3週間の明治安田生命J1リーグ中断期間が間もなく明ける。ヴァンフォーレ甲府の後半戦が7月29日の第19節鹿島アントラーズ戦からスタートする。


 前半戦の甲府はとにかく得点力不足に苦しんだ。第14節ベガルタ仙台戦から5試合連続ノーゴール。6月21日の天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦・ヴァンラーレ八戸戦も含めると公式戦は6試合連続無得点という状況で“中休み”に入っている。18試合で挙げたゴール数は「10」でJ1最少。エース格として期待されていたFWウイルソン、FWドゥドゥはいずれも1ゴールずつにとどまっている。


 14位という順位は辛うじて残留圏内だが資金力のハンデは重い。残留争いのライバルを見ると、北海道コンサドーレ札幌はジェイ、チャナティップ・ソングラシンをこの移籍期間で獲得している。大宮アルディージャは一気に外国籍選手を3人も獲得したし、アルビレックス新潟、サンフレッチェ広島も3選手を補強してた。


 甲府の新戦力はジュニオール・バホスのみ。他のクラブが補強した選手に比べると明らかに見劣りするレベルの選手で、布陣はともかく選手起用に劇的な変化が起こりそうな予兆はない。第18節を終えて14位という順位はぎりぎり残留圏内だが、率直に言って後半戦の見通しは極めて厳しい。


 加えて日本人とブラジル人の連携構築は容易でない。「ブラジル人アタッカーを活かすために日本人が献身的にスペースを作る」という方法論もあるが、ウイルソンとドゥドゥは王様として振舞うに足る技量を証明していない。


 ドゥドゥは「このチームにはスペースを作るための動きが必要」と述べていたが、それは実際にその通りだ。「スペースを空ける」「使う」という連動が前半戦の甲府は乏しかった。例えば1トップが引いてDFが食いついてきたら、2シャドーが空いたスペースに動き出すというのはサッカーの大原則だが、そういうイメージを何とか擦り合わせるしかない。


 一応の方向性が見えたのは、7月22日に行われた中央大学とのトレーニングマッチだった。甲府は布陣を開幕から採用していた5−3−2から5−4−1に変えていた。中央大は関東大学リーグ2部のチームだが、個々のスキルが高く、攻めに人をかけるスタイル。そんな相手に対して22日の試合で甲府はボールを支配できず、構える試合運びをしていた。


 ただしオーガナイズを5−4−1の形でセットすることにより、前を向いて相手にボールを上手く「持たせて」いたことも事実。相手のリスク管理の問題があったにせよ、甲府はカウンターなどから効率的にチャンスを作り、30分✕4本のTMを5−0というスコアで終えている。


 新井涼平は「自分たちからアクションを起こして本当はやるべき試合だと思っていた。だから意図したゲーム運びではない」と反省を述べる。ただし夏の昼間、ピッチサイドの温度計が40度近くを表示していた中で、アクションを起こし続けることは難しい。それはJ1の夏場の戦いについても同様だ。


 前半戦を振り返ると甲府は「ボールを去年より持てているのに点が取れない」という状態だった。試合中のダラダラ感が消え試合の“平均強度”は上がっているが、どうもメリハリが効かなくなっている。攻め上がりの枚数や勢い、タイミングといった部分が明らかな修正点だった。


 守備面でも5−4−1の布陣は中央のスペースを自然と消すことができる。新井もこう述べる。「3ボランチだと、サイドに展開されたときに、逆のボランチが追いつかなかったりする。5−4−1という形は、3ボランチの時に比べれば中に人は多くいられる」


 吉田監督は「相手になかなかプレッシャーがかからないときは、自然とサイドが前に出るというよりは引く感じになるけれど、そこから出ていける」と説明する。相手にボールを持たれて、こちら側は自陣に引いているという状況には「前向きにプレーできる」というメリットもある。つまり攻撃に移ったときの勢いがつきやすい。


 可能な限り上の順位を目指し、チームに与えられた戦力の最大値を発揮することはプロとしての最低責任だ。甲府が今できることは現有戦力の連携を高め、攻撃ユニットの機能性を上げること――。もちろんその実現は容易でないが、5−4−1は夏場の戦いを考えれば現実的で、それなりに面白いオプションとなるだろう。


文=大島和人