川崎フロンターレ中村憲剛と、ジュビロ磐田の中村俊輔。


 明治安田生命J1リーグ戦5戦中4勝1分けの川崎と、5連勝中の磐田。好調なチーム同士の対戦だけに、注目を集める一戦と言えるだろう。


 磐田の攻撃で気をつけなくてはいけない存在といえば、やはり今年から磐田のユニフォームを身にまとっている中村俊輔。


 ポジションは3−4−2−1システムの右シャドー。左足のキック精度は相変わらず一級品で、1本のパスで決定的な仕事を演出する。


 中村俊輔がやっかいなのは、流れの中で掴まえにくい選手であるからだ。流れの中ではかなり自由にポジションを取り、ボランチの位置まで落ちて攻撃の組み立てを担う。


 一般的に考えれば、前線の選手がゴールから遠い距離に追いやっていけば怖さは半減する。しかし中村俊輔の場合は、その低い位置から一発で局面を変えてしまう展開力がある。そこの対応は、最終ラインの要である谷口彰悟も警戒している。


「(中村俊輔が)引いてボールを受けたりした時に、しっかりと片方のボランチが上がってきたり、背後に抜け出したりする。あとは川又選手(川又堅碁)がプルアウェイで広がりながら、ゴール前に来る。そういうのを狙っていますよね。後ろとしては、低い位置でボールを持たれているから安心ではなく、パスが出て来るのは注意しないといけない」


 ロングボールに川又がサイドに流れてゴール前に入っていく、カウンターでアダイウトンが抜け出すなど、低い位置に落ちた中村俊輔が起点となる攻撃パターンは多彩になっている。


「そこがチームのメカニズムに組み込まれてきたと思う」


 そう話すのは中村憲剛である。


「良いところに蹴れるからね。どこにいても危険な選手でもある。ただやはり前で仕事させられるよりは、後ろに下がってもらったほうがより怖さは出ない。そういう風にしたいですね」と、中村俊輔に対しては警戒心を口にする。


 実は今回の対戦は“中村対決”でもある。


 そこについて聞かれても、「俊さんと対戦するわけではないからね。ほぼマッチアップしないし(笑)」と笑う。中村憲剛がオシム監督時代や岡田武史監督時代には日本代表でもプレーしている間柄だが、長く日本サッカー界を牽引してきたレフティに対しては、プレイヤーとしても最大限のリスペクトを口にする。


「ずっと先頭を走っている人ですからね。(年は)2個違いだけど、自分が大学生のときから代表に入っていて、単純に、すごいと思っていた。今年、違うチームに行ってまた刺激を受けて新鮮な気持ちでやっているなと感じます。俺らぐらいの歳になると刺激がなくなるので。そういう意味では、すごいな。負けてられないっす」


 中村憲剛は現在36歳。昨年はJリーグMVPを獲得した。


 一方、先月に誕生日を迎えた中村俊輔は、現在39歳である。そんな中村俊輔は環境を変えることで刺激を得ているように中村憲剛には映った。


 一方で、中村憲剛はどうだろうか。彼は鬼木達監督のもとでサッカーに取り組んでいることに「刺激」を受けているという。


「新しいサッカーをやっていること。そこは楽しいし刺激でもある。特に守備のところがそう。自分が前から奪いに行ってスイッチになる。それはオニさんになる前からやりたかったところではある。それをチームとしてフォーカスしているし、阿部ちゃん(阿部浩之)や後ろが付いてきてくれるので、(奪いに)行き甲斐がある。自分が行くところでチームの守備の迫力が出る。そこは今までになかったから、単純に楽しいですね。その分、疲れますけど」


 それぞれの環境で「刺激」を受けながら成長している、二人の中村。


 明日の等々力陸上競技場のピッチでは、一体どんなプレーを見せてくれるのか。楽しみである。


文=いしかわごう