「もう、猛獣使いになるのはやめた。俺が猛獣になるよ」


 鹿島アントラーズの土居聖真が、意を決したように言った。22日の明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ・セビージャFC戦後のミックスゾーンだ。


 ドリブルと加速に非凡な才を秘めながら、強引より確実を選択しがちなアタッカー。コンディションを落とした影響もあり、J1リーグではここ3試合、ベンチスタートが続いていた。この夜も62分からの出場だった。


 一念発起、猛獣使いから猛獣へ。ペドロ・ジュニオールや金崎夢生ら、向こうっ気の強い攻撃陣を生かすつなぎ役に徹するのではなく、リスクを取って自ら仕掛ける。そんな変化を示すプレーが87分にあった。


 逆襲からこぼれ球を拾い、左タッチライン際を疾走。切り返してペナルティーエリアに進入。眼前には2人のDFがいたが、躊躇なく右足を振り抜いた。シュートはゴール左下へ。枠をとらえ、惜しくもGKにはじかれた。


 以前の土居なら近くの同僚にパスを戻していた場面。「ぐいぐい、いったでしょ? もう、失うものはないから。FWである以上、ゴールをめざす、結果にこだわる。そういう積極性が、やっぱり自分には足りなかった」


 ずっと、わかってはいた。


 我を出していい、出すべき場面で出せない。2013年にレギュラーに抜擢してくれた恩師、トニーニョ・セレーゾ監督からは「シュートは打たなきゃ入らない」と口酸っぱく諭された。周りを気づかえる性格がピッチでは災いし、自分で奪ったPKのキッカーを同い年の柴崎岳(現・ヘタフェ)に譲ってしまった試合も。「結局、土居聖真って選手は気持ちの問題なんです」。自虐的に嘆いたことがある。


 悩み、吹っ切れたと思ったら、またいつのまにか積極性が薄れていく。葛藤と戦いながら、気がつけば25歳だ。日本代表スタッフから熱い視線を注がれた時期もある逸材、もう若くはない。今度こそ。殻を破る、機は熟しているはずだ。


「いまは、すべてを前向きにとらえるようにしている。先発から外れたのも、新たなハングリー精神が芽生えるきっかけだと」。大岩剛監督から「体、重いんじゃない?」と言葉をかけられ、こう返したという。「また(先発で)使いたいって考えてもらえるように頑張るんで、平等に見てください」


 猛獣へ。中断明けのJ1リーグ、土居の覚悟に目を凝らそう。


文=中川文如