メリーランド大学は8月27日、3年前の2016年8月に観測されたガンマ線バースト「GRB160821B」が中性子星どうしの合体による爆発現象「キロノバ」にともなって発生していたことを解明したEleonora Troja氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、同日付の王立天文学会月報に掲載されています。

ハッブル宇宙望遠鏡によって観測された、ガンマ線バースト「GRB160821B」の残光が徐々に暗くなっていく様子

■思わずがっかりした現象を再解析して判明

ガンマ線バーストとは、何らかの原因で短時間に大量のガンマ線が突然放出される現象です。ガンマ線が放出される時間は数秒から数時間とさまざま。ガンマ線に続いて観測されるX線や赤外線、可視光線などの残光を通して、ガンマ線バーストが起きた場所や原因となった天体などを知ることができます。

GRB160821Bも、そんなガンマ線バーストの1つでした。発生がキャッチされた数分後にはNASAのガンマ線バースト観測衛星「スウィフト」をはじめ、「ハッブル」宇宙望遠鏡、欧州宇宙機関(ESA)のX線観測衛星「XMM-Newton」、ハワイの「ケック望遠鏡」、ニューメキシコの「超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」などによって追跡観測が実施されています。

ところが、赤外線が数週間でどんどん明るくなっていくと思われていたGRB160821Bの残光は、予想に反して発生から10日ほどでほとんど見えなくなってしまいました。これには「誰もが残念がっていた」とTroja氏は語ります。

しかし、それから1年後の2017年8月、アメリカの重力波検出器「LIGO」によって中性子星どうしの合体にともなう重力波「GW170817」がキャッチされました。合体によって発生した爆発現象「キロノバ」も、可視光、赤外線、紫外線、X線といった、あらゆる波長の電磁波で観測されています。

今回、Troja氏らの研究チームは、GW170817の観測によって得られたキロノバに関する知見をもとに、GRB160821Bの観測データを再評価しました。その結果、双方の赤外線による観測データが非常に似通っていたことなどから、2016年8月に観測されたガンマ線バーストが中性子星連星の合体に伴うキロノバによるものだったと判明したのです。

■2017年に観測されたキロノバではわからなかった発生直後の様子も

キロノバだったことがわかった2016年のGRB160821Bの観測データからは、2017年に観測されたキロノバには欠けていた情報を得ることができました。2017年に観測されたキロノバは発生のキャッチから追跡観測の開始まで半日ほどのタイムラグがありましたが、2016年に観測されたキロノバはわずか数分後から観測されていたため、発生直後の様子を知ることができたのです。

研究によると、キロノバの発生直後、2つの中性子星が合体したことで「マグネター」と呼ばれる非常に強い磁場を持つ中性子星が一時的に誕生したとみられます。衝突を生き延びX線を放ち始めたマグネターですが、間もなくX線の放射が急激に弱まって停止してしまいました。この時点でマグネターは崩壊し、ブラックホールになったと考えられています。

研究チームが注目するのは、ほんの短時間とはいえマグネターが誕生したことです。キロノバでは金やプラチナといった重金属が生み出されると考えられていますが、Troja氏によれば、マグネターはこうした重金属の生成を阻害する存在とみなされています。そのため、重金属がマグネターの影響から逃れられる、何らかの仕組みが存在するはずだとしています。

Troja氏は、今後もより多くのキロノバが観測されることで、キロノバの種類や爆発直後に形成される天体などの知識がより深まることを期待しています。

 

Image Credit: NASA/ESA/E. Troja
https://cmns.umd.edu/news-events/features/4485
文/松村武宏