今シーズンのプレミアリーグも佳境を迎え、マンチェスター・Cとリヴァプールによる熾烈な優勝争いに注目が集まるが、この時期は個人賞の発表も楽しみだ。


 イングランドには権威ある個人賞が2つ存在する。1つはフットボール記者協会(FWA)選出の年間最優秀選手賞だ。こちらは1947−48シーズンから続く伝統ある賞で、普段から記事を寄稿している記者たちの投票によって選ばれる。第1回の受賞者は、“マシューズフェイント”で有名な元イングランド代表のスタンリー・マシューズ氏だった。


 もう1つの賞は、プロ選手協会(PFA)選出の年間最優秀選手賞で、こちらは選手たちが互いを投票してそのシーズンのベストプレーヤーを決めるというもの。記念すべき第1回(1973−74シーズン)は、リーズをリーグ優勝に導いた元イングランド代表のノーマン・ハンター氏が受賞した。歴史が古いFWA年間最優秀選手賞の方が格式高いという意見もあるが、元イングランド代表のアラン・シアラー氏などは「毎週のように蹴り飛ばそうとしてくる相手からの投票」なので重みがあるのはPFA賞だと主張している。


 そんな「PFA年間最優秀選手賞」における歴代最高の受賞者は誰なのか? 偉大な名プレーヤーが名を連ねる歴代の受賞者をランク付けしたらどうなるのか? イギリスメディア『BBC』がゲストを招き、番組内で“最高の受賞者”を選出したので紹介しよう。


『BBC』は1992年に発足したプレミアリーグ以降の受賞者に限定するとして、歴代の受賞者の中からトップ10を選び、それをゲスト解説者がランク付けした。そのため、1985−86シーズンの受賞者であり、番組の司会を務める元イングランド代表のゲーリー・リネカー氏は対象外となった。だが同氏は、PFA年間最優秀選手賞について番組内で興味深いエピソードを明かした。


 エヴァートン時代の1986年に受賞したリネカー氏は、ご存じの通りキャリア晩年(1992〜94年)をJリーグで過ごしたのだが、来日する前に貴重品を銀行の貸金庫に預けたという。それから28年間、ずっと貸金庫を放置していたが「数年前に開けたら、そこに(PFAの)トロフィーが入っていた」そうだ。1986年ワールドカップ得点王など、数々の賞を手にしてきたリネカー氏は、どうやら記念品にはあまり思い入れがないようだ。


 本題に戻ると、『BBC』はシアラー氏(ニューカッスルなどで活躍)と元イングランド代表のマイカ・リチャーズ氏(マンチェスター・Cなどで活躍)を招いてトップ10をランク付けした。


[写真]=Getty Images


◆■総合10位 ガレス・ベイル(受賞2回:2011、2013)


 驚くべきことに、過去に6名しかいない受賞2回の選手のうちの一人であるガレス・ベイルが、トップ10では最下位の10位となった。ベイルといえば、2007年にサウサンプトンからトッテナムに加入した後、出場したリーグ戦24試合に勝利できずに苦しんだが、その後は大ブレークして2010−11と2012−13シーズンにPFA年間最優秀選手賞に選ばれた。


 それでもシアラー氏とリチャーズ氏が揃ってベイルを10位にしたのは、初受賞した2010−11シーズンの成績が7ゴール1アシスト(リーグ戦)と乏しい結果だったから。リチャーズ氏は、サウサンプトン時代のベイルを「俺が完全に食べて見せた」と同選手を封じたことを自慢したのだが、リネカー氏に「ならば、君はその年の年間最優秀選手賞の候補に選ばれたでしょ」と皮肉を言われてしまった。リチャーズ氏は、若手賞の候補には2度選ばれたことがあるが、年間最優秀選手賞では候補にすら入ったことがないのだ。


◆■総合9位 ウェイン・ルーニー(受賞1回:2010)


 マンチェスター・Uのエースとして活躍し、イングランド代表の歴代最多ゴール(53)を誇るウェイン・ルーニー氏だが、シアラー氏が8位に、リチャーズ氏が7位に選んで総合9位に留まった。ルーニー氏は受賞した2009−10シーズンに、ユナイテッドでリーグ戦26ゴール3アシスト。チームはチェルシーに優勝を譲り、得点ランクでもディディエ・ドログバ氏(29ゴール)に及ばなかったため、今回のランキングでも振るわない結果となった。


◆■総合6位タイ スティーヴン・ジェラード(受賞1回:2006)/ルイス・スアレス(受賞1回:2014)/エリック・カントナ(受賞1回:1994)


