◆シーズンを中止する可能性も

 新型コロナウイルスの影響は当然、香港のフットボールシーンにも及んでいる。香港プレミアリーグは3月中旬に中断され、Jリーグと同様に今シーズンは2部への降格をなくし、8月中の再開と11月中の終了を目指していた。


 ところが、一度は収まったように見えた感染者数が再び増加し(香港ではこれが第三波とされている)、7月に公共の運動施設が無期限閉鎖された。香港プレミアリーグの各クラブは自前のトレーニング施設を持っているところが少なく、多くは公共の運動場で練習をしているため、この閉鎖によりチームトレーニングができなくなってしまった。


 これを受け、香港フットボール協会のプイ・クワンケイ会長は、『サウスチャイナ・モーニングポスト』紙に次のようにコメントしている。


「すべてのフットボール施設が無期限閉鎖され、さらにパンデミックが広がり続けてしまえば、我々は計画通りにリーグを再開できなくなるだろう。先頃、各クラブに書面を送り、最終決定の前に意見を聞いた。リーグを再開できなかった場合、シーズンを中止することになるかもしれない」


 3月にシーズンの中断が決まると、レンジャーズ、ユンロン、ペガサス、タイポーの4チームが、財政面の懸念からシーズンが再開されたとしても参加しない意向をリーグに伝えていた。つまり、仮に再開されたとしてもこれまでの10チームではなく、6チームで争われることになる。それもこれも、今となっては不透明になったわけだが……。


◆再開の日に備える選手たち

 財政面が逼迫したクラブに所属していた選手たちは、厳しい現実に直面している。リーグが中断されたとき、タイポーに期限付きで所属していた香港代表MF中村祐人(2018年に日本国籍から帰化)は、次のように説明する。


「5月に契約が切れてしまったので、その前から誘ってもらっていたリー・マンに移籍して、今はそこに所属しています。でも当時のタイポーのチームメイトたちは、3月から給料の未払いが続いていたり、契約が終わって失業中だったり、アルバイトをしてなんとか生活している選手もいます。所属先のない選手たちに比べると、僕は本当にラッキーなので、そういった人たちの分までしっかりやらないとなと思っています」


 しかし、8月のリーグ再開も難しくなったのが現状だ。香港フットボール協会は、再開の4週間前までには各クラブにトレーニング期間を与える予定だったというが、それも現実的ではなくなっている。


「十分な練習期間なしに、リーグを再開することはできない。選手たちの負傷につながってしまうからだ。しかし、トレーニング施設が閉鎖された今、我々フットボール協会にもできることはない。また、5人以上の集まりが禁止されているため、チームでのトレーニングはますます難しくなっている」


 リーグが中断された時点の首位チームは、広州に本拠を置くR&F。もしこのままリーグが終了となれば、AFCチャンピオンズリーグ出場権は、彼らに与えられることが決まっている。もっともその大会の開催も、まったく読めないところではあるのだが。


 そんな状況でも、選手たちは様々な工夫をして、いつか訪れる再開の日に備えている。新天地に移りながらもまだ公式戦に出場していないリー・マン(中断当時はリーグ2位)の中村は、「練習場どころか、ジムも閉まっているので、自宅のあるマンションのスペースでクラブから課されたメニューをこなしている」という。


「難しいですけどね。サボろうと思えば簡単にサボれますし。でもこれもいい期間と捉えて、自分のメンタルを強化しようと思っています。誰も見ていないところで、自分で尻をたたいてやっていますよ。自粛期間中は、子供たちにもトレーニングしてもらおうと思い、SNSで動画を上げたりもしています。僕たちはサッカーで、香港の人たちの希望になれるように頑張るだけです」


文=井川洋一