こちらは「へびつかい座」の方向約2万6000光年先の球状星団「NGC 6325」です。球状星団とは、数万〜数百万個の恒星が球状に集まっている天体のこと。天の川銀河ではこれまでに150個ほどの球状星団が見つかっています。密集して輝く星々の様子に美しさを感じる天体です。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された球状星団「NGC 6325」(Credit: ESA/Hubble & NASA, E. Noyola, R. Cohen)】

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された球状星団「NGC 6325」(Credit: ESA/Hubble & NASA, E. Noyola, R. Cohen)】

様々な銀河に存在する球状星団について、欧州宇宙機関(ESA)は天文学者にとって天然の実験室のようなものだと紹介しています。球状星団を構成する星々はほぼ同じ時期に同じ化学組成のガスや塵から形成される傾向があり、星形成の理論を検証する上で役立つのだといいます。

また、NGC 6325は「中間質量ブラックホール」に関する研究の一環として「ハッブル」宇宙望遠鏡で観測されたこともあります。中間質量ブラックホールは様々な銀河の中心に存在すると考えられている超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール、質量は太陽の数十万〜数十億倍以上)と、恒星の超新星爆発によって誕生する恒星質量ブラックホール(質量は太陽の数倍〜数十倍)の中間にあたる、太陽の100倍〜1万倍程度の質量を持つブラックホールです。球状星団の中心には周囲の星々の動きに影響を及ぼす中間質量ブラックホールが潜んでいる可能性があると考えられています。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」および「広視野カメラ3(WFC3)」をで取得した画像(可視光線と近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2023年5月15日付で公開されています。

 

Source

Image Credit: ESA/Hubble & NASA, E. Noyola, R. Cohen ESA/Hubble - Scrutinising a star-studded cluster

文/sorae編集部