8月1日に行われるFAカップ決勝では、アーセナルとチェルシーが『ウェンブリー・スタジアム』で激突する。大会史上最多13回の優勝を誇るアーセナルと、2000年以降の決勝進出回数が最多9回を数えるチェルシー。ロンドンの名門2クラブの対戦を前に、知っておきたい8つのトピックを紹介する。


◆1.対戦成績はアーセナルが優位

 両チームは過去に公式戦で200回対戦。アーセナルが76勝59分65敗と勝ち越しており、FAカップに限っても、過去20対戦は9勝6分5敗の成績を収めている。FAカップの決勝で対戦するのは3度目となるが、過去2回はいずれもアーセナルがトロフィーを掲げている。しかし昨季のヨーロッパリーグ(EL)決勝ではチェルシーがアーセナルに4−1で快勝。また今季プレミアでも、チェルシーの1勝1分という結果に終わっている。勢いはチェルシーにありそうだ。


◆2.初タイトルを賭けた戦い

 今季途中からアーセナルを率いるミケル・アルテタ監督と、昨年の夏からチェルシーの指揮を執るフランク・ランパード監督。2人は各クラブOBであり、現役時代には背番号“8”をつけてキャプテンとして活躍してきたレジェンドだ。そんな両雄にとって、今回の決勝は監督としての初タイトルをかけた戦いになる。選手時代にアルテタ監督は2度、ランパード監督は4度、現在率いるクラブでFAカップのトロフィーを手に入れているが、指揮官として先に栄光を手にするのはどちらになるだろうか。


◆3.絶対に負けられないアーセナル

 FAカップの優勝チームには来季のEL出場権が与えられるが、この権利を是が非でも勝ち取りたいのがアーセナルだ。プレミアリーグは8位で終わり、ELはラウンド32で敗退。来季の欧州カップ戦に出場するためには、FAカップで優勝するしかない。対するチェルシーはプレミアで4位となり、すでに来季のCL出場権を獲得している。そのため、決勝への意気込みはアーセナルが上回っているはずだが、勝利への重圧をより感じることにもなるだろう。アルテタ監督が選手たちの気持ちをどうコントロールしていくのか。青年監督のマネジメント能力が問われる一戦とも言えそうだ。


◆4.主役はジルー!

 冬の移籍市場では退団に向けて動いていた男が、一転してチェルシーをけん引する存在となっている。オリヴィエ・ジルーだ。シーズン再開後には先発出場した8試合で7得点。チームをFAカップ決勝に導き、プレミアではトップ4フィニッシュの原動力となった。33歳のフランス代表ストライカーにとって、今回のファイナルは2018年1月まで在籍した古巣との対戦。昨季のEL決勝でゴールを決めた際には、古巣に敬意を払ってセレブレーションを自粛したが、元チームメイトでもあるアルテタ監督の前でどのようなパフォーマンスを披露するのか。ファンならずとも注目だろう。なおジルーはアーセナル時代からFAカップを得意としており、同大会で通算16ゴールを記録している。この試合を制すれば、優勝回数は5回に到達する。


◆5.若き才能のマッチアップにも要注目

 注目選手はジルーだけではない。プレミア最終節でゴールを決めたキーラン・ティアニー(23歳)とメイソン・マウント(21歳)の対決からも目が離せない。昨夏セルティックからアーセナルに加入したティアニーは、アルテタ監督が就任する直前に肩を負傷。長期離脱を強いられたが、リーグ再開後は全試合に出場している。最終節で決めた移籍後初ゴールに「喜び方が分からなくて、ただ後ろを向いてしまった」と語る謙虚さも、サポーターから支持される理由の一つだ。一方のマウントは、最終節にチェルシーのイングランド人として史上2人目となる直接フリーキックを決めた(1人目はランパード監督!)。今季は6歳から所属するチェルシーで初めてトップチームに登録され、プレミアではチーム最多の37試合に出場。7得点5アシストの好成績を残した。実は、両選手は4月に行われた『FIFA20』のオンライン・ゲーム大会で対戦済み。ただピッチ上で対峙したことがなく、どんな戦いを繰り広げるのか要注目だ。


◆6.元ドルトムント対決

 ビッグクラブに属する選手にとって、ピッチ上で元チームメイトと対戦するのは珍しいことではない。しかしチェルシーのクリスティアン・プリシッチは、ドルトムント時代の先輩であるピエール・エメリク・オーバメヤンとの対戦を心から楽しみにしているようだ。プリシッチがドルトムントのトップチームに昇格した2016年から、オーバメヤンがアーセナルに移籍した2018年まで一緒にプレーをしていた2人は、9歳差ながら公私ともに仲が良いとのこと。プリシッチはチェルシーへ移籍する際にもオーバメヤンに相談。現在も良好な関係を維持しているという。2シーズン続けてプレミアで22得点をたたき出したオーバメヤンと、プレミアデビューシーズンで9得点を挙げたプリシッチ。2人の元同僚対決にも注目だ。


◆7.119年ぶりの珍事

 FAカップ決勝で主審を務められるのは、原則として1人1回限りとなっている。しかし今回の決勝は無観客で行われるため、一生に一度の晴れ舞台を家族や大切な人たちに見てもらうことができない。それはあまりにもアンフェアだと判断したFA(イングランドサッカー協会)は、異例の措置として2016−17大会の決勝も担当したアンソニー・テイラー氏を主審に指名した。同一人物がFAカップ決勝で2度主審を務めるのは119年ぶりで、通算8人目だという。なおテイラー氏が3年前に主審を務めた決勝カードも「アーセナル対チェルシー」。当時は、アーセナルが1人退場者を出したチェルシーを2−1で下した。アーセナルはその試合を含め、テイラー氏が主審を務めたチェルシー戦は過去4戦で3勝1分けの負けなしだ。アーセナルにとってこの人選は吉と出るだろうか。


◆8.予想オッズは?

 日本時間7月31日正午現在、英国大手ブックメーカーの『ウィリアム・ヒル』はアーセナルの勝利に「3.4倍」、チェルシーの勝利に「2.1倍」、(90分終了時点で)ドローに「3.4倍」というオッズを付けている。FAカップで最多優勝回数を誇るアーセナルよりも、プレミアでトップ4フィニッシュを成し遂げたチェルシーがやや優位と予想したようだ。しかしアーセナルには移籍が噂される選手を引き留めるため、また新たな補強を行うためにもEL出場権は必須。何より、タイトル獲得は決して順風満帆ではなかった今季の苦しみを消し去ってくれるはずだ。それはチェルシーにとっても同じだろう。第139回FAカップを制するのはアーセナルか、それともチェルシーか。注目の一戦をお見逃しなく。


(記事/Footmedia)