 ゲスト2名のランキングを合算すると「総合6位」で3選手が並んだ。スティーヴン・ジェラード氏は受賞した2005−06シーズンにリヴァプールで10ゴール5アシスト(リーグ戦)。チームはプレミアリーグで3位に留まったが、FAカップで見事に優勝。決勝のウェストハム戦では、敗色濃厚となった91分に強烈なロングシュートを叩き込んでチームを救い、後に“ジェラード・ファイナル”と呼ばれる名勝負を生み出した。


 同じくリヴァプールで活躍したルイス・スアレスは、2013−14シーズンにリーグ戦33試合で31ゴール12アシストの圧倒的な数字を残して受賞した。そのシーズン、リヴァプールは24年ぶりのリーグ制覇に近づくも、主将だったジェラード氏が足を滑らせて失点に絡んで試合を落とすなど、終盤に失速して優勝を逃した。スアレスについては、リチャーズ氏が英国五輪代表として出場したロンドン五輪で「カバーニとスアレスが2トップを組んだウルグアイを完封した」と自慢している。


 プレミアリーグ初期にマンチェスター・Uで活躍した、エリック・カントナ氏。1993−94シーズンには、リーグ戦18ゴール12アシストでチームをリーグ連覇とFAカップ優勝の2冠に導いた。「腹が立つほど横柄だが、あの能力があるなら仕方ない」とシアラー氏も同選手を絶賛。だが、カントナ氏といえば思い出されるのは1995年1月の“カンフーキック事件”だ。同選手はカッとなってスタンドの敵サポーターにカンフーキックを食らわせて8カ月の出場停止処分を受けたのだ。リネカー氏によると、その時のカンフーキックの映像はプレミアリーグが使用を禁止しているという。


 ちなみに、カントナ氏のように理性を失ったことがあるかと質問されたシアラー氏は、1998年の試合でレスターの元北アイルランド代表ニール・レノン氏の顔面を蹴ってしまったことについて触れ「レノンに足を頭突きされたことがある」と冗談を飛ばした。


◆■総合5位 モハメド・サラー(受賞1回:2018)


 モハメド・サラーは2017年にリヴァプールへと加入すると、そのシーズンに32ゴール10アシスト(リーグ戦)。38試合制になってからのプレミアリーグ得点記録を打ち立て、PFA年間最優秀選手賞に選ばれた。2015年にフィオレンティーナでサラーと同僚だったリチャーズ氏は、同ストライカーについて「スピードやドリブルが凄いのは当然だが、常にゴールを奪える位置にいる」とポジショニングを褒めたたえた。


◆■総合4位 ケヴィン・デ・ブライネ(受賞2回:2020、2021)


 4位に入ったのは、PFA賞を2シーズン連続で受賞中のケヴィン・デ・ブライネだ。シティのゲームメイカーは今シーズンも素晴らしい活躍を見せており、このままいけば前人未到の3シーズン連続受賞の可能性もある。これまで歴代最多受賞が2回(6名)のため、3回目の受賞となれば史上初だ。


◆■総合3位 アラン・シアラー(受賞2回:1995、1997)


 初受賞は、ブラックバーン時代の1994−95シーズン。42試合制とはいえ、シアラー氏は34ゴール13アシストという驚異的な数字を残してクラブの初優勝に貢献した。2度目はニューカッスル時代の1996−97シーズンで、その時も得点王に輝いたのだが、本人は「不調だったので25ゴールに留まった」と自慢気に自ら振り返った。


◆■総合2位 クリスティアーノ・ロナウド(受賞2回:2007、2008)


 マンチェスター・Uのクリスティアーノ・ロナウドは、2006−07シーズンに17ゴール8アシスト(リーグ戦)を記録し、4年ぶりのリーグ制覇に貢献して初受賞。翌シーズンには31ゴール6アシスト(リーグ戦)でチームをプレミア連覇に導き、チャンピオンズリーグでも頂点に立ってPFA年間最優秀選手賞に2年連続で選ばれた。リネカー氏も「キャリアトータルで考えたらNo.1だ」と、37歳にして今でもゴールを決め続けているユナイテッドの背番号7を称えた。


◆■総合1位 ティエリ・アンリ(受賞2回:2003、2004)


 シアラー氏が2位、リチャーズ氏が1位に選んだのがアーセナルの“英雄”ティエリ・アンリ氏だ。アンリ氏は2002−03シーズンに24ゴール20アシスト(リーグ戦)という圧巻の数字で初受賞すると、翌シーズンには30ゴール6アシストでアーセナルの無敗優勝に貢献して史上初の2年連続受賞を果たした。なぜアンリ氏を1位に選ばなかったのか問われたシアラー氏は「C・ロナウドを1位に選んだから」という理由しか答えられなかった。一方でリネカー氏は、アンリ氏の凄さについて数字ではなく「彼のプレーを見た。それで十分だ」と絶賛している。


(記事/Footmedia)