南米・チリの電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」が、超大質量ブラックホールの周囲を逆向きに回転するガスと塵の円盤を発見しました。この発見は、宇宙の初期から存在する超大質量ブラックホールの謎を解く鍵になるかもしれません。

関連:天の川銀河のブラックホールを取り囲む”リング状のガスの流れ”を初観測:アルマ望遠鏡

渦巻銀河「NGC 1068」の中心部にあるとされるブラックホール周囲の想像図。円盤の色(青、赤)はアルマ望遠鏡によって捉えられた回転方向を示す(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello.)

■コンパクトな領域で逆向きに回転する円盤

観測の対象となったのは、地球からおよそ4700万光年先、「くじら座」にある渦巻銀河「NGC 1068」。シャルル・メシエによって名付けられた「M77」の名でも知られています。この銀河の中心部分にも天の川銀河のように超大質量ブラックホールが存在するとされていますが、今回その周囲をアルマ望遠鏡によって観測したところ、互いに逆方向に回転する2つの円盤が見つかったのです。

ブラックホールに近い内側の円盤は2〜4光年ほどのサイズを持ち、銀河の全体と同じ向きに回転しています。いっぽう、その外側には4〜22光年ほどの範囲に広がるもう1つの円盤があり、内側の円盤とは逆方向に回転していることがわかりました。

銀河どうしが衝突したり小さな銀河を捕獲したりするときのように、数千〜数万光年という銀河全体が含まれるようなスケールでは、逆向きに周回する現象はめずらしくありません。しかし、ブラックホールに流れ込むガスや塵などの物質が形成する降着円盤は、通常であれば同じ方向だけに回転します。

観測結果をまとめたアメリカ国立電波天文台(NRAO)のViolette Impellizzeri氏が「このようなものを観測するとは思わなかった」と語るように、数十光年というコンパクトなスケールではめずらしい現象です。

■ブラックホールの急成長が説明できるかもしれない

アルマ望遠鏡によるブラックホール周囲の観測結果。円盤の色は、青が地球に向かって動く部分、赤が地球から遠ざかるように動く部分を示す。砂時計状の白い部分は内側の円盤から噴き出すジェットを示す(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), V. Impellizzeri; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello.)

Impellizzeri氏によると、逆向きに回転するガスや塵の円盤は不安定な状態にあるため、同じ方向だけに回転する円盤よりも速やかにブラックホールへ落ちていくといいます。つまり、同じ量の物質がブラックホールに流れ込む場合、逆回転する円盤が存在するケースでは、ブラックホールが急速に成長する可能性があるというのです。

これまでの観測によって、この宇宙が誕生してから10億年しか経っていない頃、すでに超大質量ブラックホールが存在していたことがわかっています。ところが、太陽の数十億倍という途方もない重さまでブラックホールが成長するには、従来の理論では10億年でも時間が足りないとされており、ブラックホールの急成長は初期宇宙の謎のひとつに数えられています。

今回の発見によって、何らかの理由で降着円盤の一部が逆向きに回転する場合、不安定な円盤が崩壊することでブラックホールが急成長する可能性が観測から示されました。初期宇宙に存在していた超大質量ブラックホールも、こうした円盤が存在したことで急速な成長を遂げたのかもしれません。

 

関連:131億年前の初期宇宙における銀河の合体をアルマ望遠鏡が観測

Image: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
Source: ALMA
文/松村武宏