の秘密。だが自分のクラブに対し「クラッシュ(衝突)に行くつもりはない」と早々と語った後、沈黙を守り通した。「更新かフリー退団か」の話題は今後も続くことになるが、いずれにせよ若きエースは、プロとして責任を全うするつもりのようだ。
 
 もっとも、クレルモン戦にはリオネル・メッシもネイマールも出場しなかった(ともに代表戦から戻ったばかり)。今後は2人と一緒にどう輝けるか、に注目が集まってくる。パリSG悲願のCL優勝に向け、15日には戦いの火ぶたが切られる。

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 また代表でも同じ方程式が待つ。
 
 エムバペ離脱後のフランス代表では、アントワーヌ・グリエーズマンがカリム・ベンゼマと素晴らしいコンビネーションを実現し、2ゴールを奪い、フィンランドを勝利に導いた(2-0)。グリエーズマンとの不仲説も囁かれるだけに、グリエーズマン、ベンゼマと一緒にどう輝けるのかにフランス中の視線が集まってくることになる。

 フランスで育成には4つの要素がある。1テクニック、2フィジカル、3タクティック、4メンタルだ。3まではハイレベルでも、4が付いてこないことが多々ある。ただエムバペのメンタルは強靭らしい。後は人生と同じで、第5要素の「経験」を徐々に積んでいくことになる。

 12月で23歳になるエムバペは来夏、どこにいるだろうか。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI

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