太陽系がある天の川銀河の中心には「いて座A*(エースター)」という電波源があり、そこには太陽の400万倍も重い超大質量ブラックホールが存在すると確実視されています。今回、いて座A*から届く電波の強度が短期間で変動する様子が確認されたとする研究成果が発表されています。いて座A*はブラックホール周辺の直接撮影も期待されている天体ですが、その実現は簡単ではないようです。

■電波強度の短周期変動が直接撮影を難しくする

超大質量ブラックホールを取り囲む降着円盤と、ブラックホールのすぐ近くで回転するホットスポットを描いた想像図(Credit: 慶応義塾大学)

岩田悠平氏(慶応義塾大学)らの研究チームは、2017年10月にチリの電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」によって得られた観測データを使い、いて座A*における電波強度の変化(1日あたり70分、全部で10日間)を詳しく解析しました。

解析の結果、いて座A*の電波強度は1時間以上かかるゆっくりとした変動とは別に、およそ30分周期で繰り返される短い周期の変動も時折起きていることが明らかになりました。研究チームによると、ゆっくりとした電波強度の変動は過去の研究でも指摘されていたものの、静かな時期のいて座A*で短周期の変動が確認されたのは今回が初めてのこととなるようです。

このおよそ30分という周期は、いて座A*の超大質量ブラックホールを取り囲んでいるとみられる降着円盤のうち、ブラックホールのすぐ近く(中心から0.2天文単位)の部分における回転周期に相当するといいます。研究チームでは、降着円盤に生じた小規模なホットスポット(熱いガスの塊)がブラックホールの周りを高速で回転することで「相対論的ビーミング」(※)の効果がもたらされ、電波強度に回転周期と同じ短周期の変動が生じたものと考えています。

※…光速に近い速度で移動する天体やガスなどから発せられた光(電磁波)が、地球に近づくように動くときには明るく(強く)観測される特殊相対論的効果

昨年4月、国際プロジェクト「イベントホライズンテレスコープ(EHT)」によって楕円銀河「M87」の中心にある超大質量ブラックホール周辺の直接撮影に成功したことが発表され、大きな話題となりました。EHTでは天の川銀河にあるいて座A*も観測対象となっていますが、今のところその画像は公開されていません。

研究チームでは、ブラックホール周辺の撮像を行うためには長時間の観測が必要となるものの、いて座A*では電波強度だけでなくブラックホール周辺の形状も短時間で変化していくことが今回の研究結果から示唆されるとしており、直接撮影は容易ではないと指摘しています。

また、今回のような観測をより高い感度で継続していくことで、ガスがブラックホールを周回しながら飲み込まれていく様子が捉えられる可能性にも言及しており、一般相対性理論で説明される時空構造のさらなる理解につながることにも期待を寄せています。

EHTが撮影に成功したM87中心の超大質量ブラックホール周辺の様子。短時間で電波強度が変動するいて座A*についてこのような画像を撮影するのは容易ではないようだ(Credit: EHT Collaboration)

 

Image Credit: 慶応義塾大学
Source: 国立天文台
文/松村武宏