オリオン座の1等星ベテルギウスは、今後10万年以内に超新星爆発が観測されると考えられている赤色超巨星です。昨年から今年にかけての急速な減光が注目を集めましたが、現在私たちが見ているベテルギウスは連星が合体してできた星なのではないかとする研究成果が発表されています。

■過去数十万年のどこかで伴星を飲み込んでいた可能性

2019年12月にヨーロッパ南天天文台の「超大型望遠鏡(VLT)」によって撮影されたベテルギウス(Credit: ESO/M. Montargès et al.)

Manos Chatzopoulos氏(ルイジアナ州立大学)らの研究チームは、ベテルギウスはもともと連星であり、過去数十万年のどこかの時点で伴星と合体した可能性を指摘しています。Chatzopoulos氏らの論文は現在プレプリントサーバーのarXivにて公開されています。

研究チームによると、太陽の15〜17倍の質量があった主星が晩年を迎えて赤色超巨星になり始めた頃、太陽と同程度〜4倍ほどの質量(主星に対して7〜25パーセント)があった伴星が巨大化した主星の外層に入り込み、潮汐破壊されつつ取り込まれた可能性がシミュレーションによって示されたといいます。

主星と伴星が一つになった星(ベテルギウス)の自転速度は合体によって加速されたとみられており、これは現在観測されているベテルギウス表面の自転速度(秒速およそ5km)とも一致するといいます。研究チームでは、高速で自転する巨星や超巨星は同様のプロセスを経て形成されたと考えており、恒星の合体は宇宙において一般的な出来事であるとしています。

また、ベテルギウスは秒速およそ30kmで星間空間を移動しており、かつて属していたアソシエーション(星団ほどには密集していない恒星のグループ)から何らかの原因で飛び出した可能性が指摘されています。研究チームでは、アソシエーションから飛び出してしまうほどの影響を受けても連星が散り散りになることなく維持される場合があるとしており、連星の合体というシナリオはベテルギウスの移動速度と自転速度の両方を説明できると考えています。

ただし別の可能性として、ベテルギウスはかつて存在していた連星のうち伴星のほうであり、より大きな主星が超新星爆発を起こしたことでアソシエーションから飛び出したことも考えられるといいます。この場合、爆発前の主星から流れ込んだガスが降着したことで、ベテルギウスの自転速度が加速されたと考えられます。「連星の合体」と「連星の崩壊」のどちらが正しいのかを知るにはさらなる研究が必要だと研究チームは言及しています。

欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ハーシェル」が撮影したベテルギウスとその周辺の赤外線画像。ベテルギウスの移動方向には弧状のバウショックが広がっている(Credit: ESA / Herschel / PACS / L. Decin et al.)

 

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Image Credit: ESO/M. Montargès et al.
Source: Universe Today / arXiv
文/松村武宏