代表公式戦デビューにして、ド派手なゴールラッシュとなった。7月19日にカンボジアの首都プノンペンで行われたAFC U−23選手権予選の第1戦において、FW小松蓮(産業能率大学)は大量4得点。日本がフィリピンに8−0と大勝する原動力となった。


 まさにシンデレラストーリーだろう。今年5月に行われたトゥーロン国際ユース大会に向けた準備合宿で代表初招集を受けると、そのままU−19日本代表の一員として大会に参戦。全3試合に先発出場を果たした。それまで「U−17北信越選抜に1回入ったことがあるだけで、高1までは県トレセン止まり」(小松)という選手にしては異例とも言える大抜擢である。松本山雅U−18から神奈川県リーグに所属する産業能率大学に歩みを進めていた男にとって、代表招集は「本当にビックリした」と言うほかないもの。その時点ではまだ大学でもレギュラーを手にしていなかったのだから、驚くのも当然だった。


 トゥーロン国際大会に臨んだU−19日本代表は、U−20ワールドカップに参加しない選手たちで、なおかつJリーグにも出場していない選手たちで構成されたチーム。言葉は悪いが、代表の補欠メンバーに近い編成だった。だが、今回のU−20代表は違う。FWに招集できない選手が多かったという事情はあるにせよ、親善大会ではない公式大会であり、国際経験を持つ選手たちを押しのけてのメンバー入りだった。


 大会出発前に行われたユニバーシアード日本代表との練習試合では「自分のストロング」と語るニアへの動き出しからクロスボールに合わせて、代表初ゴールを記録。トゥーロンでは動き出しの良さを評価されながらも0ゴールに終わってしまっていただけに、一つきっかけになるプレーだった。183センチの大きな体を利用してターゲットマンになりつつ、ゴール前では猫のような鋭敏さも発揮して絶妙のタイミングで危険地帯に入り込んでいく。松本U−18で鍛えられた守備面を含めた泥臭いプレーも大きな魅力だ。


 迎えたフィリピン戦。最初のゴールは、早々に1−0とリードを奪いながら2点目がなかなか取れていなかった23分に生まれた。左SB坂井大将(大分トリニータ)が内側でボールを受け、大外に張った左MF森島司(サンフレッチェ広島)へと展開した流れから、「司くんと目が合ったので、空いていたニアへ動き出した」。森島から蹴り込まれたクロスボールに「右足の足裏を伸ばして」ピンポイントで合わせるゴール。ストライカーらしいゴールは、小松の良さがよく出たシーンだった。


 29分には森島の放ったミドルシュートがDFに当たったこぼれをワンタッチで押し込んで2点目を奪うと、31分には今度は森島のゴールをアシスト。さらに42分と47分にもネットを揺らし、大量4ゴールを積み上げてみせた。


 視察に訪れていた西野朗技術委員長は「ストライカーの資質というか、どんなチームに対しても自分のタスクをこなしながらストロングを出す。そうした意欲、どん欲さが今日の彼にはあった」と小松のプレーぶりに賛辞を惜しまなかった。初めての代表公式戦にもかかわらず、「緊張はまったくしなかった」という強心臓や短い準備時間の中でも周りとの関係性をしっかり作った点を含め、“代表向き”の資質を持った選手であることは間違いなさそうだ。


 もちろん、相手のフィリピンが強いチームでなかったことは割り引いておく必要がある。本人も浮かれた様子はまったくなく、「味方がボールを持ったときに裏へ抜けるタイミングも悪いし、ボールがはいったときにも何回かワンタッチで出そうとしてミスをしていたので、そういうところはまだまだ」と気を引き締めるのを忘れなかった。


 だが、相手がいくら強くないとはいえ、4ゴールは簡単にできることではない。こういうときに決める選手と決められない選手とでは、周りからの信頼感も自然と変わってくるものだ。


「代表としての一歩を踏み出せたのかな」


“遅れて来たシンデレラ”小松蓮がふと漏らした一言は、彼にとってのフィリピン戦の意味をよく表していた。


文=川端暁彦