若い恒星の周囲にはガスや塵でできた「原始惑星系円盤」が存在しており、惑星が形成されるにしたがって消滅していくと考えられています。今回、惑星の形成が最終段階まで進み、すでにガスの多くが散逸したとみられていた円盤のなかに、従来の想定を大きく上回る量の炭素原子ガスが存在していたことが明らかになりました。

■アルマ望遠鏡による観測で炭素原子の分布を明らかに

周囲にデブリ円盤とガスが広がるくじら座49番星の想像図(Credit: 国立天文台)

樋口あや氏(国立天文台)らの研究チームは、南米・チリにある電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」を使い、くじら座の方向186光年先にある4000万歳ほどの若い恒星「くじら座49番星(49 Ceti)」の観測を実施しました。

くじら座49番星は周囲に円盤を伴っている様子が確認されていますが、4000万歳という年齢から、惑星形成は最終段階にあるとみられています。この年齢では原始惑星系円盤からガスが散逸し、塵を主成分とした「デブリ円盤」が広がっているものと考えられてきました。

ところが2017年、樋口氏らの観測により、世界で初めてデブリ円盤から炭素原子ガスが検出されました。今回、研究チームがアルマ望遠鏡による15時間の再観測を実施した結果、くじら座49番星のデブリ円盤における炭素原子の分布状況が判明。その量が従来の想定に対して10倍も多いことが明らかになったのです。

原始惑星系円盤のガスは、惑星の形成が進むにつれて円盤から散逸していくものと考えられていました。今回の観測結果は、これまで考えられていたよりも長期間に渡りガスが存在する可能性を示唆しています。

■大量の炭素原子が電波の一部を吸収しているとみられる

アルマ望遠鏡によるくじら座49番星の観測結果。塵(赤)、一酸化炭素分子(緑)、炭素原子(青)の観測結果を重ね合わせたもの(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Higuchi et al.)

今回の観測では、炭素の同位体である「炭素13」が発した電波を検出することにも成功しています。炭素13は一般的な炭素原子である炭素12の1%程度しか存在しないため、炭素12に比べて相対的に電波が弱くなります。にもかかわらず、ガスが少ないと思われていたデブリ円盤から炭素13が検出されたことに、研究チームも驚いたようです。

同位体の比率を考慮すると、炭素12が発する電波のほうが炭素13よりも100倍以上強くなるはずですが、アルマ望遠鏡が捉えた電波の強さを比較したところ、その差は12倍程度に留まることがわかりました。これは、デブリ円盤に含まれる炭素12の量がかなり多く、電波の一部を炭素12自身が吸収したためだとみられています。研究に参加した大屋瑶子氏(東京大学)は、結果として地球に届く電波が弱くなったことで、くじら座49番星のデブリ円盤における炭素原子ガスの量が少なく見積もられていた可能性を指摘しています。

なぜデブリ円盤からガスが検出されるのかについては、惑星が形成される過程で余ったものだとする「残存説」と、円盤内の塵や微惑星の衝突によって生じたものだとする「供給説」の2つの仮説があります。

しかし、くじら座49番星のデブリ円盤で検出された炭素原子ガスの量は、残存説と供給説のどちらにとっても想定外の多さ。今回の研究成果は、木星のようにガスが豊富な惑星の形成のみならず、惑星形成の理論そのものに再考を迫るものとなりそうです。

 

Image Credit: 国立天文台
Source: 国立天文台
文/松村武宏