2つの恒星が互いの周りを公転し合う「連星」は、宇宙ではありふれた存在です。今回、恒星としての最期を迎えつつある主星の進化が伴星によって早められた連星の様子が、南米・チリの「アルマ望遠鏡」などを使った観測によって明らかになりました。

■主星に取り込まれた伴星が、主星のガスを周囲に吹き飛ばした

【▲アルマ望遠鏡が観測したHD101584。青は地球に向かって近づくガス、赤は遠ざかるガス、緑はその中間の動きをするガスを示す(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Olofsson et al. Acknowledgement: Robert Cumming)】

アルマ望遠鏡が観測したのは、南天の「ケンタウルス座」の方向にある恒星「HD101584」です。HD101584は太陽に近い質量の恒星が晩年を迎えた星で、巨大な赤色巨星から核融合を止めた白色矮星へと移り変わる段階にあります。

アルマは電波(サブミリ波)で観測する電波望遠鏡なので、人の目に映る色で撮影することはできません。画像の色はHD101584の周囲に広がるガスの動きに対応していて、青は地球の方向に向かって動くガス、赤は反対に遠ざかるように動くガス、緑はその中間の動き(近づいたり遠ざかったりする動きが少ない)を見せるガスの分布を示しています。上の画像では中心にあるHD101584を取り囲むように見える構造だけでなく、中心から画像の左右に向かって噴出するジェットも確認できます。

「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影したHD101584の画像を見ると、星から流出したガスによって周囲に原始惑星状星雲が形成されている様子がわかります。今回、Hans Olofsson氏(チャルマース工科大学、スウェーデン)らの研究チームがアルマ望遠鏡やヨーロッパ南天天文台(ESO)の電波望遠鏡「APEX」で取得した観測データを分析したところ、HD101584は別の恒星とペアを成す連星であり、周囲に広がるガスは伴星によって吹き飛ばされたものであることが明らかになりました。

研究チームによると、主星であるHD101584は伴星よりも先に赤色巨星の段階を迎えて巨大化し、ふくれ上がったガスのなかに伴星を取り込んでしまったといいます。主星のガスに入り込んだ伴星はらせん軌道を描きながら主星のコアと衝突する運命にあるものの、その前に主星のガスを周囲に吹き飛ばしてしまい、やがて白色矮星となる主星のコアをむき出しの状態にしてしまったようです。

ESOが「stellar fight(恒星の戦い)」、国立天文台が「ケンカ」と表現するこの過程によって、主星の赤色巨星から白色矮星への進化は大幅に加速されたことになります。研究に参加したSofia Ramstedt氏(ウプサラ大学、スウェーデン)は、赤色巨星と惑星状星雲の中間段階にあたるHD101584は「進化の過程を解き明かすための重要なヒントを与えてくれます」とコメント。白色矮星になる恒星が最終段階でどのような進化を遂げるのか、新たな知見が得られることに期待を寄せています。

【▲ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたHD101584。恒星の周囲に原始惑星状星雲が広がっている。Raghvendra Sahai氏らの論文より引用(Credit: R. Sahai et al. 2007)】

 

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Olofsson et al. Acknowledgement: Robert Cumming
Source: ESO / 国立天文台
文/松村武宏