2017年、香川真司を取り巻く環境は目まぐるしく変化した。


 所属するドルトムントでは、ケガ続きだった2016−17シーズン前半戦を経て後半戦に突入すると、試合を重ねるごとに復調し、DFBポカール制覇に貢献した。このタイミングで2シーズン指揮を執ったトーマス・トゥヘル監督から、元Jリーガーのピーター・ボス監督へと指揮官がスイッチ。左肩脱臼で出遅れた香川はゴンサロ・カストロやマリオ・ゲッツェの後塵を拝する形でなかなかレギュラーを掴めなかったが、チーム状態が急降下した10月以降は出番が増加する。12月のペーター・シュテーガー監督就任後は右インサイドハーフの定位置を確保。新体制初戦となった12月12日の第16節マインツ戦の2点目に象徴される通り、50から60メートルの長い距離を走ってゴールするダイナミックさを取り戻し、いい形でウインターブレイクに突入することができた。


「1年を振り返るとまあいい年だったと思います。この1年はコンディションが非常にいいですし、さらに上を目指していけるんじゃないかっていう手応えを感じたので、2018年は目に見える数字を残していけたらいいと思います」と12月22日に一時帰国した彼は明るい表情を浮かべていた。


 しかしながら、日本代表では納得のいかない状態が続いた。2017年初戦となった3月の2018 FIFAワールドカップ ロシア・アジア最終予選のUAE代表戦(アルアイン)では今野泰幸(ガンバ大阪)と並んでインサイドハーフで出場。今野に助けられる形で大一番を乗り切った。続くタイ代表戦(埼玉)では待望の最終予選初ゴールを決めたが、1得点2アシストの久保裕也(ヘント)に主役の座を持っていかれてしまう。巻き返しを図るべく6月の代表戦に挑もうとしたが、シリア代表戦(東京)で開始早々に左肩を負傷。これが響いてイラク代表戦(テヘラン)、8、9月のオーストラリア代表戦(埼玉)、サウジアラビア代表戦(ジェッダ)の2連戦も出番なしに終わった。


 ロシアへの新たな競争の第一歩となった10月のニュージーランド代表(豊田)、ハイチ代表(横浜)の2連戦では、ゴールこそ生まれたものの全体にはやや低調に終わり、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督とも戦い方に関する意見が食い違った様子。それが響いたのか、ロシアW杯前哨戦と位置づけられた11月のブラジル代表(リール)、ベルギー代表(ブルージュ)との2連戦でまさかの落選。本人は居ても立ってもいられず、自ら車のハンドルを握って現地入り。2連敗した仲間たちの一挙手一投足を目の当たりにした。


「いろいろ考えさせられましたし、いろいろ感じることができたんで。現地に行って2試合見れたことも本当にポジティブに捉えています。(代表には)課題が明確にあるし、それに向き合わない限り、僕たちは厳しい立場にある上にさらに厳しくなる。特に感じたのは、攻守においてどう戦うかというところ。攻撃と守備でもっと徹底的にやるべきことをやらないと。守って返す攻撃は少し浸透してるけど、それだけじゃ厳しい部分は沢山あったんで。意思統一をチームとしてもっとやらないと厳しいと思います」と香川は今の代表が直面する問題点をズバリ指摘した。


 12月のEAFF E-1選手権の韓国代表戦(東京)で1−4と惨敗した時もそうだったが、今の日本代表は前からのプレスがはまらないと異なる解決策を見い出せなくなる。引いて守って耐える、ボールを保持する時間を作るといった臨機応変な戦い方ができない限り、ロシアW杯のグループステージで対戦するコロンビア代表、セネガル代表、ポーランド代表という格上揃いの相手から勝ち点を積み上げることはできない。香川が言わんとしているのは、そういうことなのだろう。E-1選手権に出た国内組も同様のことを語っていただけに、香川が復帰した際はそれを率先して突き詰めていく必要がある。


 2014年ブラジルW杯で屈辱を味わった背番号10はこの4年間、常にロシアW杯を意識し続けてきた。ケガ続きで苦悩していた1年前の年末にも「今年は苦しいことやうまくいかないことの方が多かったけど、W杯まで1年半ありますし、そこを見据えたらここで苦しんでるくらいがちょうどいい。結果を出すために試行錯誤しながら日々を過ごしていくだけ。そこはハッキリしてます」と覚悟を口にしている。あれから1年が経過し、まさか自分が代表落選の憂き目に遭うとは想像だにしなかっただろう。それでも、外から代表を見つめ直す機会を得たことで、自分にとっていかに日本代表とロシアW杯が重要かを再認識するいい機会になったのは確か。国際Aマッチ89試合29得点という実績を生かすのはこれからだ。


 年明けにはハリルホジッチ監督が欧州視察に出かける予定で、香川のところにも真っ先に足を運ぶはずだ。


「僕自身のやることは変わりないですし、得点、アシスト、チームが勝つ、その全てに関わりたい。その手応えをここ数試合でさらに得たっていう自信はあるので、それを来年以降、証明していけたらいいのかなと思います。3月の代表復帰? もちろんその気持ちでいます」と本人も語るように、まずは指揮官に自らの必要性を強く認識させるところからスタートしなければならない。そのためにも、攻撃面でインパクトを残すだけでなく、守備やデュエルの部分の改善は必須。そういう課題を克服した時、香川は真の日本のエースナンバー10となるはずだ。


「今の自分は本当にいい年齢、集大成と言ってもいい時期に来ている」と本人も強調するタイミングで迎える2度目のW杯に突き進むべく、最高の形で2018年の幕を開けてほしい。


文=元川悦子