久保建英がレンタルで復帰したマジョルカが、移籍市場最終盤に獲得したのが韓国代表MFイ・ガンインだ。なぜ久保と同じ技巧派のレフティの獲得に動き、国内外のライバルとの争奪戦を制すことができたのか。地元紙『Diario de Mallorca』でマジョルカ番を務めるエレナ・ガルシア記者に訊いた。

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 タケ・クボ(久保建英)の獲得はマジョルカに大きな利益をもたらした。アジア市場に進出し、当地の企業とのスポンサー契約を結ぶきっかけとなった。つい1か月前にも日本のメーカー『タイカ』との契約締結を発表したばかりだ。

 したがって今回のイ・ガンインの獲得においてもそうした“アジアマネー”が影響したのは事実だ。しかもタケとは異なり、4年間の完全移籍での加入だ。日本と韓国とでは勝手が違う部分もあるだろうが、お互い手を携えて様々な試みを実施していこうという考えで一致している。

 マジョルカは当初イ・ガンインの獲得を全く想定していなかった。実際、タケやフェル・ニーニョらが加入し、攻撃的なポジションの補強はすでに完了していると思われていた。イ・ガンインも2022年6月に契約が満了するまでバレンシアに残留する選択肢を捨てていなかった。

 しかし、マルコス・アンドレの入団が決定的となったことで状況が一変。バレンシアはEU圏外枠を空けるためイ・ガンインの契約を解除することを決断し、そこでマジョルカが迅速に獲得に動いたわけだ。

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 当然、他のクラブとの激しい争奪戦となったが、その際に大きくモノをいったのが、ラ・リーガでプレーし続けたいというイ・ガンインの強い意思だ。これで海外のクラブが自動的に選択肢の中から消え、さらに2シーズン前にもタケを迎え入れ、好印象を残した“実績”がマジョルカへの移籍に気持ちを傾かせた。

 こうして移籍期限が近づくなかでの駆け込み移籍だったにもわらず、イ・ガンインは継続的に出場機会を得て、才能の片鱗を見せている。初めてスタメンに起用されたレアル・マドリー戦ではチームが大敗(1-6)を喫する中、1得点をマーク。アピールに成功すると、続くオサスナ戦、レバンテ戦でも先発出場を果たしている。
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 そのマドリー戦で開幕以来、攻撃を牽引してきたタケが負傷で交代。現在戦線離脱を余儀なくされており、新たな攻撃の柱として相対的に期待値が高まっている。

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 広告塔としての価値は申し分ない。イ・ガンインは韓国の国民的アイドルであり、アディダス、ゲータレード、ペプシといった世界的企業とスポンサー契約を交わしている。

 マジョルカのビジネスCEOのアルフォンソ・ディアスは、その加入効果について、「われわれが近年進めているブランド戦略の一環だ。彼のような選手を獲得することが、その目標達成のための手助けにもなる」と明言している。

 アジアのプライムタイムに合わせてマジョルカの試合が組まれていることも両選手の加入と無関係ではない。実際、8節終了時点で、ここまで3試合がその「アジア時間」で開催されている。スペインでは1日で最も暑い時間帯に相当し、ルイス・ガルシア監督は「これが今シーズンの傾向になりそうだ」と嘆き節だが、これもまたグルーバル化の一つの側面である。
 
 心強いのは、早くもチームに早くも溶け込んでいることだろう。いろいろ取り沙汰されたこともあるが、素顔は明るい青年だ。バレンシア時代にも一緒にプレーしたハウメ・コスタとは冗談を言い合い、タケともすっかり打ち解けている。

 すでにソン・モイス(スタジアム)の近くに新居を確保し、バレンシアに残ったままの家族も頻繁にマジョルカとの間を行き来している。

 もちろんいくら綿密な戦略を練り上げても、全ての前提となるのはピッチ上での活躍だ。バレンシア時代は様々な事情が重なりその能力を発揮できなかったのは周知のとおり。新天地で好スタートを切ったが、ここから本格化させるかどうかは、本人の努力とともに、指揮官のマネジメントも重要になってくる。

文●エレナ・ガルシア(ディアリオ・デ・マジョルカ紙マジョルカ番)
翻訳●下村正幸

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