「負けていたので、流れを変えるのもそうだし、僕が決めるというのが一番大事かなと思って。その通りになって良かった」


 後半開始直後、扇原貴宏の負傷交代でピッチに入ったのが伊藤翔だった。横浜F・マリノスは、トップ下の天野純が扇原がいたボランチに下がり、ウーゴ・ヴィエイラとの2トップに陣形を変えた。しかし厳密に言えば、伊藤はウーゴ・ヴィエイラよりも少し下がり目に位置取った。


「監督からも『下がり目でやってくれ』と言われていた。ディフェンスの時にも、そのほうが守備がハマりやすいかなというのがあったので、試合の中で上下動は微調整しながらやった」


 この日の横浜FMは前半から攻撃の起点を作れずにいた。そこで伊藤が少し下がり目に位置し、後方に顔を出しながらボールを引き出す役を担うことで、少しずつ攻撃の形が見え始めた。そして69分、それが実を結んだ。


 中央少し下がり目の位置でボールを受けた伊藤が、左の下平匠に一旦ボールを預ける。「自分が匠に出したので、いいところに走れば(ボールが)来るかな」と伊藤の狙いどおりに、下平からのクロスが上がってくる。相手DFの間にうまく入っていくと、頭で合わせてゴールを割った。


「狙っているシーンだったので、それが実を結んで良かった」


 今季はケガで、6月からの約5カ月間を棒に振った。それでも復帰戦となった第30節の鹿島アントラーズ戦で今季初ゴールを決めると、5試合で2得点の活躍。いざという時に頼りになる男の復活に、誰もが歓喜した。


「今年はケガで5カ月ぐらい何も仕事をしていなかったと思っていたので、何とか最後にこうして優勝へつなげられればいいかなと思います。“終わり良ければすべて良し”じゃないけど、浮かれ過ぎずに次に向けていい準備をしたい」


 伊藤節を織り交ぜながら、早くも決勝に向けて意気込んでいた。