デビュー戦でいきなり得点を挙げた同じ新加入のシャビエルとは逆に、徐々にその実力を見せ始めてきているのがDFのイム・スンギョムだ。韓国の高麗大出身、というか4年生の残り半年を休学して加入した元U−20韓国代表プレーヤーは、「ボランチの方が得意です」と語るように守備的な中盤がその“本業”。だが、「レベルの高い日本でプレーしたい」と練習参加などを通じて切り開いたJリーガーとしての道に、ポジションも慣れも関係なく熱心な取り組みを見せ続けている。


 ボランチが本職と言ってもU−20代表時にはセンターバックでキャプテンを務めた経験があり、全くの素人ではもちろんない。センターバックとしての理想の選手はセルヒオ・ラモスで、ボランチとしてはトニ・クロース。これだけでも彼の目指すべきプレースタイルは見えてくる。記念すべきプロデビュー戦となったロアッソ熊本戦では3バックの一角としてプレーし、無失点に貢献。そこで見せた対人守備の強さと、パスゲームへの対応力は、前述の2人がそれぞれイメージできるものではあった。


 チームメイトたちも彼の特徴を徐々に理解しつつある。今節で4バックでの戦いも想定されるが、そこでイムとコンビを組むのは酒井隆介が濃厚。スピードを生かしたカバーリングを得意とする酒井にとっては相性の良いタイプと思えるイムだが、「探り探りですよ」と苦笑しつつも「人に強いし、入ってきたボールに足が出る。そういうところは行ってもらおうかなと思っています」と役割分担も明確な様子。まだ日本語でのコミュニケーションは取れないが、「ナラさん!」など簡単な呼びかけ方は覚えており、楢崎正剛も「この前海外の試合を見ていたら何カ国の選手がおるねんと思ってね。そこは考える必要ないなと思いました(笑)」と同じサッカー人としての共通感覚もフル活用しつつ、若きコリアンとの連係を醸成していく考えを示している。


 まだ大学4年生の年齢ということを思えば彼に多大な期待をするのはお門違いだ。アジア枠を使う外国籍選手ではあるが、来季加入の大学生と同じ“新人”であることを忘れてはいけない。「まだまだ努力していきたいし、もっと良い選手になるために、まだまだ足りないといつも思うようにしています」。青木亮太や特別指定の秋山陽介らと同様に、ここからプロとしての本格的なキャリアを築いていく段階のプレーヤーである。それは「何かをするというよりも、彼の良さを出してくれればいい」という風間八宏監督の言葉を借りるまでもない真実だ。


 それだけに、加速度的な伸びにも期待できる。「毎試合を自分がレベルアップできる試合と試合内容にできるように、自分でしていきたい」という台詞には、この上ない意欲を感じたものだ。シャビエルと同じくホームでのデビュー戦となる今節、背番号37が“彼らしさ”をさらに表現してくれればチームに追い風も吹く。「今はサッカーで名を上げることしか考えていない」。イム・スンギョムのモチベーションは、若々しい爽快感に満ちている。


文=今井雄一朗