明治安田生命J1リーグ中断期間内の22日に変則日程で1試合だけ行わわたセレッソ大阪浦和レッズ。8日の柏レイソル戦を勝利し、真の首位に立ったセレッソの攻撃力が爆発した。


 火付け役となったのが、エースFW杉本健勇だ。開始早々の6分、ソウザのスルーパスに抜け出した水沼宏太の折り返しに背番号9は鋭く反応。右足を軽く合わせて幸先のいい先制点を挙げる。直後の8分には左サイドの柿谷曜一朗の浮き球のクロスに合わせて打点の高いヘッドを披露。1試合2ゴールをマークして今季通算得点を10の乗せることに成功する。1週間前にドルトムントに善戦し、大いに自信をつけたはずのレッズ守備陣を絶望の淵に追いやったのだ。


 その後、ズラタンに1点を奪われたものの、セレッソのゴールラッシュは止まらない。山口蛍の豪快な3点目に、水沼の右クロスに飛び込んだ丸橋祐介の4点目が前半のうちに入ると、ヤンマースタジアム長居はお祭り騒ぎとなる。前半終了間際には浦和にもう1点を奪われたが、後半45分間は尹晶煥監督の守りの秘策である5−4−1の守備的フォーメーションがさく裂。3月4日のJ1第2節で1−3と完敗した時とは対照的な強さを見せつけ、セレッソは勝ち点を41に伸ばし、首位の地位をガッチリと固めた。


「今季はFWとして前で起点を作ってほしい」と指揮官から直々に指名を受け、最前線で点取り屋の大役を任されてきた杉本。「サイドの時は常に前を向いてプレーできるけど、FWになると後ろ向きのプレーも多くなる。そういう中でいかに前を向いて勝負できるかが一番大事になってくる」と本人も話していたが、試合を重ねる毎にそのツボを体得してきた印象だ。この日の先制点の場面のようにぽっかりとスペースが空いた時には背番号9がいる……。そういう形が格段に増えてきたからこそ、彼は最近リーグ3試合で4点をマークしているのだろう。


「去年のJ2(の14点)を超えるゴール数が目標」と杉本は公言していたが、19試合を終えて2桁達成というのは想像していなかったかもしれない。2010にトップ登録されて以来、J1では2015年の川崎フロンターレでの6点が最高だっただけに、今季の変貌ぶりは特筆に値する。


 尹晶煥監督に最前線で固定されていることが最大の要因ではあるが、彼自身の中でも「自分は点取り屋だ」という強い意識が随所に感じられるようになってきたのも大きい。「チームを勝たせる得点を取らないと意味がない」とメディアの前で言い続け、試合中に決定機を外すたびに悔しさをむき出しにするようになったのは、こうしたメンタル面の変化の表れではないか。少し前までどこか甘さや遠慮が感じられた杉本が闘争心溢れるFWに進化しつつあることは、日本サッカー界にとって前向きな要素と言っていい。


 浦和戦の2発でJ1得点ランキングトップに立つ興梠慎三(浦和)に2点差に迫り、得点王獲得も視野に入ってきた。そうなれば、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も黙ってはいないだろう。以前から「杉本のような長身のFWがほしい」と言い、彼の動向をチェックし続けてきただけに、今季の大躍進を見逃さないはずがない。


 8月に新シーズンを迎える大迫勇也(ケルン)、岡崎慎司(レスター)、武藤嘉紀(マインツ)らの動向にもよるが、8〜9月にかけての2018 FIFAワールドカップ・アジア最終予選ラスト2連戦(31日・オーストラリア/埼玉、5日・サウジアラビア/ジェッダ)の最終兵器として抜擢される可能性もゼロはないのだ。


「代表に関しては自分次第だと思います。前のポジションの方がその道も開けてくると思うんで」と今年頭の段階では遠慮がちに話していた杉本だが、その野心は日に日に高まっていることだろう。2014年ブラジルW杯を翌年に控えた4年前もJ1での大活躍によって柿谷と山口蛍が代表定着のチャンスをつかんだが、同じ流れに杉本が乗っている感は強い。同じチームにハリルジャパンに不可欠はダイナモ・山口がいるのも力強い援護射撃になっているはず。この千載一遇のチャンスを逃す手はない。


 彼と同じ92年生まれのプラチナ世代は、宇佐美貴史(アウグスブルク)、柴崎岳(ヘタフェ)を筆頭に、なかなか代表定着が叶っていない。ここへきて昌子源(鹿島)が定位置獲得へ着実な一歩を踏み出したが、10代の頃から騒がれてきた彼ら世代の潜在能力を出し切れているとは言えないのが実情だ。その1人である杉本が足踏み状態から抜け出し、日の丸を背負ってW杯をつかみ取るという強い意思と結果を見せてくれれば、宇佐美や柴崎にも刺激を与えるに違いない。そのためにも、J1でのゴール数をどこまでも積み上げることが肝要だ。29日のガンバ大阪とのダービーを筆頭に連戦の続く中、この勢いをさらに加速させてほしいものだ。


文=元川悦子