決めるべきところを決めないと、こうなる。内容に結果がついてこない。すなわち、いまの川崎フロンターレ


 前節(7月29日)の明治安田生命J1リーグ、ジュビロ磐田戦は押し込みながら速攻とセットプレーに屈して大敗。同じ轍は踏むまいと臨んだはずの8月5日、FC東京戦だった。


「楽しそうだな」。前半、FC東京のベンチにいた大久保嘉人の目に、古巣はそう映った。磐田同様、FC東京にも中央を締める対策を敷かれ、正々堂々、自慢のパスワークで応戦した。中盤でつなぎつつ、前線で小林悠、阿部浩之、登里享平が渦を巻きながら位置を入れ替える。誰かが下がれば、誰かが前へ。広げた守備の綻びに、中村憲剛、大島僚太、エドゥアルド・ネットがスルーパスを通して好機を重ねる。


 潮目が変わったのは前半終了間際だった。大島が裏に浮かせ、小林が抜ける。右を突進してGKを引き寄せ、折り返し。受けた阿部は半ば無人のゴールへと右足を合わせたが、大事に蹴りすぎたか。パスみたいに優しいシュートは左ポストに当たり、頭を抱えた。


 チャンスを逃せばピンチが訪れる。49分、手数を省いたFC東京のサイド攻撃から中島翔哉に先制点を献上。あとは往来の激しい展開を繰り返し、勝ち点1を拾うのが精いっぱいだった。


 23対9。よくぞそこまでシュート数で圧倒しても、ゴールを割れなければ意味はない。元エースの大久保をうらやましがらせた攻め手も、引いた相手を崩しきれなかった、となる。「ボールを持たされている感覚だった」と阿部。「もっと、相手を引き出したり、釣り出だしたりしないと」と大島は反省した。「中と外の使い分けが足りなかった」と小林は振り返った。


 もう少し具体的に解決策を語ったのは中村だった。


「今日も真ん中を固められたので、外の幅の使い方をもうちょっと工夫できていたら。外の高い位置でやれれば、相手は勝手に下がるから。(サイドバックの車屋)紳太郎とエウシーニョの前に誰かがいて、そこを回って、高い位置で押し込んで、という崩しがあまりなかった。ノボリ(登里)も悠も、中気味になっていたんで」


 ただ、わかってはいても、間断なく時が流れる試合中の修正は思うに任せない。だから、この夜の川崎のような現象が古今東西で起きる。中村は達観してもいる。


「アベちゃんのシュートも、いままでは決めていたから自分たちの流れに持ってこられた。そうじゃない時に我慢できるかというと、やっぱり後半開始早々に失点しているわけで。毎回毎回、前が決められるわけでもないし、後ろが守りきれるわけでもない。そこをみんなで補い合っていかないと」


 そんなものだ。決まる時は、驚くほどあっさり決まる。決まらない時は、いくら打っても決まらない。もっと言えば、守って守って逆襲でゴールをかすめ取るのもサッカー。川崎のように美と実の両立を追い求めるのもサッカーだ。たった一つだけの正解はない。双方がせめぎ合うからこそ、この競技はおもしろく、奥深く、時に理不尽な顔をのぞかせもする。川崎の挑戦は回り道に見え、間違いなく尊い理由でもある。


 プレーする者にとってもどかしく、見る者にとって事を考えさせた90分間。「まあ、愚直に、やり続けるしかないと思います」。J1出場391試合目を数えた36歳は、そう言い残してスタジアムを後にした。


文=中川文如