ガンバ大阪の攻撃がこの夏、加速の気配を漂わせている。事実、中断明け、最初の明治安田生命J1リーグ戦となった19節のセレッソ大阪戦ではここ2試合、沈黙していた攻撃が爆発。1点を先行される展開を跳ね除け、3得点を奪って9戦負けなしというセレッソの勢いを止めた。


 その立役者の一人が、新加入のFWファン・ウィジョだ。前線で確実にボールを収めることでチームに攻撃の厚みをもたらし、かつ個人的にも自身の武器でもあるパワーとスピードを存分に発揮。15分にMF藤本淳吾のスルーパスに反応して抜け出しゴールネットを揺らした際は、オフサイドの判定となったもののスタンドからはため息と共に、驚きの声も。正確な足元の技術と『ストライカー』らしいゴールへの嗅覚に、おそらくは多くの人が『ゴール』を予感したことだろう。


 それが現実となったのが後半だ。


 先行される展開の中、攻撃の手を緩めずにゴールに向かい続けていたガンバは失点から6分後の51分。左サイドバックのDF藤春廣輝のクロスボールに頭で合わせたゴールネットを揺らす。その瞬間、喜びを爆発させ「ここは俺たちのホームだ」と言わんばかりのパフォーマンスと胸のエンブレムを誇らしげに叩いたFWファンはサポーターの心を鷲掴みにした。


「先制されて苦しい戦いになりましたが、僕だけじゃなくて選手全員が頑張ってくれたことで追いつけた。ゴール後は、何より勝ちたいという気持ちが強かったことから、自然とあのパフォーマンスが出ました。デビュー戦でかなり緊張もしたし、プレッシャーもありましたが、チームメイトと一緒に勝利に向かい、点も取り、勝てたことが何よりも嬉しい(ファン・ウィジョ)」


 この同点ゴールで、反撃の色を強めたガンバは77分に、セットプレーからDF三浦弦太がゴールを決めて逆転すると、86分には途中出場のFWアデミウソン。GK東口順昭が弾いたボールをハーフウェーライン手前で拾うと相手DFを交わして一気にゴール前へ。GKとの1対1は止められたものの、そのこぼれ球から味方がつないでくれたボールを今度は技ありのシュートで叩き込んだ。


 この3点目のシーンで特筆すべきは、試合終了間際という時間帯でありながら、アデミウソンに追随して3選手が一気に前線に畳み掛けたこと。実際、1−1になってから足が止まったセレッソに対して、そうして最後まで足を止めずに走り勝てたことも、今対決の勝因の一つだと言える。またファン・ウィジョと共に前線で体を張り続けたFW長沢駿や、後ろと前のつなぎ役としてうまくボールを受けていた藤本やMF倉田秋、アデミウソンや、徹底して相手の攻撃の芽を摘み取りつつ、ここぞというタイミングで攻撃にも参加していたMF井手口陽介やMF今野泰幸の存在も忘れてはならない。さらに言えば、1失点こそ喫したもののリーグ2位の得点力を誇る攻撃陣に多くの仕事をさせなかった守備陣も――。


 余談だが、そのファンの活躍の陰に、言葉の通じない彼のピッチ上での『通訳』としてDFオ・ジェソクが暗躍したことも記しておこう。ファンの加入以降、ピッチでは日本語の堪能なオ・ジェソクがスタッフ陣や日本人選手との間に入って話をしている姿をよく見かけていたが、この日もファンがピッチを離れるまで他の選手やスタッフとの『つなぎ役』として存在感を発揮した。


「僕自身の出来はあまりよくなかったけど、ウィジョが活躍してくれて嬉しい。ガンバに加入して初めて、僕以外に韓国人がきたので最初は少し不思議な感じもしましたが、すごく心強く思っていますし、僕にできることは、精一杯で助けてあげたいです。ただ、実は今日は……。ベンチからの指示をウィジョに韓国語で伝えようとして、間違って日本語で言ったことが何度かありました(笑)。もう少し頑張ります(笑)(オ・ジェソク)」


 そうして、全員が『チームのために』『ゴールのために』個々の役割に徹し、暑さをものともせず最後まで走りきったことで掴み取った白星。この結束力のもと、ファンはもちろん、ここ最近は不振に苦しんでいたアデミウソンが更なるフィットを見せ、控えメンバーも含めて個の特徴を活かした厚みのある攻撃を繰り仕掛けられれば――。この夏、ガンバは『タイトル』に向けて、一気に加速する。


文=高村美砂