「攻撃の順天堂大」。2015シーズンに元日本代表DFの堀池巧氏が監督に就任して以降、順天堂大は攻撃的なポゼッションサッカーのイメージが定着した。中盤から前線には、U−20日本代表の旗手怜央やユニバーシアード日本代表の名古新太郎、U−20全日本大学選抜の浮田健誠とタレントがそろう。


 その中で、強烈な反骨心を持って最終ラインで守備をけん引する選手がいる。清水エスパルスユース出身の2年生、村松航太だ。


「僕が入学した時からずっと『順天堂大と言えば攻撃』と言われ続けているのが、守備の選手としてすごく嫌なんですよね。口には出さないけど、『攻撃ばっかり見やがって』って思っていた時期もありました。心の中では、『こっちが後ろを支えているおかげだぞ』って」


 声を大にしてアピールする村松は昨シーズン、ルーキーながら公式戦全試合に出場。171センチとセンターバックとしては小柄ながら、持ち前のカバーリング力や危機察知能力を生かしたプレーで、チームの全国準優勝やリーグ戦4位入賞に貢献した。


 だが、リーグ戦で新人賞を獲得した旗手らの活躍の陰に隠れ、村松が脚光を浴びることはほとんどなかった。「試合にはずっと出ていたけど、昨年の僕のプレーが印象に残っている人なんて少ないと思う」。そんな中でもくさらず、センターバックのコンビを組む坂圭祐らとともに、奮闘を誓い合ってきた。


「チームが勝っても1点でも失えば、DF陣の評価はまるで違うんです。だから、特に坂くんとは『1点にこだわろう』という話をずっとしてきました。結局、攻撃の選手は個人で数字を残せるけど、守備はそうではないから」


 今シーズン、前期リーグ戦を2位で終えた順天堂大は、7月上旬に行われた「アミノバイタル」カップ2017第6回関東大学サッカートーナメント大会で初優勝を飾った。全5試合にフル出場した村松は、大会をとおして一回り成長を遂げることができたと言う。


 全国切符を懸けた3回戦の相手は、昨シーズンの全国決勝で敗れた“因縁”の相手、明治大学だった。結局、順天堂大が2−1で勝利を収めたものの、村松は自身のプレーに不満を残した。


「明治には絶対に負けたくなかったので、熱くなりすぎてしまって、チームは勝ったけど個人のプレーはあまりうまくいかなかったんです。だから全国出場が決まったうれしさは本当に一瞬で、不甲斐なさばかりが残りました」


 それから気持ちを切り替えて臨んだ準決勝、決勝は“相棒”である坂が負傷欠場。サイドバックが本職の1年生DF三国スティビアエブスとセンターバックを組むことになった。


「坂くんが明治大戦で無理して出ていたのは知っていたし、けがは誰もがいつ負うか分からないので、頼り切っていてはダメだと思っていました。でも、エブスは元々サイドバックの選手だし、神奈川大学戦(準決勝)はさすがにキツかったですね(苦笑)」


 その神奈川大戦は「いつもの1.5倍くらいは守備範囲が広くなると思っていた」中で、1失点を喫したが、チームは6−1と大勝した。そして迎えた決勝戦は、リーグ戦で首位を走る筑波大学と激突。村松を中心としたDF陣の粘り強い守備の甲斐あり、堂々の完封で2−0の勝利を収めた。試合後は、スタンドでメガホンを片手に声を枯らしていた坂とアイコンタクトを取りながら、互いに親指を立て合図を送った。


「坂くんは『ナイス』っていうサインだったと思うけど、僕としては『坂くんがいなくてもやれるよ』って(笑)。坂くんがいない分、いつも以上にディフェンスライン全体のことを気にかけながら、責任感を持ってやれたのは良かったです。僕のプレーにはあまり特徴がなくて、リーダーシップとか存在感でチームに貢献するしかないので」


 同じ失敗は繰り返さない。今度はしっかりと自分自身のメンタルをコントロールし、主将不在の危機にも動じず、見事にディフェンスリーダーを務め上げた。その村松の顔は、充実感に満ちていた。


 自身のキャリアで初となる大きなタイトルを獲得し、「自信になった」と語る一方で、視線はすぐ先の全国舞台を見据えていた。


「総理大臣杯では無失点で優勝したいです。僕個人としては、後ろから仲間を鼓舞して、戦わせていきたい」


 昨シーズン、あと一歩及ばなかった全国タイトル獲得へ。暑さの残る9月の大阪。躍動する攻撃陣の陰で、誰よりも熱く戦い、献身的なプレーでチームを支える村松の姿があるはずだ。


文=平柳麻衣